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第7章 南部編

異なる世界 18

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<セレスティーヌ視点(姿は和見幸奈)>




「壬生さん、異能を!」

「だそうですよ」

「嫌です、私はもう受けません!」

「そう言われても、ねえ?」

 今の父には抗える。
 けど、壬生さんには。

「……いやです」

「ふふ」

 聞いてない。
 彼女は冷たく笑うだけ。

「心配はいりません」

「……」

 彼女を前にすると、気力が抜けそうになる。

「大丈夫」

 幸奈さん?
 幸奈さんがまた……。

「5年前にあれだけ受けたんですからね」

「もう……いやなんです!」

 自由を失いかけている身体に力を入れ、何とか言葉を。

「すぐに慣れますよ。いえ、感覚が戻ります」

 必死に口に出した私の言葉。
 壬生さんはまったく気にしてない。

「それに、あなたも以前より強くなってますし。ねえ、幸奈さん」

「……」

「だから、大丈夫」

「……やめて」

「さっ、一緒に楽しみましょ。……憂波!」

 ああ!
 始まってしまった。

「っ!?」

 記憶の中にあったあの音が聞こえてくる。
 とても小さいけれど、頭の中を直接触られているような不快な音。

 それが、すぐに痛みに変わって。

「うぅ……」

 痛い!
 頭の中がかき回される。

 耐えがたい激痛……。

 立っていられない。




*********************




「雷撃!」
「雷撃!」

「グゥオオォォォ!」

「雷撃!」
「雷撃!」
「雷撃!」

 五連続の雷撃だ。

「オオォォ……」

 あいつの動きを僅かに止める程度の効果しかなかった雷撃でも、ここまで続ければそれなりの効果はある。

「グルゥゥ……」

 しばらくの間はまともに動けないはず。
 もちろん、雷撃でこの怪物を倒すことはできないが。

「イリサヴィア様!」

「了解だ!」

 動きが止まっている間、一箇所に攻撃を集中させる。
 現時点では、これが最善の攻手。

えい!」

 ザン!

 剣姫の一撃があいつの首元に炸裂。
 ただし、これだけじゃ効果はない。

 剣姫の剣撃の痕に俺も。

 ザン!

 そして、また剣姫。

 ザン!

 ザン!
 ザン!
 ザン!


 剣姫と俺の渾身の剣を5撃ずつ計10撃。
 一箇所に集めてやったところで。

「グゥオァァァ!!」

 あいつが動き出した。
 怒りを発散させるように、腕と尻尾を振りまわしている。

 そう。
 雷撃からの10剣撃を繰り出すことで、ようやく鱗1枚に損傷を与えることができるようになったんだ。

 とはいえ、鱗の破壊にはまだ遠い。
 何度もこの攻撃を繰り返さなければいけないだろう。


「魔力は大丈夫か?」

 そのために重要なのは魔力。
 雷撃を何度も撃つ必要があるからだ。
 ただ、今のところは。

「まだ平気です」

「そうか。では、頼む」

「はい」

 次の連撃だ。

「雷撃!」

 1発目を放ったところで……。

「グゥロオォ!!」

 一声上げた怪物の周囲の空間が歪み。

「オオォォ……」

 消えてしまった。
 この異界に俺たちを残し、また目の前から姿を消してしまった。

「……」

「……」

 ほんの僅かな攻略の糸口を見つけたと思ったら、逃げられてしまう。

「きりがないな」

「……ええ」

 本当に終わりが見えない。



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