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第7章 南部編
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<ヴァーンベック視点>
シアは役目を全うした。責任を果たした。
それは間違いない。
「ヴァーン……」
「ただし、逃げなかったのは良くねえなぁ」
「うん……」
「まっ、セレスさんが留まると言い張ったんなら、仕方ねえか」
「……」
「それとよ、ありがとな」
「えっ?」
おまえの気持ち、嬉しかったぜ。
「ヴァーン、何が?」
「……何でもねえよ」
「何でもって、そんな、何なの?」
「まあ、いいじゃねえか」
「……」
「っと、そんなことよりだ。ちっと行ってくるわ」
「行く?」
「ちょっと、コーキの様子を見にな」
「……」
「心配は要らねえぜ」
「危ないわ!」
「問題ねえって。あの怪物の気配を感じたら引き返すつもりだからよ」
気配を感じ取れればな。
「止めても行くの?」
「……ああ」
「……」
「コーキを見捨てることなんて、できねえだろ」
あいつには二度も命を救ってもらったんだぞ。
それなのに、昨日の俺は……。
今からじゃあ、遅いかもしれねえ。
けど、それでも。
「わたしも行くわ」
「駄目だ」
「嫌よ。コーキ先生はわたしにとっても恩人なのよ。それに……あなたをひとりで……」
「……」
「もう、あんな心配したくないから」
「シア、おまえの気持ちはよく分かるし、ありがてえ」
ほんと、俺にはもったいないくらいだよ。
「だったら、ヴァーン」
「シアは、セレスさんの傍にいるべきだ」
「……」
「数刻も離れちゃいけねえ」
「今、そんなこと言うなんて」
ずるいよな。
分かってる。
それでも、ここは俺に任せてくれねえか。
「必ず無事に戻るから。なっ、シア」
「約束?」
「ああ、約束だ。コーキを連れて戻ってくるぜ」
「……あなたの今の心は1つ、2つ?」
「1つと言いたいところだが、それじゃあ嘘になっちまう」
「2つなのね」
「そうだな。ただし、シアを思う心が圧勝してるぜ」
「ほんと?」
「間違いねえな」
「……分かった。でも、圧勝はしなくていいから」
シアらしい笑顔とはにかむ仕草。
「嬉しいけど……」
これだから、まいっちまう。
「それで、わたしたちはどうすればいいの?」
「ん、ああ、皆が起きたら伝えてもらえるか?」
「出掛けたことを?」
「それと、もうひとつ。5刻、いや5刻半までここで待っていてほしい。で、その時間になっても俺が戻らねえようなら先に行ってくれ、と」
「ヴァーン!」
「だから、心配要らねえって。万が一の話だからよ」
「……」
「じゃあ、行ってくるぜ!」
「いねえ……か」
急いで駆けつけた昨日の惨状の現場。
そこには、生あるものなど何も存在していなかった。
それどころか、あたりは惨たらしい亡骸ばかり。
蹂躙された痕跡しか残っていない。
気分がわりいな。
こんな場所、さっさと立ち去りてえぜ。
けどよ……。
コーキは、どこに行っちまったんだ?
気配のひとつも感じねえって、何だそれ?
「……」
ついさっき。
この現場に着く直前になっても、戦闘の気配は感じなかった。
コーキも剣姫も、あの怪物の気配も感知できなかった。
だから、分かっちゃいたが。
コーキ?
どこにいる?
何してる?
コーキを探すにしても、こっちは手掛かりなんてねえんだ。
ここに来りゃあ、糸口が見つかると思ってたのに……。
欠片ひとつ。
気配も何も。
見当たらねえ。感じやしねえ。
この状態で、どうすれば?
「……」
まさか、気配を消してる?
その可能性もあるのか?
あの怪物が俺たちの前に姿を現した時。
気配を感じることなんて、まったくできなかった。
あいつは気配を消せる竜の怪物。
コーキも剣姫も同じことができるはず。
なら……。
シアは役目を全うした。責任を果たした。
それは間違いない。
「ヴァーン……」
「ただし、逃げなかったのは良くねえなぁ」
「うん……」
「まっ、セレスさんが留まると言い張ったんなら、仕方ねえか」
「……」
「それとよ、ありがとな」
「えっ?」
おまえの気持ち、嬉しかったぜ。
「ヴァーン、何が?」
「……何でもねえよ」
「何でもって、そんな、何なの?」
「まあ、いいじゃねえか」
「……」
「っと、そんなことよりだ。ちっと行ってくるわ」
「行く?」
「ちょっと、コーキの様子を見にな」
「……」
「心配は要らねえぜ」
「危ないわ!」
「問題ねえって。あの怪物の気配を感じたら引き返すつもりだからよ」
気配を感じ取れればな。
「止めても行くの?」
「……ああ」
「……」
「コーキを見捨てることなんて、できねえだろ」
あいつには二度も命を救ってもらったんだぞ。
それなのに、昨日の俺は……。
今からじゃあ、遅いかもしれねえ。
けど、それでも。
「わたしも行くわ」
「駄目だ」
「嫌よ。コーキ先生はわたしにとっても恩人なのよ。それに……あなたをひとりで……」
「……」
「もう、あんな心配したくないから」
「シア、おまえの気持ちはよく分かるし、ありがてえ」
ほんと、俺にはもったいないくらいだよ。
「だったら、ヴァーン」
「シアは、セレスさんの傍にいるべきだ」
「……」
「数刻も離れちゃいけねえ」
「今、そんなこと言うなんて」
ずるいよな。
分かってる。
それでも、ここは俺に任せてくれねえか。
「必ず無事に戻るから。なっ、シア」
「約束?」
「ああ、約束だ。コーキを連れて戻ってくるぜ」
「……あなたの今の心は1つ、2つ?」
「1つと言いたいところだが、それじゃあ嘘になっちまう」
「2つなのね」
「そうだな。ただし、シアを思う心が圧勝してるぜ」
「ほんと?」
「間違いねえな」
「……分かった。でも、圧勝はしなくていいから」
シアらしい笑顔とはにかむ仕草。
「嬉しいけど……」
これだから、まいっちまう。
「それで、わたしたちはどうすればいいの?」
「ん、ああ、皆が起きたら伝えてもらえるか?」
「出掛けたことを?」
「それと、もうひとつ。5刻、いや5刻半までここで待っていてほしい。で、その時間になっても俺が戻らねえようなら先に行ってくれ、と」
「ヴァーン!」
「だから、心配要らねえって。万が一の話だからよ」
「……」
「じゃあ、行ってくるぜ!」
「いねえ……か」
急いで駆けつけた昨日の惨状の現場。
そこには、生あるものなど何も存在していなかった。
それどころか、あたりは惨たらしい亡骸ばかり。
蹂躙された痕跡しか残っていない。
気分がわりいな。
こんな場所、さっさと立ち去りてえぜ。
けどよ……。
コーキは、どこに行っちまったんだ?
気配のひとつも感じねえって、何だそれ?
「……」
ついさっき。
この現場に着く直前になっても、戦闘の気配は感じなかった。
コーキも剣姫も、あの怪物の気配も感知できなかった。
だから、分かっちゃいたが。
コーキ?
どこにいる?
何してる?
コーキを探すにしても、こっちは手掛かりなんてねえんだ。
ここに来りゃあ、糸口が見つかると思ってたのに……。
欠片ひとつ。
気配も何も。
見当たらねえ。感じやしねえ。
この状態で、どうすれば?
「……」
まさか、気配を消してる?
その可能性もあるのか?
あの怪物が俺たちの前に姿を現した時。
気配を感じることなんて、まったくできなかった。
あいつは気配を消せる竜の怪物。
コーキも剣姫も同じことができるはず。
なら……。
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