30年待たされた異世界転移

明之 想

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第8章 南部動乱編

白都キュベルリア 1

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<イリアル視点>



 神娘の追跡、捕縛。
 あのバケモノがいるだけで、超難度の仕事になっちまう。

「……」

 メルビンによると、あいつはドラゴンをひとりで倒す力を持ち、その剣技は剣姫に匹敵するらしい。

 さらに、それに加えてだ。
 あの魔法の腕前。
 遠距離からこっちを狙撃してきた攻撃魔法は、とんでもねえもんだった。

 兵数200の単隊で対処できるなんて、とてもじゃないが思えねえ。
 複数の部隊でかかれば、ギリギリ何とかなるってところだろ。


「厄介なことだな」

「……ですね」

 はあ~。
 また仕事が長引きそうじゃねえか。
 こっちは、やつの動向を探ればいいだけとはいえ、面倒事に変わりはねえんだからよ。

 ん?

 そういえば、ボスからの指示をもらってねえぞ。
 ってことは、もう俺の仕事じゃない?
 バケモンの監視は終わりか?




********************

<ギリオン視点>



「おい、おい、おい、どういうこった?」

「何がだ?」

「何がじゃねえぞ、レイリューク! おめえが呼んだんだろうがよ」

「それは、前回のことだな」

「はあ? おめえ、また戻って来いって言ったよなぁ?」

 レイリュークから依頼された王都キュベルリアでの仕事。
 そいつを終えた後に、レイリュークが言った言葉だ。
 忘れたとは言わせねえ。

「ギリオン、お前は社交辞令という言葉を知っているか?」

「ったりめえだ! それがどうした!」

「……それだ」

「ああ!?」

「戻って来いというのは、社交辞令だと言ってる」

「……」

「理解したか?」

「はっ、そんなこと知るかよ! てめえが吐いた言葉に責任持ちやがれ!」

 おめえの言葉があったから、こうして戻ってきたんだ。
 オルドウから王都のレイリューク道場までな。

「はあ……社交辞令だと言ってるだろ」

「言い訳すんじゃねえ!」

「……私は暇じゃないんだ。またにしてくれ」

「またじゃねえ。今の話しだろうが!」

「……とにかく、おまえを雇うつもりはない」

「おめえ、吐いた唾を吞むってんだな」

「もういい。諸君、彼にあれを渡して帰ってもらうように」

「「「「「承知しました」」」」」

 ちっ!
 門弟がぞろぞろと。

「おい、先生を煩わすのはやめろ」

 10人に囲まれちまったか……。

「これを持って帰れ」

「何だ、こいつぁ?」

「今夜の宿代くらいにはなるだろ」

「おめえら……このギリオン様を舐めんじゃねえぞ!」

「「「「「……」」」」」

「レイリュークよ、おめえの考えはよーく分かった。こんな仕事はなぁ、こっちから願い下げだぜ」

「……そうか。では、達者でな」

「けっ!」

「ほら、もう帰れ!」

「うるせえ。分かってらぁ」

 こんな道場、二度と来てやるかよ!
 仕事じゃねえなら、レイリュークにも用はねえ!

 何てったって3本中1本は取れるようになったんだ。
 もうすぐオレの剣の方が上になる。
 いや、もう既にオレが上だろうからな。



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