上 下
681 / 1,194
第8章 南部動乱編

野営

しおりを挟む
<アル視点>



 セレス様の顔に生気はなく、瞳には光も見えない。
 ずっとこんな様子だ。

「……」

 まあさ。
 理解はできるよ。

 おれだって、騎士のみんなだって、あの衝撃はまだ消えていないんだ。
 実の父親を亡くしたセレス様の想いは、おれの想像を超えていると思うし。
 気持ちの整理がつかないのも当然だと思う。

 けど、いつまでもこれでいいわけないからさ。
 だから。

 セレス様に近づいて、気楽に気軽に。

「セレス様……」

「……」

「セレス様は、テポレン越えを経験してますよね」

「……」

「あの時は、どうでした?」

「……コーキさんが助けてくれましたから」

 おっ、答えてくれたぞ。

「コーキさんのおかげで、無事に山を下りることができたんです」

「なら、今回も安心ですね」

「……はい」

 まだ、上の空って感じだけど。
 こうして話をしてくれるだけで、今は十分かな。
 姉さんもみんなも、そんな顔をしてるよ。

 なんて思いながら歩いているうちに。

「セレスティーヌ様、そろそろ野営の準備をしたいと思います」

 野営地に到着したようだ。

「……はい」

「では、あの開けた辺りで」

 ルボルグ隊長の指揮のもと、騎士のみんなが野営の準備を開始。
 もちろん、ヴァーンさんやコーキさんも一緒に設営している。

 んん?
 コーキさん、どうした?
 その微妙な感じは?

 周囲を見渡して何か考えている?

「コーキ、気になることでもあんのか?」

「いや……」

「煮え切らねえ返事だなぁ」

「……」

 やっぱり、おかしい。
 この辺りに何か問題が?
 でも、問題ある場所での野営ならコーキさんが止めるはずだし。

 いったい……?

 っと!

「あれは!?」

 前方に見える大岩の後ろから、突然人影が?
 それも、ワディン騎士じゃない。
 正体不明の男が3人!

 こんな所にどうして?
 まさか、王軍の追手?

「コーキ!」

 コーキさん、3人を凝視している。
 気配を感じてたってことか。

「誰だ、あいつら?」

「……ヴァーン、アル、大丈夫だ」

「けど、あやしい3人が」

「心配はいらない」

 そう言ってコーキさんが3人に近づいていく。

「「「「「……」」」」」
「「「「「……」」」」」
「「「「「……」」」」」

 その様子を皆が固唾をのんで見守っている。


「コーキさん、お久しぶりです」

 えっ?
 知り合い?

「ご無沙汰しております、フォルディさん」

 フォルディさん?

 あっ!
 そうだ、フォルディさんだ!

 いつもと様子が違うから気付かなかった。
 でも、フォルディさんがどうしてテポレン山なんかに?

「お元気そうで何よりですよ。で、これは、どうされたんです?」

「実は……」

しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

社畜から卒業したんだから異世界を自由に謳歌します

湯崎noa
ファンタジー
ブラック企業に入社して10年が経つ〈宮島〉は、当たり前の様な連続徹夜に心身ともに疲労していた。  そんな時に中高の同級生と再開し、その同級生への相談を行ったところ会社を辞める決意をした。  しかし!! その日の帰り道に全身の力が抜け、線路に倒れ込んでしまった。  そのまま呆気なく宮島の命は尽きてしまう。  この死亡は神様の手違いによるものだった!?  神様からの全力の謝罪を受けて、特殊スキル〈コピー〉を授かり第二の人生を送る事になる。  せっかくブラック企業を卒業して、異世界転生するのだから全力で謳歌してやろうじゃないか!! ※カクヨム、小説家になろう、ノベルバでも連載中

魔法少女の魔法少女による魔法少女のためのご主人様幸せ化計画

円田時雨
ファンタジー
「あなたを幸せにするためにやってきた魔法少女みたいなもんですっ!」 異世界でもなんでもないのに突然やってきた自称魔法少女たち。 俺に隠された力があるとかなんとか言ってるが、頼むから俺の平凡な日常を奪い去らないでく…… 「これからよろしくっ!マスターっ!」 こうして俺と3人の魔法少女たちのビミョーな非現実的日常生活が始まった!

幼少期に溜め込んだ魔力で、一生のんびり暮らしたいと思います。~こう見えて、迷宮育ちの村人です~

月並 瑠花
ファンタジー
※ファンタジー大賞に微力ながら参加させていただいております。応援のほど、よろしくお願いします。 「出て行けっ! この家にお前の居場所はない!」――父にそう告げられ、家を追い出された澪は、一人途方に暮れていた。 そんな時、幻聴が頭の中に聞こえてくる。 『秋篠澪。お前は人生をリセットしたいか?』。澪は迷いを一切見せることなく、答えてしまった――「やり直したい」と。 その瞬間、トラックに引かれた澪は異世界へと飛ばされることになった。 スキル『倉庫(アイテムボックス)』を与えられた澪は、一人でのんびり二度目の人生を過ごすことにした。だが転生直後、レイは騎士によって迷宮へ落とされる。 ※2018.10.31 hotランキング一位をいただきました。(11/1と11/2、続けて一位でした。ありがとうございます。) ※2018.11.12 ブクマ3800達成。ありがとうございます。

スキルを極めろ!

アルテミス
ファンタジー
第12回ファンタジー大賞 奨励賞受賞作 何処にでもいる大学生が異世界に召喚されて、スキルを極める! 神様からはスキルレベルの限界を調査して欲しいと言われ、思わず乗ってしまった。 不老で時間制限のないlv上げ。果たしてどこまでやれるのか。 異世界でジンとして生きていく。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

転生チートは家族のために~ユニークスキルで、快適な異世界生活を送りたい!~

りーさん
ファンタジー
 ある日、異世界に転生したルイ。  前世では、両親が共働きの鍵っ子だったため、寂しい思いをしていたが、今世は優しい家族に囲まれた。  そんな家族と異世界でも楽しく過ごすために、ユニークスキルをいろいろと便利に使っていたら、様々なトラブルに巻き込まれていく。 「家族といたいからほっといてよ!」 ※スキルを本格的に使い出すのは二章からです。

処理中です...