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第6章 移ろう魂編
激闘 9
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これこそ好機。
やれるぞ!
雷撃!
至近距離から無詠唱の雷撃。
バリ、バリ!
まともに腹に入った!
「くぅ! 無詠唱?」
それでも、剣姫は倒れない。
身体に纏った魔力で雷撃を防御しているんだ。
とんでもないタフさ。
ほんと、怖気がする。
さらに、俺の左腕に食い込んだドゥエリンガーを引き抜こうと!
何という剛力!
くそっ。
もうもたない。
抜かれてしまう。
ならば。
折れた剣を投げ捨て、右の手を開く。
と同時に、剣姫が剣を引き抜いた!
雷撃の衝撃で素早く動けないはずなのに、この動き。
魔力を発しながら剣を振るってくる!
けど、俺の方が早い。
こっちは右の手のひらだ!
とらえた!!
「だぁ!」
掌底!
渾身の気を込めた掌底!!
剣姫の一撃は?
魔剣ドゥエリンガーは?
俺には届かない!!
「……」
「……」
永遠にも感じる沈黙。
閑寂ともいえる静寂。
「うっ!?」
剣姫の身体から力が抜けた!
「……」
緩慢に揺れる半身。
「なに、を?」
上手く動かぬ体でも、言葉を紡いでくるか。
「……掌底ですよ」
気を込めた掌底。
この世界では知られていない闘技。
身体に魔力を纏っていても、気は止められなかったようだ。
「……見事。ぐっ」
剣姫の膝が落ち。
半身が落ち。
そして……。
エビルズピークの地に沈んだ。
「っ……」
ただ、意識は失っていない。
雷撃と気をその身に受けてなお意識を保っている。
「……」
驚きどころじゃないな。
けど。
これで終わり。
終わりだ!
勝負は決した。
*****************
<和見幸奈視点(姿はセレスティーヌ)>
頭が痛い。
コーキさんのことを考えると、思い出そうとすると頭が痛くなる。
どうして?
他の人のことを考えても頭痛はしないのに。
だから、思い出せない。
でも……。
わたしにとって彼が大切な人だということは何となく分かる。
コーキさん。
コウキさん……。
「痛い」
「セレス様、大丈夫ですか?」
「……ええ、大丈夫」
頭痛はするけれど、耐えられない痛みじゃない。
命を懸けて頑張っている皆さんに比べれば、こんな痛み。
「それなら良いのですが……」
本当に平気。
それより、今の状況は?
コーキさんは?
「魔物は全て倒したようです」
わたしの思いを察したシアさんが、すぐに答えをくれる。
「怪我人は多そうですけど、幸い死者は出ておりません」
「……良かった」
あんなに多くの魔物が現れた時には、もう駄目だと思ってしまったから。
「でも、まだ油断はできません。剣姫が残っていますので」
シアさんの言う通り。
彼女がいる限り、終わりじゃない。
「……」
「……」
やれるぞ!
雷撃!
至近距離から無詠唱の雷撃。
バリ、バリ!
まともに腹に入った!
「くぅ! 無詠唱?」
それでも、剣姫は倒れない。
身体に纏った魔力で雷撃を防御しているんだ。
とんでもないタフさ。
ほんと、怖気がする。
さらに、俺の左腕に食い込んだドゥエリンガーを引き抜こうと!
何という剛力!
くそっ。
もうもたない。
抜かれてしまう。
ならば。
折れた剣を投げ捨て、右の手を開く。
と同時に、剣姫が剣を引き抜いた!
雷撃の衝撃で素早く動けないはずなのに、この動き。
魔力を発しながら剣を振るってくる!
けど、俺の方が早い。
こっちは右の手のひらだ!
とらえた!!
「だぁ!」
掌底!
渾身の気を込めた掌底!!
剣姫の一撃は?
魔剣ドゥエリンガーは?
俺には届かない!!
「……」
「……」
永遠にも感じる沈黙。
閑寂ともいえる静寂。
「うっ!?」
剣姫の身体から力が抜けた!
「……」
緩慢に揺れる半身。
「なに、を?」
上手く動かぬ体でも、言葉を紡いでくるか。
「……掌底ですよ」
気を込めた掌底。
この世界では知られていない闘技。
身体に魔力を纏っていても、気は止められなかったようだ。
「……見事。ぐっ」
剣姫の膝が落ち。
半身が落ち。
そして……。
エビルズピークの地に沈んだ。
「っ……」
ただ、意識は失っていない。
雷撃と気をその身に受けてなお意識を保っている。
「……」
驚きどころじゃないな。
けど。
これで終わり。
終わりだ!
勝負は決した。
*****************
<和見幸奈視点(姿はセレスティーヌ)>
頭が痛い。
コーキさんのことを考えると、思い出そうとすると頭が痛くなる。
どうして?
他の人のことを考えても頭痛はしないのに。
だから、思い出せない。
でも……。
わたしにとって彼が大切な人だということは何となく分かる。
コーキさん。
コウキさん……。
「痛い」
「セレス様、大丈夫ですか?」
「……ええ、大丈夫」
頭痛はするけれど、耐えられない痛みじゃない。
命を懸けて頑張っている皆さんに比べれば、こんな痛み。
「それなら良いのですが……」
本当に平気。
それより、今の状況は?
コーキさんは?
「魔物は全て倒したようです」
わたしの思いを察したシアさんが、すぐに答えをくれる。
「怪我人は多そうですけど、幸い死者は出ておりません」
「……良かった」
あんなに多くの魔物が現れた時には、もう駄目だと思ってしまったから。
「でも、まだ油断はできません。剣姫が残っていますので」
シアさんの言う通り。
彼女がいる限り、終わりじゃない。
「……」
「……」
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