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第8章 南部動乱編
会議は続く
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今後のワディンの方針。
俺なら、どう考えるか?
「……」
もちろん、何が最善なのかは分かるわけもない。
この特殊な状況下において、単純な答えなど存在しないのだから。
ただ、そうなると。
「先生?」
「……どの選択にも利点と難点がある。何を重視するかで決めるしかないだろう」
「そこが難しいんじゃねえか」
「ああ、厄介なところだな。で、ヴァーンの考えは?」
「俺は……一度オルドウに戻りてえな。何と言っても、オルドウは俺たちの街だからよ」
シアとアルも頷いている。
オルドウに思い入れのある3人だ。
そう考えるのも当然のことかもしれない。
「ディアナ、ユーフィリア、おめえらはどう思う?」
「私はセレスティーヌ様に従うのみ。考えるまでもないな」
「私も」
「まっ、最終的にはそうなるだろうが、今は個人の意見を聞いてんだぜ」
「護衛騎士に個人の意見など必要ない」
「そうかよ」
「ああ、冒険者とは違うのだ」
「けっ」
内容は違えど、このようなやり取りが室内のいたる所から聞こえてくる。
休憩中だというのに。
「……」
「……」
とにかく、今はまだ決め手に欠けている状況。
すぐに結論が出るようにも見えない。
とはいえ、いつまでもここで話している時間もないんだ。
エンノアを出るなら早い方が良いのだから。
と、そこに。
「皆さん、お話し中に申し訳ないのですが食事の用意ができましたので、こちらにお越しください」
エンノアの民が俺たちを迎えに来てくれた。
「今後については、食事の後に話しましょう。もちろん、我々エンノアも参加いたします」
「スぺリス殿?」
「どうか、お気になさらず」
「……」
「一度受け入れた以上、我らは皆さんのことを同胞と考えておりますから」
「ということで、我らエンノアは全面的に皆さんを支援いたします。レザンジュ王軍がやって来ようとも問題はありません」
広間で話しているのはスぺリスさん。
彼がエンノアの代表として発言を続けている。
「この地下にいれば彼らとて、我らを見つけることは容易ではないはず」
「「「「「「「……」」」」」」」
「「「「「「「……」」」」」」」
食事の後。
ワディンの騎士とエンノアの民が一堂に会し、話し合いを始めたところ。
途中からはエンノアの独壇場となり。
「オルドウや他の都市より、よっぽど安全でしょう」
「「「「「「「……」」」」」」」
「「「「「「「……」」」」」」」
「エンノアに残る以上の考えがあれば話も違ってきますが、現状は他の選択肢はないと愚考します」
エンノアによる協力とこの地に留まることの利点、去ることの難点を理路整然と主張し続ける彼らに、ワディンは反論することもできないままになっている。
それならば俺からと、いくつかの発言をし、エンノアを巻き込みたくないという趣旨の主張もしたのだが、彼らはそんなこと全く意にも介さず。
「エンノアはコーキ殿から受けた恩を忘れていません。コーキさんの問題ならば、喜んで巻き込まれますよ」
こう強く言い切られてしまった。
さらには、フォルディさんや他の皆も同じようなことを口々に。
そこまで言われると俺も……。
いや、本当にありがたいことなんだ。
ただ、どうしても申し訳ない気持ちが拭い切れないだけで。
「それでは、ワディンの皆様。この地に留まるということでよろしいでしょうか? よろしければ、ここからは対レザンジュについて話を進めていきたいと思いますが?」
「「「「セレスティーヌ様?」」」」
「……」
「「「「セレス様}」」」」
「……隊長、ワディンの皆さん」
「「「「「「「……」」」」」」」
「「「「「「「……」」」」」」」
「「「「「「「……」」」」」」」
「エンノアの方々がここまで言ってくれているのです」
俺なら、どう考えるか?
「……」
もちろん、何が最善なのかは分かるわけもない。
この特殊な状況下において、単純な答えなど存在しないのだから。
ただ、そうなると。
「先生?」
「……どの選択にも利点と難点がある。何を重視するかで決めるしかないだろう」
「そこが難しいんじゃねえか」
「ああ、厄介なところだな。で、ヴァーンの考えは?」
「俺は……一度オルドウに戻りてえな。何と言っても、オルドウは俺たちの街だからよ」
シアとアルも頷いている。
オルドウに思い入れのある3人だ。
そう考えるのも当然のことかもしれない。
「ディアナ、ユーフィリア、おめえらはどう思う?」
「私はセレスティーヌ様に従うのみ。考えるまでもないな」
「私も」
「まっ、最終的にはそうなるだろうが、今は個人の意見を聞いてんだぜ」
「護衛騎士に個人の意見など必要ない」
「そうかよ」
「ああ、冒険者とは違うのだ」
「けっ」
内容は違えど、このようなやり取りが室内のいたる所から聞こえてくる。
休憩中だというのに。
「……」
「……」
とにかく、今はまだ決め手に欠けている状況。
すぐに結論が出るようにも見えない。
とはいえ、いつまでもここで話している時間もないんだ。
エンノアを出るなら早い方が良いのだから。
と、そこに。
「皆さん、お話し中に申し訳ないのですが食事の用意ができましたので、こちらにお越しください」
エンノアの民が俺たちを迎えに来てくれた。
「今後については、食事の後に話しましょう。もちろん、我々エンノアも参加いたします」
「スぺリス殿?」
「どうか、お気になさらず」
「……」
「一度受け入れた以上、我らは皆さんのことを同胞と考えておりますから」
「ということで、我らエンノアは全面的に皆さんを支援いたします。レザンジュ王軍がやって来ようとも問題はありません」
広間で話しているのはスぺリスさん。
彼がエンノアの代表として発言を続けている。
「この地下にいれば彼らとて、我らを見つけることは容易ではないはず」
「「「「「「「……」」」」」」」
「「「「「「「……」」」」」」」
食事の後。
ワディンの騎士とエンノアの民が一堂に会し、話し合いを始めたところ。
途中からはエンノアの独壇場となり。
「オルドウや他の都市より、よっぽど安全でしょう」
「「「「「「「……」」」」」」」
「「「「「「「……」」」」」」」
「エンノアに残る以上の考えがあれば話も違ってきますが、現状は他の選択肢はないと愚考します」
エンノアによる協力とこの地に留まることの利点、去ることの難点を理路整然と主張し続ける彼らに、ワディンは反論することもできないままになっている。
それならば俺からと、いくつかの発言をし、エンノアを巻き込みたくないという趣旨の主張もしたのだが、彼らはそんなこと全く意にも介さず。
「エンノアはコーキ殿から受けた恩を忘れていません。コーキさんの問題ならば、喜んで巻き込まれますよ」
こう強く言い切られてしまった。
さらには、フォルディさんや他の皆も同じようなことを口々に。
そこまで言われると俺も……。
いや、本当にありがたいことなんだ。
ただ、どうしても申し訳ない気持ちが拭い切れないだけで。
「それでは、ワディンの皆様。この地に留まるということでよろしいでしょうか? よろしければ、ここからは対レザンジュについて話を進めていきたいと思いますが?」
「「「「セレスティーヌ様?」」」」
「……」
「「「「セレス様}」」」」
「……隊長、ワディンの皆さん」
「「「「「「「……」」」」」」」
「「「「「「「……」」」」」」」
「「「「「「「……」」」」」」」
「エンノアの方々がここまで言ってくれているのです」
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