30年待たされた異世界転移

明之 想

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第6章 移ろう魂編

魔剣士 4

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<ヴァーンベック視点>



「うむ……私の邪魔立てをすると?」

「そういうことだ!」
「当然だ!」
「「「「「おう!」」」」」

 恐ろしい強敵相手に、みんな気力がみなぎっている。
 もちろん、俺もそう。

 気力だけで、どうにかなる相手とは思えねえが。
 結果なんてものは、やってみねえとなぁ。

「そうか……」

「……」

「ならば、排除するのみ」

 っ!?

 目の前にいたはずの女性剣士の姿がぶれる。
 消える!

「えっ!?」
「うっ!?」
「あっ!?」
「っ!?」
「あぁ!?」

 あっという間に5人の騎士が打たれ。
 さらに、次の瞬間。

「「「「「!?」」」」」

 また新たな5人が!!

「「「あっ!」」」
「「「っ……」」」

 ほんの僅かな時間に、10人の騎士が倒されてしまった。

 女剣士は剣を抜くことなく鞘をつけたまま。
 鞘で騎士たちの意識を刈り取ったと?

「「「「「うぅぅ」」」」」
「「「「「……」」」」」

 何だよ、それ!?
 信じられねえ。


「まだ、やるか?」

「「「「「「「……」」」」」」」

 今立っているのは、隊長、ディアナ、ユーフィリア、3人の騎士、そして俺の7人だけ。
 その実力、分かっちゃいたが……。

 到底、俺たちが勝てる相手じゃないぞ。

「……」

 だからといって、今さらだ。
 ここで降りるなんて、できねえ!
 退くわけにいかねえだろ!

 後ろの茂みには、まだシアやセレスさんがいるんだからよ。




*************************




 襲ってくるモノたちを倒し喰らうこと数日。
 それ・・の近くには、生あるモノが近づくことも少なくなってきた。

 それ・・も、ちょうどこの地に飽きてきた頃合い。
 食べては眠ることを繰り返す日々にもんできたところ。

 かなりの知識が身につき、情報も手に入ったのだ。
 そろそろ移動するべきだろう。

「オオォォ!」

 決断すると早かった。
 地を蹴り、宙を飛び、山を駆ける。

「オオ! オオォォォ!」

 未知なるものを経験する楽しさに、時間を忘れるほど。

 空腹が起こす衝動以外のものを知ったそれだったが、空腹が大きな欲求であることに変わりはない。
 ただ、その大きな欲求もエビルズピークにおいては容易に満たすことができる。
 この山に生息するモノは数知れず。
 食材は有り余っているのだから。


 歓喜に溢れ、エビルズピークを駆けまわる毎日。
 我欲を満たしながら過ごす、充実の日々。

 そんな中、ひとつだけ不思議なことがあった。
 エビルズピークの麓に下りることができないのだ。
 どういうわけか、下に向かおうとすると嫌悪感に襲われてしまう。

「オオォ??」

 この感覚が何なのか?
 全く理解できないが、その忌避感を無視することはできず。
 エビルズピークの中腹より上に留まったまま。

「……」

 とはいえ、それに不満はない。
 広大なエビルズピークでの生活に、まだまだ飽きていないからだ。

 尽きぬ好奇心に駆られ、欲求に従い。
 山を走り、空を駆け、目につくモノを喰らう。
 満ちたりて眠る。

「ォォォ……」

 動き、喰らい、眠る、それだけで充分に楽しい日々。




 そんなある日のこと。
 ねぐらにしているエビルズピークの山腹。
 少し奥まった林の中に、見知らぬ物体が現れた。

「……?」

 2足で歩いている。
 とっても薄い。
 何という生物なんだ?

「オオォォ?」

 初めて目にする姿。
 数は5体。


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