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第8章 南部動乱編
積年の
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<長老ゼミア視点>
バーン!!
ドガーン!!
凶悪な破裂音が響き渡る。
「「「「「「「「ああぁ!!」」」」」」」」
「「「「「「「「うぅぅ……」」」」」」」」
轟音の後には、うめき声をあげる敵兵の姿。
「……」
本当に凄まじい。
こんな魔道具を独力で作ってしまうとは……。
コーキ殿の何と恐ろしいことか。
「「「やった!」」」
「「「やってやった!」」」
「これで、エンノアも戦える」
「ああ、外に出れるぞ」
「もう地上の民に侮られることもない」
「やっと、この時が」
「長年の夢が……」
皆、心が震えておる。
まだ戦闘も終っておらぬというのに、涙を流す者も。
むべなるかな……。
我らエンノアの積年の思い。
今ここから踏み出せると、確信しておるのだ。
「……」
コーキ殿とセレスティーヌ殿、それにワディンの騎士たちを迎え、共に行動するという決断。不便ながらもそれなりに安定した生活を捨て新たなエンノアを求めるという決断。
この寡兵でレザンジュ王国を相手取るなど、我ら以外の者には無謀と映るであろう。
が、エンノアには未来を照らす預言が存在する。
我らを精神的に支えてくれる無比なる拠り所、絶対の託宣。
状況はその言葉通り。
黒と白が現れ、全てが滞りなく進んでおる。
加えて、エンノアの心に深く根付く無念の思い。
読心の異能を持つ我らだからこそ受け継ぐことができた痛惜の念。
数百年に渡り、まるで自らの身に起きたことのように感じ続けてきた積怨の思いを、今代で晴らすことができる。
この感情、我ら以外の誰が理解できようか。
「エンノアの皆さん、もう十分です。ここで退いてください」
歓声が湧く中、こちらに近づいて来たのはコーキ殿。
「コーキ殿は?」
「ここで殿を務めた後、エンノアに戻ります」
「……」
「今が潮時です。皆さんは戻ってください」
「ですが!」
「我らはまだ闘えます」
「「「コーキさん!」」」
「「「コーキ殿!」」」
皆の気持ちも理解できる。
とはいえ……。
「この戦いが全てではありません。次に備えましょう」
「「「「「……」」」」」
ここは、コーキ殿の言葉通り。
それが最善じゃろう。
「皆、コーキ殿の命に従うのだ」
「「「「「ゼミア様!」」」」」
「「「「「長老!」」」」」
「分かったか?」
「「「「「「「……」」」」」」」
「「「「「「「……」」」」」」」
未練はあるものの、皆頷いている。
ならば、よし。
「スぺリス、フォルディ、行くぞ」
「「はっ!」」
***************************
エンノアに預けておいた改造クロスボウによる魔法矢の斉射で状況は一変。
目の前に迫っていた王軍は、完全に混乱状態に陥っている。
未知の兵器による強襲を受け、予想もしていなかった被害が出たのだから当然とはいえ。これは想像以上だな。
「な、なんだ?」
「あの矢は、いったい?」
重傷を負って倒れ伏している者もそれなりに見えるが、それ以上に目立つのが軽傷または無傷なのに呆然と立ち尽くしている敵兵の姿。
「盾だ。今すぐ大盾を使わせろ!」
「大盾は用意しておりません」
「何だと!」
「速度重視の追撃兵装ですので」
「っ!」
指揮系統も正常に機能しているとは思えない。
こうなると、兵の運用どころじゃないな。
魔法矢の2斉射だけで、ここまでの効果か。
「……」
バーン!!
ドガーン!!
凶悪な破裂音が響き渡る。
「「「「「「「「ああぁ!!」」」」」」」」
「「「「「「「「うぅぅ……」」」」」」」」
轟音の後には、うめき声をあげる敵兵の姿。
「……」
本当に凄まじい。
こんな魔道具を独力で作ってしまうとは……。
コーキ殿の何と恐ろしいことか。
「「「やった!」」」
「「「やってやった!」」」
「これで、エンノアも戦える」
「ああ、外に出れるぞ」
「もう地上の民に侮られることもない」
「やっと、この時が」
「長年の夢が……」
皆、心が震えておる。
まだ戦闘も終っておらぬというのに、涙を流す者も。
むべなるかな……。
我らエンノアの積年の思い。
今ここから踏み出せると、確信しておるのだ。
「……」
コーキ殿とセレスティーヌ殿、それにワディンの騎士たちを迎え、共に行動するという決断。不便ながらもそれなりに安定した生活を捨て新たなエンノアを求めるという決断。
この寡兵でレザンジュ王国を相手取るなど、我ら以外の者には無謀と映るであろう。
が、エンノアには未来を照らす預言が存在する。
我らを精神的に支えてくれる無比なる拠り所、絶対の託宣。
状況はその言葉通り。
黒と白が現れ、全てが滞りなく進んでおる。
加えて、エンノアの心に深く根付く無念の思い。
読心の異能を持つ我らだからこそ受け継ぐことができた痛惜の念。
数百年に渡り、まるで自らの身に起きたことのように感じ続けてきた積怨の思いを、今代で晴らすことができる。
この感情、我ら以外の誰が理解できようか。
「エンノアの皆さん、もう十分です。ここで退いてください」
歓声が湧く中、こちらに近づいて来たのはコーキ殿。
「コーキ殿は?」
「ここで殿を務めた後、エンノアに戻ります」
「……」
「今が潮時です。皆さんは戻ってください」
「ですが!」
「我らはまだ闘えます」
「「「コーキさん!」」」
「「「コーキ殿!」」」
皆の気持ちも理解できる。
とはいえ……。
「この戦いが全てではありません。次に備えましょう」
「「「「「……」」」」」
ここは、コーキ殿の言葉通り。
それが最善じゃろう。
「皆、コーキ殿の命に従うのだ」
「「「「「ゼミア様!」」」」」
「「「「「長老!」」」」」
「分かったか?」
「「「「「「「……」」」」」」」
「「「「「「「……」」」」」」」
未練はあるものの、皆頷いている。
ならば、よし。
「スぺリス、フォルディ、行くぞ」
「「はっ!」」
***************************
エンノアに預けておいた改造クロスボウによる魔法矢の斉射で状況は一変。
目の前に迫っていた王軍は、完全に混乱状態に陥っている。
未知の兵器による強襲を受け、予想もしていなかった被害が出たのだから当然とはいえ。これは想像以上だな。
「な、なんだ?」
「あの矢は、いったい?」
重傷を負って倒れ伏している者もそれなりに見えるが、それ以上に目立つのが軽傷または無傷なのに呆然と立ち尽くしている敵兵の姿。
「盾だ。今すぐ大盾を使わせろ!」
「大盾は用意しておりません」
「何だと!」
「速度重視の追撃兵装ですので」
「っ!」
指揮系統も正常に機能しているとは思えない。
こうなると、兵の運用どころじゃないな。
魔法矢の2斉射だけで、ここまでの効果か。
「……」
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