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第7章 南部編
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<イリアル視点>
「だから、おまえも気をつけろよ」
「俺が? 何に?」
「そのバケモノにだ。今はトゥレイズにいるはずだからな」
「ミッドレミルトからトゥレイズまでバケモノがやって来たってか?」
「そういうことだ」
メルビンは冒険者としてもかなり腕が立つ。
そんな男がバケモノと連呼する相手が並なわけがない。
ちっ。
相当ヤバイのがトゥレイズにいるってことかよ。
「で、どこまで凄え?」
「単独でドラゴンを倒す腕を持っている。その上、剣姫と比べても遜色ない剣技もな」
「なっ! ホントか?」
「ああ、この目で見たから間違いない」
ドラゴンに剣姫……。
とんでもねえぞ。
「とにかく、気をつけろ」
「……」
バケモノがトゥレイズに。
ワディン軍にいる。
「はぁ~。ここまで散々苦労してんのに、またそんなバケモンの相手しなきゃいけねえって。嫌になるぜ」
「いや、その必要はないな」
「ん?」
「相手はしなくていいぞ」
おい。
今さっき気をつけろと口にしたじゃねえか?
「どういう意味だ?」
「言葉通り。こちらから手を出す必要はない」
「……」
「ただし、可能な限り観察は続けてくれ」
バケモノの観察が仕事ってことか。
「イリアル、おまえならできるだろ?」
「何とかな」
観察だけでいいなら、この眼で対応できる。
それに、そもそも。
「こいつはボスの命令だよな?」
「ああ」
だったら断れねえわ。
で、ボスの意向ってことは。
「やっぱり、アレか?」
「その通りだ」
「だよなぁ」
アレの話は前から聞いてたけどよぉ、そんなバケモンだったとは……。
「言うまでもないことだが、優先度はSだぞ」
「今の任務より上じゃねえか」
「当然だな」
「……」
ちっ!
ここにきて大変な仕事が増えちまった。
っとに、勘弁してくれ。
「戦ったら、おまえでもやられるような相手だからな。無駄に手を出すなよ」
「分かってらぁ」
剣姫に匹敵するバケモンに手を出すほど馬鹿じゃねえっての。
「それで、バケモノの名前は?」
「コーキ・アリマ。オルドウの冒険者だな」
***********************
「ヴァーンさん、このままでいいのか?」
「今はどうしようもねえだろ」
「でもさ、王軍が攻めて来るってのに、おれたちだけ何もすることないんだぜ」
「分かってる。分かってるが、子爵の言葉には逆らえねえ。特にこの館にいる俺たちはな」
対レザンジュ王軍の対策本部と化したトゥレイズの領主館は、朝早くから夜遅くまで人で溢れ返っている。
ひっきりなしに入ってくる諜報部隊からの情報とそれを基にした作戦会議。そんなものがずっと続いている屋敷内では怒声が絶えることはなく、喧騒もおさまる様子を見せない。
そんな子爵邸の中庭で俺たち3人だけが、これまで同様の鍛錬をしている。
「おれたちも戦えるのに、どうしてだよ?」
「おまえは子供で、俺とコーキは余所者ってことだろ」
「っ! ここまで来れたのはおれたちの力があったからなのに」
「お偉い子爵様が俺たちの力なんて要らねえと言ってんだ。仕方ねえ」
「……」
「だから、おまえも気をつけろよ」
「俺が? 何に?」
「そのバケモノにだ。今はトゥレイズにいるはずだからな」
「ミッドレミルトからトゥレイズまでバケモノがやって来たってか?」
「そういうことだ」
メルビンは冒険者としてもかなり腕が立つ。
そんな男がバケモノと連呼する相手が並なわけがない。
ちっ。
相当ヤバイのがトゥレイズにいるってことかよ。
「で、どこまで凄え?」
「単独でドラゴンを倒す腕を持っている。その上、剣姫と比べても遜色ない剣技もな」
「なっ! ホントか?」
「ああ、この目で見たから間違いない」
ドラゴンに剣姫……。
とんでもねえぞ。
「とにかく、気をつけろ」
「……」
バケモノがトゥレイズに。
ワディン軍にいる。
「はぁ~。ここまで散々苦労してんのに、またそんなバケモンの相手しなきゃいけねえって。嫌になるぜ」
「いや、その必要はないな」
「ん?」
「相手はしなくていいぞ」
おい。
今さっき気をつけろと口にしたじゃねえか?
「どういう意味だ?」
「言葉通り。こちらから手を出す必要はない」
「……」
「ただし、可能な限り観察は続けてくれ」
バケモノの観察が仕事ってことか。
「イリアル、おまえならできるだろ?」
「何とかな」
観察だけでいいなら、この眼で対応できる。
それに、そもそも。
「こいつはボスの命令だよな?」
「ああ」
だったら断れねえわ。
で、ボスの意向ってことは。
「やっぱり、アレか?」
「その通りだ」
「だよなぁ」
アレの話は前から聞いてたけどよぉ、そんなバケモンだったとは……。
「言うまでもないことだが、優先度はSだぞ」
「今の任務より上じゃねえか」
「当然だな」
「……」
ちっ!
ここにきて大変な仕事が増えちまった。
っとに、勘弁してくれ。
「戦ったら、おまえでもやられるような相手だからな。無駄に手を出すなよ」
「分かってらぁ」
剣姫に匹敵するバケモンに手を出すほど馬鹿じゃねえっての。
「それで、バケモノの名前は?」
「コーキ・アリマ。オルドウの冒険者だな」
***********************
「ヴァーンさん、このままでいいのか?」
「今はどうしようもねえだろ」
「でもさ、王軍が攻めて来るってのに、おれたちだけ何もすることないんだぜ」
「分かってる。分かってるが、子爵の言葉には逆らえねえ。特にこの館にいる俺たちはな」
対レザンジュ王軍の対策本部と化したトゥレイズの領主館は、朝早くから夜遅くまで人で溢れ返っている。
ひっきりなしに入ってくる諜報部隊からの情報とそれを基にした作戦会議。そんなものがずっと続いている屋敷内では怒声が絶えることはなく、喧騒もおさまる様子を見せない。
そんな子爵邸の中庭で俺たち3人だけが、これまで同様の鍛錬をしている。
「おれたちも戦えるのに、どうしてだよ?」
「おまえは子供で、俺とコーキは余所者ってことだろ」
「っ! ここまで来れたのはおれたちの力があったからなのに」
「お偉い子爵様が俺たちの力なんて要らねえと言ってんだ。仕方ねえ」
「……」
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