３０年待たされた異世界転移

第８章 南部動乱編

迎撃 ２

　魔法攻撃を受けたレザンジュ王軍の悲鳴で溢れかえる平原。
　一方、味方のワディン騎士たちの意気は軒昂そのもの。

「「よし！」」

「「やったぞ！」」

「序盤は完璧だぜ！　なあ、コーキ」

「ああ」

「なら、こっからはアレだな。隊長」

「ええ……近接隊突撃！」

　ルボルグ隊長の号令のもと、ワディン騎士たちが前に出た。

「「「「「「「「「「おおぉぉぉ！！！」」」」」」」」」」

　魔法の援護を受けながら、近接攻撃専門のワディン騎士たちがレザンジュの追跡軍に襲いかかる。

「「ファイヤーボール！」」
「「ファイヤーアロー！」」

「「「「「いけぇ！！」」」」」

　素晴らしいタイミングの強襲だ。
　
　キン、ギン！
　ザン、サシュッ！
　バシュッ！　

　ドン！
　ドガン！
　バリン！

　トゥレイズを出てから今回で五度目の迎撃戦。

「「「「「おおぉぉ！！」」」」」

「やってらんねぇ」
「逃げるぞ」
「オレも」

「「ストーンボール！」」
「「ファイヤーボール！」」

「「「「「ああぁぁ……」」」」」

「足を止めろ、迎え撃て！」
「止まれ、止まるんだぁ！」

　これまでの迎撃戦で得た経験が存分に活きている。
　魔法と剣撃の連携も滑らかなもの。
　当然、ここからの攻撃も。

「ってぇ！！」

「「ファイヤーボール！」」
「「ファイヤーアロー！」」

　攻撃の中心を、敵先鋒に向けての剣撃から魔法攻撃に変更。

　ドン、ドガン、ドガン！！

　大きく弧を描いた火の玉と矢が味方の頭を越え敵に突き刺さる。

「「「「「うわぁぁ！！」」」」」

「「ファイヤーボール！」」
「「ファイヤーアロー！」」

「もう駄目だぁ」
「いったん、下がれぇ」

「下がるんじゃない！」
「おまえらぁ、このまま攻めるんだぁ！」

　王軍の先陣はほぼ総崩れの状態。


「コーキ、とどめを刺してやれよ」

「そうだな……雷波、雷波！！」

「「「「「「「ぎゃぁぁぁ」」」」」」」
「「「「「「「ああぁぁ……」」」」」」」

　これでもう、敵の先陣に余力はないはず。
　残るは後陣のみ。

「魔法隊に後れを取るんじゃねえぞ！」

「「「「「「「「「「おうっ！！！」」」」」」」」」」

　ワディン騎士たちが倒れ伏すレザンジュ先陣を越え後陣に襲い掛かった。
　完全にこっちのペースだ。

　ただし、今回の迎撃戦は四度目までとは少し違う。
　それはレザンジュ王軍の兵数。
　過去四回は２００の兵数だったのに、今回は倍の４００はいるようだからな。

　対して、味方の兵数に変わりはなし。
　トゥレイズを脱した俺たちに、後ほど加わった騎士を加えての約５０。
　軍隊と呼ぶのもはばかられる程度の小隊に過ぎない。
　しかも騎士の大半は負傷中。
　これまでの戦いでほとんど数を減らしていないとはいえ、まったく楽観できる備えじゃない。そんな状況の中、治癒魔法と回復薬でごまかしながら戦っている。

「……」

　ワディン騎士たちの体調を考えれば、頭が下がるほどの戦いぶりだろう。
　とはいえ寡兵、負傷兵での迎撃ゆえ、長時間の戦闘は避けたいところ。
　こっちは、僅かであれ戦力を失うわけにはいかないのだから。


「魔法隊、追撃！　撃てぇ！」

「「ファイヤーボール！」」
「「ファイヤーアロー！！」」
「「ストーンボール！！」」

　ワディンの魔法隊は１２名。
　攻撃魔法、防御魔法、治癒魔法、それ以外の一般魔法のいずれかに特化した使い手がほとんどだが、中には複数を使いこなす者もいる。ちなみに、ヴァーンは攻撃と防御、シアは攻撃と治癒魔法が得意だな。

　と。
　こうしている間にも、魔法隊の攻撃が次々と決まっていく。

「「「「「「うわぁぁ！！」」」」」」

「下がれ、下がれぇ！　陣形を整えるぞ！」