626 / 1,194
第7章 南部編
中州 3
しおりを挟む
<和見幸奈視点(姿はセレスティーヌ)>
こちらを見つめる男性の眼が不気味な色を帯びて……。
気持ち悪い。
「何をしている!」
ユーフィリアさんが両手を広げ、立ち塞がってくれた。
「……神娘? いや、神娘じゃない? 偽物? これは?」
何を言ってるの?
「だからな、神娘は既に死んでるんだって」
「……」
「もういいから、こっち来い。で、魔法使いさんも戻ってくれねえか」
「……了解」
細身の兵士が魔物に近づいていく。
ユーフィリアさんは……。
「お嬢様」
わたしにだけ聞こえるように耳元で。
「幸いなことに、やつらは勘違いしているようです。このまま話を合わせましょう」
「……はい」
「では、少しお待ちください」
「……気をつけて」
わずかに微笑んだユーフィリアさんが、また魔物の前に戻り。
今度こそ、戦闘が始まる。
でも……。
わたしが神娘じゃない?
死んでいるって?
何を言っているの?
勘違いしてくれるのは、ありがたいけれど。
意味が分からない。
「……」
偽物か。
確かに、今のわたしは偽物みたいなものかもしれない。
記憶は完全じゃないし。
神娘の力も使えないから。
酷い状態なのだから……。
「あっ!」
痛い!
また頭痛が。
こんな場面で。
「アイスアロー!!」
少し離れた場所で、3人が戦っているのに。
わたしは痛みで意識が朦朧と……。
「……」
意識が薄れていく。
そんなわたしの頭に浮かんできたのは……。
真白に霞がかかったような世界。
そこに?
白い部屋。
私が横になっている。
その傍らにいるのはコーキさん。
どうして?
涙を浮かべてる?
って、これは!
白昼夢?
違う、予知だ!
わたしが神娘の力を?
「……」
いえ、それも違うわ。
予知を使っているんじゃない。
この映像は以前行った予知の記憶。
それを、ここでまた見ているだけ。
ただ……。
何かおかしい。
何かが?
あっ!
霞がかかっていた世界が消え。
視界が戻ってくる。
痛みも消えていく。
「……」
今見た映像。
何がおかしかったの?
分からない。
「おい、こんなに動けるのかよ!」
「話が違うぞ。どういうことだ?」
「分からねえ。マッドアリゲーターは陸では動きが遅くなるはずなんだが……」
「雨のせいか?」
「雨だけで水中と同じように動けるなんてあり得ねえ、こともねえのか?」
「イリアル、原因なんてどうでもいい」
「……だな」
そうだ。
今は3人が魔物と戦っている最中。
過去に見た予知のことで悩んでいる場合じゃない。
それで、状況は?
わたしが朦朧としている間に、どうなったの?
魔物は……死骸がたくさん。
でも、数はあまり減っていない。
新たに上陸してきたってこと?
「あっ!」
「ウラハム!」
ひとりが攻撃を受けてしまった!
大きな顎の中に身体が!
「っ! この野郎!」
「グギャアア!!」
もうひとりが、その魔物を倒したけれど。
ウラハムさんという兵士は……大怪我だ!
「ウラハム……動けるか?」
「ぐっ! ……何とか」
「おめえ、後ろで休んどけ。薬は持ってんだろ?」
「……ない。河で流された」
「ちっ、俺もだ」
「……」
「おい、次が来るぞ! アイスアロー!!」
「グギャ!」
「とりあえず、退いとけよ。治療は……後で考える」
「……悪い」
ウラハムさんが足を引きずりながら、こっちに戻ってきた。
えっ!?
凄い出血。
こんなの、放置したら!
こちらを見つめる男性の眼が不気味な色を帯びて……。
気持ち悪い。
「何をしている!」
ユーフィリアさんが両手を広げ、立ち塞がってくれた。
「……神娘? いや、神娘じゃない? 偽物? これは?」
何を言ってるの?
「だからな、神娘は既に死んでるんだって」
「……」
「もういいから、こっち来い。で、魔法使いさんも戻ってくれねえか」
「……了解」
細身の兵士が魔物に近づいていく。
ユーフィリアさんは……。
「お嬢様」
わたしにだけ聞こえるように耳元で。
「幸いなことに、やつらは勘違いしているようです。このまま話を合わせましょう」
「……はい」
「では、少しお待ちください」
「……気をつけて」
わずかに微笑んだユーフィリアさんが、また魔物の前に戻り。
今度こそ、戦闘が始まる。
でも……。
わたしが神娘じゃない?
死んでいるって?
何を言っているの?
勘違いしてくれるのは、ありがたいけれど。
意味が分からない。
「……」
偽物か。
確かに、今のわたしは偽物みたいなものかもしれない。
記憶は完全じゃないし。
神娘の力も使えないから。
酷い状態なのだから……。
「あっ!」
痛い!
また頭痛が。
こんな場面で。
「アイスアロー!!」
少し離れた場所で、3人が戦っているのに。
わたしは痛みで意識が朦朧と……。
「……」
意識が薄れていく。
そんなわたしの頭に浮かんできたのは……。
真白に霞がかかったような世界。
そこに?
白い部屋。
私が横になっている。
その傍らにいるのはコーキさん。
どうして?
涙を浮かべてる?
って、これは!
白昼夢?
違う、予知だ!
わたしが神娘の力を?
「……」
いえ、それも違うわ。
予知を使っているんじゃない。
この映像は以前行った予知の記憶。
それを、ここでまた見ているだけ。
ただ……。
何かおかしい。
何かが?
あっ!
霞がかかっていた世界が消え。
視界が戻ってくる。
痛みも消えていく。
「……」
今見た映像。
何がおかしかったの?
分からない。
「おい、こんなに動けるのかよ!」
「話が違うぞ。どういうことだ?」
「分からねえ。マッドアリゲーターは陸では動きが遅くなるはずなんだが……」
「雨のせいか?」
「雨だけで水中と同じように動けるなんてあり得ねえ、こともねえのか?」
「イリアル、原因なんてどうでもいい」
「……だな」
そうだ。
今は3人が魔物と戦っている最中。
過去に見た予知のことで悩んでいる場合じゃない。
それで、状況は?
わたしが朦朧としている間に、どうなったの?
魔物は……死骸がたくさん。
でも、数はあまり減っていない。
新たに上陸してきたってこと?
「あっ!」
「ウラハム!」
ひとりが攻撃を受けてしまった!
大きな顎の中に身体が!
「っ! この野郎!」
「グギャアア!!」
もうひとりが、その魔物を倒したけれど。
ウラハムさんという兵士は……大怪我だ!
「ウラハム……動けるか?」
「ぐっ! ……何とか」
「おめえ、後ろで休んどけ。薬は持ってんだろ?」
「……ない。河で流された」
「ちっ、俺もだ」
「……」
「おい、次が来るぞ! アイスアロー!!」
「グギャ!」
「とりあえず、退いとけよ。治療は……後で考える」
「……悪い」
ウラハムさんが足を引きずりながら、こっちに戻ってきた。
えっ!?
凄い出血。
こんなの、放置したら!
11
お気に入りに追加
540
あなたにおすすめの小説
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
パーティ追放が進化の条件?! チートジョブ『道化師』からの成り上がり。
荒井竜馬
ファンタジー
『第16回ファンタジー小説大賞』奨励賞受賞作品
あらすじ
勢いが凄いと話題のS級パーティ『黒龍の牙』。そのパーティに所属していた『道化師見習い』のアイクは突然パーティを追放されてしまう。
しかし、『道化師見習い』の進化条件がパーティから独立をすることだったアイクは、『道化師見習い』から『道化師』に進化する。
道化師としてのジョブを手に入れたアイクは、高いステータスと新たなスキルも手に入れた。
そして、見習いから独立したアイクの元には助手という女の子が現れたり、使い魔と契約をしたりして多くのクエストをこなしていくことに。
追放されて良かった。思わずそう思ってしまうような世界がアイクを待っていた。
成り上がりとざまぁ、後は異世界で少しゆっくりと。そんなファンタジー小説。
ヒロインは6話から登場します。
俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜
早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。
食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した!
しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……?
「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」
そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。
無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!
クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される
こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる
初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。
なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています
こちらの作品も宜しければお願いします
[イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]
女神から貰えるはずのチート能力をクラスメートに奪われ、原生林みたいなところに飛ばされたけどゲームキャラの能力が使えるので問題ありません
青山 有
ファンタジー
強引に言い寄る男から片思いの幼馴染を守ろうとした瞬間、教室に魔法陣が突如現れクラスごと異世界へ。
だが主人公と幼馴染、友人の三人は、女神から貰えるはずの希少スキルを他の生徒に奪われてしまう。さらに、一緒に召喚されたはずの生徒とは別の場所に弾かれてしまった。
女神から貰えるはずのチート能力は奪われ、弾かれた先は未開の原生林。
途方に暮れる主人公たち。
だが、たった一つの救いがあった。
三人は開発中のファンタジーRPGのキャラクターの能力を引き継いでいたのだ。
右も左も分からない異世界で途方に暮れる主人公たちが出会ったのは悩める大司教。
圧倒的な能力を持ちながら寄る辺なき主人公と、教会内部の勢力争いに勝利するためにも優秀な部下を必要としている大司教。
双方の利害が一致した。
※他サイトで投稿した作品を加筆修正して投稿しております
ちょっと神様!私もうステータス調整されてるんですが!!
べちてん
ファンタジー
アニメ、マンガ、ラノベに小説好きの典型的な陰キャ高校生の西園千成はある日河川敷に花見に来ていた。人混みに酔い、体調が悪くなったので少し離れた路地で休憩していたらいつの間にか神域に迷い込んでしまっていた!!もう元居た世界には戻れないとのことなので魔法の世界へ転移することに。申し訳ないとか何とかでステータスを古龍の半分にしてもらったのだが、別の神様がそれを知らずに私のステータスをそこからさらに2倍にしてしまった!ちょっと神様!もうステータス調整されてるんですが!!
うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。
のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる