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第7章 南部編
籠城 2
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<ディアナ視点>
戦況は、こちらにとって悪くない。
狙い通りといっていいだろう。
「「「ファイヤーボール!」」」
「「「ファイヤーアロー!」」」
「「「アイスアロー!」」」
「「「ストーンボール!」」」
今、城壁前で繰り広げられている魔法を中心とした戦闘は派手に映る。
空を飛来する数多の魔法や弓矢は、鮮麗と言ってもいいほどだ。
ただ実際のところ……。
戦闘自体は単調になりがち。
遠距離からの射撃が中心なのだから、それも仕方のないことだ。
代わり映えしない魔法。
単調な空中戦。
物足りない。
こうして剣もとらず、城壁の上に3日もいる我々騎士にとって当然の感慨だろう。
うん?
ユーフィリアがこちらを見ている。
「どうした?」
「そろそろ……」
「魔力切れが近いのか?」
「そう」
今回の籠城戦において、ユーフィリアの魔法は貴重なもの。
威力も精度も射程距離も群を抜いている彼女の射撃は、東側の城壁守備で最高の攻撃手段となっている。
そのユーフィリアが魔力切れ。
「あと2,3発だと思う」
「それなら、少し休んだ方がいい」
「……分かった」
ユーフィリアが休憩に入るとなると。
ちょっとやり方を変える必要があるか。
「「「「ファイヤーボール!」」」」
「「「「ファイヤーアロー!」」」」
トゥレイズの東城壁上にいる魔法の使い手たち。
ユーフィリアを除くと、ほとんど全員が同じようなレベルに見えてくる。
皆、それなりに優秀な魔法使いなのだが、ユーフィリアの魔法に慣れている私にとっては、どうしても微妙に映ってしまうな。
「……」
それに、あの男。
オルドウの冒険者コーキ。
彼の魔法を見てしまうと、もう……。
今回は子爵の命令で戦闘には参加していない彼が今この場にいたら?
戦況は?
間違いない。
状況はさらに好転していただろう。
いかに凄腕であろうとも、たったひとり。
ひとりの冒険者に過ぎないのに。
彼がいれば、目の前にいる6万の王軍が相手でも……。
そう思えてしまう。
頼もしくも恐ろしいことだよ。
ただ、今回はこれで良かったと思う。
今、私が置かれている立場を考えると。
「……」
嫌なものだな。
こんなことを考える私は、本当に……。
「「「「ファイヤーアロー!」」」」
「「「「ストーンボール!」」」」
「「「「ファイヤーボール!」」」」
相変わらず、魔法と弓矢が飛び交う戦場。
王軍の方も破城槌などによる攻撃を中断して、今は遠距離攻撃に専念しているようだ。
と?
「「「あれは?」」」
「「「何だ?」」」
兵たちが見つめる先。
敵軍に若干の変化が見える?
「……」
前方に光?
これは?
「ディアナ殿、危ない!」
横にいた騎士が私の肩に手を置き抑えつけてきた!
「っ!」
何だ?
ヒュン!
屈んだ私の頭上に?
魔法!
魔法狙撃だ!
「遠距離狙撃です!」
「あの距離から届くのか?」
「はい、腕利きの魔法狙撃手なら」
ユーフィリア以上の腕?
ヒュン、ヒュン!
「くっ! 皆、隠れろ!」
私の声に、周りの兵たちが鋸壁の後ろに身を隠す。
ヒュン!!
そこにまた狙撃魔法が飛来する。
この遠距離を驚くほど正確に!
ヒュン!
が、鋸壁の裏にいれば問題などないはず。
「ディアナ殿?」
「このまま待機だ」
「……」
こうなると、しばらくは様子を見るしかない。
「うん、どうした? 何隠れてんだ?」
背後からの、この声は?
「ヴァーン!?」
屋敷から出てきたのか?
無断で勝手に?
「おまえ、どうして?」
「まあ……何だ。そんなことより、手を貸してやるよ。俺とアルと、コーキがな」
戦況は、こちらにとって悪くない。
狙い通りといっていいだろう。
「「「ファイヤーボール!」」」
「「「ファイヤーアロー!」」」
「「「アイスアロー!」」」
「「「ストーンボール!」」」
今、城壁前で繰り広げられている魔法を中心とした戦闘は派手に映る。
空を飛来する数多の魔法や弓矢は、鮮麗と言ってもいいほどだ。
ただ実際のところ……。
戦闘自体は単調になりがち。
遠距離からの射撃が中心なのだから、それも仕方のないことだ。
代わり映えしない魔法。
単調な空中戦。
物足りない。
こうして剣もとらず、城壁の上に3日もいる我々騎士にとって当然の感慨だろう。
うん?
ユーフィリアがこちらを見ている。
「どうした?」
「そろそろ……」
「魔力切れが近いのか?」
「そう」
今回の籠城戦において、ユーフィリアの魔法は貴重なもの。
威力も精度も射程距離も群を抜いている彼女の射撃は、東側の城壁守備で最高の攻撃手段となっている。
そのユーフィリアが魔力切れ。
「あと2,3発だと思う」
「それなら、少し休んだ方がいい」
「……分かった」
ユーフィリアが休憩に入るとなると。
ちょっとやり方を変える必要があるか。
「「「「ファイヤーボール!」」」」
「「「「ファイヤーアロー!」」」」
トゥレイズの東城壁上にいる魔法の使い手たち。
ユーフィリアを除くと、ほとんど全員が同じようなレベルに見えてくる。
皆、それなりに優秀な魔法使いなのだが、ユーフィリアの魔法に慣れている私にとっては、どうしても微妙に映ってしまうな。
「……」
それに、あの男。
オルドウの冒険者コーキ。
彼の魔法を見てしまうと、もう……。
今回は子爵の命令で戦闘には参加していない彼が今この場にいたら?
戦況は?
間違いない。
状況はさらに好転していただろう。
いかに凄腕であろうとも、たったひとり。
ひとりの冒険者に過ぎないのに。
彼がいれば、目の前にいる6万の王軍が相手でも……。
そう思えてしまう。
頼もしくも恐ろしいことだよ。
ただ、今回はこれで良かったと思う。
今、私が置かれている立場を考えると。
「……」
嫌なものだな。
こんなことを考える私は、本当に……。
「「「「ファイヤーアロー!」」」」
「「「「ストーンボール!」」」」
「「「「ファイヤーボール!」」」」
相変わらず、魔法と弓矢が飛び交う戦場。
王軍の方も破城槌などによる攻撃を中断して、今は遠距離攻撃に専念しているようだ。
と?
「「「あれは?」」」
「「「何だ?」」」
兵たちが見つめる先。
敵軍に若干の変化が見える?
「……」
前方に光?
これは?
「ディアナ殿、危ない!」
横にいた騎士が私の肩に手を置き抑えつけてきた!
「っ!」
何だ?
ヒュン!
屈んだ私の頭上に?
魔法!
魔法狙撃だ!
「遠距離狙撃です!」
「あの距離から届くのか?」
「はい、腕利きの魔法狙撃手なら」
ユーフィリア以上の腕?
ヒュン、ヒュン!
「くっ! 皆、隠れろ!」
私の声に、周りの兵たちが鋸壁の後ろに身を隠す。
ヒュン!!
そこにまた狙撃魔法が飛来する。
この遠距離を驚くほど正確に!
ヒュン!
が、鋸壁の裏にいれば問題などないはず。
「ディアナ殿?」
「このまま待機だ」
「……」
こうなると、しばらくは様子を見るしかない。
「うん、どうした? 何隠れてんだ?」
背後からの、この声は?
「ヴァーン!?」
屋敷から出てきたのか?
無断で勝手に?
「おまえ、どうして?」
「まあ……何だ。そんなことより、手を貸してやるよ。俺とアルと、コーキがな」
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