30年待たされた異世界転移

明之 想

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第7章 南部編

ヒーロー 2

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<セレスティーヌ視点(姿は和見幸奈)>



「異能の素晴らしさを忘れてしまった君に、あらためて味わってもらおうか。ああ、手加減はするから、心配はいらない」

「何をするつもり?」

 知っているけど、ここは予知通りに。

「すぐに分かるさ。やれ!」

 壬生兄の前に出たふたりの男が私に掌を向けてくる。
 対して、こちらは数歩後退。

「アイスアロー!」

「ストーンバレット!」

 向かってくるのは氷の矢と石の礫。
 完全に予知通り。
 数も方向も全て解っている。

 だから。

 右に避け。
 左に回り。

 軽く跳んで。
 身を屈める。

 かなちゃん、永理ちゃんに褒めてもらったこのワンピース。
 卑劣な異能で汚しはしない。

「アイスボール!」

「ストーンボール!」

 淡い光の中をワンピースが舞う。
 裾が回り、回って風を生み。
 風が異能を逸らすよう。

「アイスアロー!」

「ストーンバレット!」

 ひるがえるワンピースの中。
 私は踊るだけ。

 舞うように、飛ぶように、避け続ける。
 何度も何度も!



「くっ! これは、どういうことだ?」

「分かりません。ただ、これでは避けられてしまいます。威力を上げても良いでしょうか?」

「傷物になってしまうが……」

 異能攻撃の威力、速度を上げられたら、対処が難しくなる。
 幸奈さんの身体で完璧に避けるのは不可能かもしれない。
 でも、ここからは。

「やむを得ん、か」

「……」

 この小道での遭遇。
 帰り道を変えれば、回避も可能だった。
 予知で分かっていたのだから当然のこと。

 ただ。
 ここで避けても、またいつかは襲われる。
 それを予知できなかった場合、上手く対応できないかもしれない。

 だったら、予知できている今回こそが好機だと考え遭遇に踏み切った結果。

 予知は的中し、事は上手く進んでいる。
 多分、この後も……。

「下手に避けた君が悪いんだ。痛みは我慢してもらうぞ」

「我慢などしません」

「ふふ、速度を上げても回避できるかな」

「……」

 回避なんて、どうでもいい。
 だって、もう私だけじゃないのだから。


「おい、おい、こんなか弱い女性をいじめるなんて、みっともねえなぁ」

「そうね。異能者とは思えない情けなさだわ」

「まっ、そのか弱い女性に異能を避けられてたんだけどよ」

「ええ、優雅に舞い踊るような回避だったわね」

 薄暗い小道の中、私の後ろに現れたのは武上君と古野白さん。

「ってことで、言わせてもらうぜ」

「……早くしなさい」

「おう! 待たせたなぁ!」

「……」

「……」

「……」

 色々な意味で言葉を失っている襲撃者たち。
 私は、まあ……。
 このセリフを知っていたので……。


「もう、いいかしら」

「ああ、いいぜ!」

 頷く武上君から離れ、こちらに近づいて来る古野白さん。
 心配そうに私を見つめている。

「幸奈さん……大丈夫?」

「はい、平気です」

 今回私が大胆な行動に出れたのは、予知に加えこの2人がいたから。
 コーキさんから事情を聞いた彼らが私を護ってくれていたからだ。

 古野白さんと武上君がいなかったら、もう少し躊躇していたと思う。

「遅れてごめんなさい」

「いえ……」

 到着が少し遅れるのは、予知で分かっていたことだし。
 武上君があのセリフ言いたいからじゃないと思うし。
 多分……。

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