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第7章 南部編
籠城 6
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レザンジュ王軍が兵糧攻めをする?
いや。
やはり、そうは思えないな。
根拠は乏しいけれど、それでもなぜか強く感じてしまう。
王軍が兵糧攻めによる長期戦など望んでいないと。
とはいえ、短期決戦を狙っていたわけでもないだろう。
短期でも長期でもなければ、中期。
中期とは、どれくらいの期間なんだ?
分からない。
「……」
いまだ大きな動きを見せないレザンジュ王軍。
それに対峙するワディン側はというと。
開戦から8日の間、ひたすらトゥレイズに籠るばかり。
特に策を練ることもなく、夜襲のひとつも敢行していない。
いくら相手が5倍以上の大軍とはいえ、ここまで何もしないというのも……。
全軍を指揮するのが代理のトゥレイズ子爵だから、大胆な戦術をとれないだけ?
あるいは何か考えあってのこと?
これも、分からない。
セレス様(幸奈)も子爵から何も聞いていないらしい。
「……」
本当に分からないことだらけの現状。
気持ちの悪い膠着状態が続いている。
「おっ、今日も終わりみたいだぜ」
「ほんとだ。あいつら、もう野営の準備かよ」
夕暮れまではかなり時間があるというのに、随分早いな。
「ディアナ、こっちも夜の備えを始めるか?」
「いや、まだだ。本営から通達がないのだから、定時まで続ける」
「……だろうな」
こうした会話がこの後も続き、8日目も大過なく無事に終了した。
開戦から10日が経過。
幸いなことに、俺の杞憂は杞憂のまま。
膠着した戦況に変化はない。
両軍は相変わらず遠距離からの魔法攻撃を約束事のように繰り返すばかり。
そうして迎えた11日目の早朝。
微かに白み始めた空を見ながら身体を動かすべく、中庭に出たところ。
うん?
いつもとは異なる喧騒が、城壁と城門から聞こえてくる。
まさか、こんな早朝から?
王軍が何かを仕掛けてきた?
杞憂が現実に?
いや、まだそうと決まったわけじゃない。
なら、俺は。
城壁まで様子を見に行くべきか?
一度、幸奈のもとに顔を出すべきか?
僅かな逡巡に身体が止まっていた俺の耳に入ってきたのは、想定外の言葉だった。
「大変です!! 門が、正門が突破されましたぁ!!」
なっ!?
正門が破られた?
馬鹿な!
正門はトゥレイズ城塞の中でも最も強固な防御魔法で護られており、さらには攻撃魔法を無効化する仕掛けも施されているはず。
そんな正門を王軍が破壊したと?
昨日までは王軍の兵が近づくことすらなかったというのに。
「正門はもう駄目です!」
「王軍が城内に!」
「緊急配備を!」
子爵邸に駆けこんで来る男たちの悲鳴のような声。
緊張感がいやが上にも伝わってくる。
「内壁の防御を、内壁を守るんだ!」
「待機中の者は今すぐ内壁へ走れ!」
屋敷の内外から聞こえる怒号も普通じゃない。
これはもう、間違いないか。
「コーキ!」
「コーキさん!」
「ヴァーン、アル……」
中庭に姿を現したふたりの顔にも焦りの色。
昨日までの余裕はどこにも見えない。
「正門が突破されたって、本当か?」
「直接確認したわけじゃないが、その可能性は高いだろうな」
「ちっ!」
「コーキさん、どうする?」
いや。
やはり、そうは思えないな。
根拠は乏しいけれど、それでもなぜか強く感じてしまう。
王軍が兵糧攻めによる長期戦など望んでいないと。
とはいえ、短期決戦を狙っていたわけでもないだろう。
短期でも長期でもなければ、中期。
中期とは、どれくらいの期間なんだ?
分からない。
「……」
いまだ大きな動きを見せないレザンジュ王軍。
それに対峙するワディン側はというと。
開戦から8日の間、ひたすらトゥレイズに籠るばかり。
特に策を練ることもなく、夜襲のひとつも敢行していない。
いくら相手が5倍以上の大軍とはいえ、ここまで何もしないというのも……。
全軍を指揮するのが代理のトゥレイズ子爵だから、大胆な戦術をとれないだけ?
あるいは何か考えあってのこと?
これも、分からない。
セレス様(幸奈)も子爵から何も聞いていないらしい。
「……」
本当に分からないことだらけの現状。
気持ちの悪い膠着状態が続いている。
「おっ、今日も終わりみたいだぜ」
「ほんとだ。あいつら、もう野営の準備かよ」
夕暮れまではかなり時間があるというのに、随分早いな。
「ディアナ、こっちも夜の備えを始めるか?」
「いや、まだだ。本営から通達がないのだから、定時まで続ける」
「……だろうな」
こうした会話がこの後も続き、8日目も大過なく無事に終了した。
開戦から10日が経過。
幸いなことに、俺の杞憂は杞憂のまま。
膠着した戦況に変化はない。
両軍は相変わらず遠距離からの魔法攻撃を約束事のように繰り返すばかり。
そうして迎えた11日目の早朝。
微かに白み始めた空を見ながら身体を動かすべく、中庭に出たところ。
うん?
いつもとは異なる喧騒が、城壁と城門から聞こえてくる。
まさか、こんな早朝から?
王軍が何かを仕掛けてきた?
杞憂が現実に?
いや、まだそうと決まったわけじゃない。
なら、俺は。
城壁まで様子を見に行くべきか?
一度、幸奈のもとに顔を出すべきか?
僅かな逡巡に身体が止まっていた俺の耳に入ってきたのは、想定外の言葉だった。
「大変です!! 門が、正門が突破されましたぁ!!」
なっ!?
正門が破られた?
馬鹿な!
正門はトゥレイズ城塞の中でも最も強固な防御魔法で護られており、さらには攻撃魔法を無効化する仕掛けも施されているはず。
そんな正門を王軍が破壊したと?
昨日までは王軍の兵が近づくことすらなかったというのに。
「正門はもう駄目です!」
「王軍が城内に!」
「緊急配備を!」
子爵邸に駆けこんで来る男たちの悲鳴のような声。
緊張感がいやが上にも伝わってくる。
「内壁の防御を、内壁を守るんだ!」
「待機中の者は今すぐ内壁へ走れ!」
屋敷の内外から聞こえる怒号も普通じゃない。
これはもう、間違いないか。
「コーキ!」
「コーキさん!」
「ヴァーン、アル……」
中庭に姿を現したふたりの顔にも焦りの色。
昨日までの余裕はどこにも見えない。
「正門が突破されたって、本当か?」
「直接確認したわけじゃないが、その可能性は高いだろうな」
「ちっ!」
「コーキさん、どうする?」
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