30年待たされた異世界転移

明之 想

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第8章 南部動乱編

テポレン山の戦い 10

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「撃てぇぇ!!」

「「「「「「「「「「おう!」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「っ!!」」」」」」」」」

 A~B地点には、いまだ呆然と立ちすくんだままの王軍兵。
 他の王軍も行軍の足が止まった状態。

 そこに魔法矢が放たれる。
 50人の魔道具隊全員による斉射だ。


「まずい!」
「構えろ、盾を構えるんだ!」

「駄目だ、盾が破壊されてる?」
「盾が足りない!」

「くる、来るぞ!!」
「伏せろぉ!!」

 周りに倒れている重装歩兵のため、自由に動けない残兵たち。
 その頭上に魔法矢が降りかかった。

 ドーン!!

 バーン!!

 ドガーン!!

 その威力は、これまでと変わりはない。
 が、ファイブマンセルで防御に徹していた前回とは異なり、今回はまともな防御ができない態勢で魔法矢の炸裂を喰らってしまった。

 となると、必然……。

「「「「「「「うわぁ!」」」」」」」
「「「「「「「ああぁ!」」」」」」」
「「「「「「「ぎゃあ!」」」」」」」

 大打撃を受けることになる。
 さらに、そこに。

「次、撃てぇ!!」

 次射となる魔法矢が降ってくる。

 ドーン!!
 ガーン!!
 ダーン!!

「「「「「「「ううぅ……」」」」」」」
「「「「「「「ぁぁぁ……」」」」」」」
「「「「「「「……………」」」」」」」

 地雷に続いての惨状だ。

「退け、退けぇ!」
「駄目だ、留まれ!」
「嫌だ、こんなの戦じゃない」
「俺は逃げるぞ」
「俺もだ」

 王軍の先陣の半数以上がその場に倒れ、残りは完全に混乱状態。

「コーキ、やったぞ」

「ああ……」

 とはいえ、戦いはまだ序盤。
 勝負は先であることに変わりはない。

 けどなぁ。
 これで序盤の趨勢は決した。
 あとは、仕上げを御覧じろ、だ。

「ノワール、行くぞ!」

「オオーン!!」

 混乱に乗じて、さらに戦意を削いでやる。

「今度は黒炎を使ってもいいからな」

「オン!!」

 一撃離脱の急襲。
 ただし、軽い一撃じゃないぞ。




*******************

<ヴァーンベック視点>



 B地点におびき寄せた王軍に対して行った爆弾攻撃。
 これによって一変した戦況は、その後の魔法矢斉射、コーキとノワールの突撃によって確かなものになった。

 まだ戦いは始まったばかりとはいえ、こいつぁ悪くないよな。

 で、現在の戦地の状況はというと……。

 A地点、B地点には地面に伏した王軍兵が残るばかりで、残るすべての王軍はA地点のはるか後方まで退却している。対して、こちらワディン、エンノア連合は防壁で守られた陣地の中。大きな傷を負った者はひとりもおらず、戦意に満ち満ちている。


「コーキ殿の計略、上手くいくとは思っていたものの、ここまでハマるとは驚きだ」

「ああ……想定通りっちゃあ、想定通りなんだけどよ」

 まっ、こんなに上手くいくとは、さすがになぁ。
 目の前の光景を見ていても、信じられねえくらいだぜ。

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