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第8章 南部動乱編

貸し?

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 壬生少年がひとつ話をする?

「しがらみについてか?」

「それとは別の話ですね」

 この流れで、どんな話をするつもりだ?

「貸しになりますけど?」

「……」

「あ~、分かりました。貸し無しで話しますよぉ」

「……」

「今は、このお姉さんをひとりであの家に帰さない方がいいですね」

「……おまえ、何を知ってる?」

「また、怖い顔になってますよ」

「和見家に何がある?」

「うーん、それはですねぇ……」

 早く話せ。

「嫌な奴が和見家を訪問中なんです」

 嫌な奴?

「誰だ?」

「有馬さん、さっきから言葉遣いが酷いですよ。もっと穏やかに話せません?」

「……誰が訪問しているのか、教えてほしい」

「そうそう、そう言ってくれれば、ぼくも気持ちよく話せます」

「……」

 よくないな。
 壬生のペースになってる。

「実はですね、そこのお姉さんと鷹郷の部下が壬生の長男を捕まえてしまったもので、壬生家は怒り心頭って感じでして」

「君の兄のことだな?」

「そうなります。血はつながってませんが、一応は兄ですので」

 実の兄じゃないのか?

「とにかく、そう遠くない内に何か仕掛けてくると思いますよ」

 壬生家が?
 しばらく大人しくしているのでは?

「多分、研究所の方に」

「……」

「ということで、用心してくださいね」

「いつ何をする?」

「分かりません」

「まさか、また襲撃をするつもりなのか?」

「だから、ぼくには分からないですって。でも……正面から襲撃することはないと思いますよ」

 壬生家は、おまえや橘のような襲撃をするつもりはない?

「今日はその前段階。壬生の者が和見家に訪問中です」

「研究所に仕掛けるのに、和見家を訪問する理由は?」

「さあ、何でしょ?」

「……」

「まっ、そういうことですので、今お姉さんがひとりで帰ると良いことはありません。帰宅はもう少し後にした方がいいですね」

 今の和見家には壬生家の使者がいる。
 幸奈がひとりでその者と会うのは避けた方がいいと?

「有馬さんが一緒に和見家を訪れるのなら問題ありませんけど。というか、それなら今すぐ戻った方がいいのかな?」

「今なら、俺が和見家を訪れることに意味があると?」

「うーん、すべては有馬さん次第ってところでしょうか」

「……俺次第で何がどう変わる?」

「そこまではねぇ。というか、ぼくにも分からないですよ?」

 ここまで話して、先がないだと。
 なら、何が言いたい、壬生伊織?

「さてと、今話せるのはこれくらいですかね」

「……」

「でも、役に立ったでしょ」

 癪に障る上、釈然としない内容だ。
 それでも、有益な情報ではあるのかもしれない。
 壬生伊織が情報操作していないのであればだが。

「ひとつ貸しですからね」

「貸しにはならないはずだろ」

「あっ、そうでしたね」

「……」

 どこまで計算している?
 こいつだけは上手く読めない。

「では、また会いましょう」

 その言葉を残し、壬生少年の身体が透けていく。
 以前と同様、そのまま姿を消して……。

「コーキさん!?」

「今のは壬生の異能です」

「消える異能!」

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感想 10

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