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第8章 南部動乱編
異形 2
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「……」
依然として、感知に異常は感じられない。
武上の見立て通り、大物が潜んでいる可能性は低いだろう。
過剰な警戒は不要とも考えられる。
そうは思うものの、素人の俺が口を出す場面じゃない。
この場は異形の生態を熟知している古野白さんに従うべきだな。
ただし、静観するだけというのも……。
「俺も出ましょうか?」
「有馬君の実力は十分理解しているけれど、異形の始末は私たちの仕事なの。ここであなたに頼るわけにはいかないわ」
「……」
「そもそも、部外者のあなたが来ていい場所じゃないのよ」
無理についてきた手前、そう言われると返す言葉もない。
「あの、ごめんなさい。古野白さんが心配だったから……」
「幸奈さん……」
セレス様の言葉通り。
電話を受けた後の彼女の様子がただごとではなかったから、同行したわけだが。
「とにかく、有馬君は後ろで幸奈さんと待機してて」
「……分かりました」
ひとまずは静観するとしよう。
「炎弾!」
古野白さんの炎の異能が炸裂。
「グギィィ!」
5発目の炎弾を身に受けて、悲鳴をあげるカマキリ。
明らかに効いている。
「おりゃあ!!」
さらに武上の投擲。
ドカン!
投げつけた拳大の石がカマキリの胸に当たり砕け散った。
が、カマキリの体表にも小さくない傷を残している。
「効いてんぞ」
「ええ」
住宅地での戦いは周囲への被害を考慮する必要がある。
容易ではない戦場だ。
そんな中での古野白さんと武上の戦いぶりは見事としかいいようがない。
敵から距離を取り、遠隔攻撃で敵を削る。
反撃を試みるカマキリの動きを読み、さらに距離を取って攻撃。
全く被害を受けることなく、敵を翻弄。
秀逸な攻防を続けている。
「そろそろ、近づいていいか?」
「まだよ。焦らないで」
「別に焦ってないけどよぉ。もう倒しちまおうぜ?」
「敵は1体。遠距離攻撃の手段もない。すぐに鷹郷さんが到着する状況で、無理する必要はないわ」
「こんなの無理じゃねえぞ」
「それでもよ」
「ちっと用心しすぎだろ?」
「不用心よりましでしょ」
「古野白ぉ……おまえ、過去に囚われてねえか?」
「……」
「あれは、もう終わったこと。過去の例外なんだよ」
「そんなの、分からないわ。邪狼狗みたいな怪物がいつ現れるか……」
普段の古野白さんらしからぬ様子は、どうやら邪狼狗という異形との過去に関係しているようだ。
「可能性なんてなぁ、考えだしたらきりがない」
「……」
「ここには邪狼狗はいねえよ」
「……用心は悪いことじゃない。そうでしょ?」
「まあ、な」
「とにかく、今は鷹郷さんを待つわ」
「……分かったよ」
複雑な顔をしつつも、古野白さんの指示に従う武上。
暴走はしない、か。
俺が思っている以上に、2人の関係には深いものがあるのかもしれないな。
「ギギ、ギギギィ!」
「武上君、次に備えて」
「……りょーかい」
「炎弾!」
「ギギィィ!」
「だあぁ!!」
「グギギ!」
異能攻撃も物理攻撃も相変わらず遠距離からのみ。
「炎弾!」
「グギャァ!」
それでも。
リスクを避けながら、戦いを完全にコントロールしている。
俺の出る幕なんて、まったくなさそうだ。
依然として、感知に異常は感じられない。
武上の見立て通り、大物が潜んでいる可能性は低いだろう。
過剰な警戒は不要とも考えられる。
そうは思うものの、素人の俺が口を出す場面じゃない。
この場は異形の生態を熟知している古野白さんに従うべきだな。
ただし、静観するだけというのも……。
「俺も出ましょうか?」
「有馬君の実力は十分理解しているけれど、異形の始末は私たちの仕事なの。ここであなたに頼るわけにはいかないわ」
「……」
「そもそも、部外者のあなたが来ていい場所じゃないのよ」
無理についてきた手前、そう言われると返す言葉もない。
「あの、ごめんなさい。古野白さんが心配だったから……」
「幸奈さん……」
セレス様の言葉通り。
電話を受けた後の彼女の様子がただごとではなかったから、同行したわけだが。
「とにかく、有馬君は後ろで幸奈さんと待機してて」
「……分かりました」
ひとまずは静観するとしよう。
「炎弾!」
古野白さんの炎の異能が炸裂。
「グギィィ!」
5発目の炎弾を身に受けて、悲鳴をあげるカマキリ。
明らかに効いている。
「おりゃあ!!」
さらに武上の投擲。
ドカン!
投げつけた拳大の石がカマキリの胸に当たり砕け散った。
が、カマキリの体表にも小さくない傷を残している。
「効いてんぞ」
「ええ」
住宅地での戦いは周囲への被害を考慮する必要がある。
容易ではない戦場だ。
そんな中での古野白さんと武上の戦いぶりは見事としかいいようがない。
敵から距離を取り、遠隔攻撃で敵を削る。
反撃を試みるカマキリの動きを読み、さらに距離を取って攻撃。
全く被害を受けることなく、敵を翻弄。
秀逸な攻防を続けている。
「そろそろ、近づいていいか?」
「まだよ。焦らないで」
「別に焦ってないけどよぉ。もう倒しちまおうぜ?」
「敵は1体。遠距離攻撃の手段もない。すぐに鷹郷さんが到着する状況で、無理する必要はないわ」
「こんなの無理じゃねえぞ」
「それでもよ」
「ちっと用心しすぎだろ?」
「不用心よりましでしょ」
「古野白ぉ……おまえ、過去に囚われてねえか?」
「……」
「あれは、もう終わったこと。過去の例外なんだよ」
「そんなの、分からないわ。邪狼狗みたいな怪物がいつ現れるか……」
普段の古野白さんらしからぬ様子は、どうやら邪狼狗という異形との過去に関係しているようだ。
「可能性なんてなぁ、考えだしたらきりがない」
「……」
「ここには邪狼狗はいねえよ」
「……用心は悪いことじゃない。そうでしょ?」
「まあ、な」
「とにかく、今は鷹郷さんを待つわ」
「……分かったよ」
複雑な顔をしつつも、古野白さんの指示に従う武上。
暴走はしない、か。
俺が思っている以上に、2人の関係には深いものがあるのかもしれないな。
「ギギ、ギギギィ!」
「武上君、次に備えて」
「……りょーかい」
「炎弾!」
「ギギィィ!」
「だあぁ!!」
「グギギ!」
異能攻撃も物理攻撃も相変わらず遠距離からのみ。
「炎弾!」
「グギャァ!」
それでも。
リスクを避けながら、戦いを完全にコントロールしている。
俺の出る幕なんて、まったくなさそうだ。
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