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第6章 移ろう魂編

エビルズピーク 9

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<ヴァーンベック視点>



「ヴァーン、その辺でいいわ」

「おう、了解だ」

 前衛、中衛と位置を変えながら魔法、剣を使っている俺と違い、シアはセレスさんの傍らで魔法に専念している。

 当然、戦闘を俯瞰できるというもの。
 この辺りが都合いいってことだな。

「みんな、しばらくはここで戦うぞ!」

「「「「「おうっ!!」」」」

「「「「了解!!」」」

 あとはレザンジュの到着を待つだけだぜ。
 なんて言うのは簡単なんだがよ。

「アイスアロー!」

「くっそっ! 硬えなぁ!」

「危ない!」

 魔法と剣撃が飛び交う戦闘も、そろそろ四半刻。
 誘導しながらの戦闘としては上手くやっているとはいえ。
 皆の顔には疲労が隠せねえ。
 ブラッドウルフ相手の戦闘は、ただでさえ神経を使うからな。

「左だ! 気をつけろ!」

「おう!」

「魔法を頼む」

「分かった」

 けど、もうすぐだ。
 みんな、頑張ってくれよ!



「ヴァーン、来たわ」

「ああ、聞こえてるぜ」

 武装した兵の足音がな。

「隊長、用意はいいか?」

「もちろん」

「よーし」

 坂の向こうから……。

「「「「「「「「!?」」」」」」」」

「「「「「「「「……!!」」」」」」」」

「「「「「「ワディンとブラッドウルフ……」」」」」」

 やっと登場だ!
 ってことで、準備は完了。

「撃てぇ!」

「「ファイヤーボール!」」
「「ファイヤーボール!」」

 まずは牽制。

「走れぇ!!」

 魔法で作り出した一瞬の隙。
 その僅かな時間に、レザンジュの兵に向かって駆ける!!



「魔物だ! 魔物が2頭いる!!」

「あれは……ブラッドウルフ?」

「ワディン? 冒険者? それに、ブラッドウルフ?」

「何だ! どうした?」

「ワディンとブラッドウルフが戦っている!」

 こっちを見渡せる坂の上にはレザンジュ王軍の姿。
 坂上の兵が坂の下に状況を伝えているようだ。

 つまり。
 この坂のすぐ向こうには本隊がいるってこと。

 斥候の数人だけが現れ本隊が遠方に位置していたなら難しかっただろうが、これなら問題ねえ。

「シア、アル、ディアナ、ユーフィリア、セレスさんから離れるなよ」

「「了解」」

「分かってる」

「……」

「それじゃ、このまま坂を越えるぞ!」

 レザンジュ兵のもとまでな。

「ヴァーン殿に続けぇ!!」

「「「「「「「「おう!!」」」」」」」

 気合いとともに、ブラッドウルフを引き連れた俺たちが一気に坂を駆け上がる。


「「「なっ!?」」」

「「「何だぁ!?」」」

 驚愕の表情で固まるレザンジュの先兵。
 まっ、仕方ねえよ。
 こっちの状況をはっきりと理解する前に、この展開だからな。

 悪いが、乱戦に参加してもらうぜ。

「まずいぞ!!」

「あ、ああ」

「退くか?」

「いや……」


 少し状況を理解したようで、接近する俺たちと後ろから追ってくるブラッドウルフに焦り始めている。

 けど、もう遅い。
 到着しちまったからな。

 坂の下には約40人のレザンジュ王軍。
 ちょうどいい数だな。


「俺たちはレザンジュの冒険者だ。ブラッドウルフに追われている。助けてくれ!」

「お前ら、ワディン兵じゃないのか? 冒険者なのか?」

「そうだ。頼むぞ!」

 どう思ってくれてもいい。
 少しでも迷ってくれたなら、それで十分。

「「「「頼む加勢してくれ!」」」」

「「「「助けてくれぇ!!」」」」

 俺たちとワディン騎士が叫び声を上げながら、坂を駆け下りる!


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