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第6章 移ろう魂編
エビルズピーク 7
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「オオォォ……」
水を飲み人心地ついたそれが次に目にしたものは、水中を泳ぐ魚たち。
本能から魚たちを捕食対象と感じ取ったそれ。
空腹という次の渇きを満たすため、迷わず水中に身を投げ魚に向かって突進。
が……。
「ガガッ!?」
経験したことのない水中。
魚を捕まえるどころか、身体の自由がきかず上手く進むこともできない。
「ガガガッ!」
必死の思いで水から抜け出したそれ。
「ウオオォォォォォ!!」
初めて知る己の不甲斐なさ。
耐えがたいほどの空腹。
空を仰ぎ咆哮をあげてしまう。
その叫びに反応したのか。
近くの木の中に潜んでいた鳥たちは一斉に空へ飛び立ち。
小動物たちは山中深く逃げ去る。
「オオォ……」
咆哮の余韻が漂う山中。
静寂に包まれるエビルズピーク最奥。
「オォ……」
それは空腹を満たす対象が見つからず途方に暮れる。
再び水の中に入るか?
辺りを探し歩くか?
迷っているそれの前に現れたのは……。
彼我の力量差を察知できない魔物たち。
喚声を嬌声のごとく感じ取り、それの前に姿を現した。
自ら探すことなく現れた捕食対象に愉悦が湧き上がってくる。
蹂躙が、始まった!!
*********************
<剣姫イリサヴィア視点>
「イリサヴィアさん、これでミルト山の調査は終了です」
「ここからはエビルズピークということか?」
「ええ、エビルズピークを調べれば今回の仕事は終わりですよ」
ようやくか。
「……」
本当に溜息をつきたくなる。
ミッドレミルトの山で過ごすというのが、これほど大変なことだったとは。
認識が甘かった。
自惚れていたようだ。
情けない。
情けないが、この仕事。
早く終えて山を下りたいものだな。
とはいえ……。
「魔物の異常行動の原因は不明のままだが?」
それに加え、辺境伯を見つけることもできずにいる。
つまり、時間を無駄に過ごし疲労を溜めているだけで成果はないという現状。
「はは、それは仕方ないですよ。まあ、ミルト山に原因は無かったということでしょ」
「エビルズピークに原因があると?」
「そうですね。その可能性が高いです。あるいは……」
「あるいは?」
「我々が見逃している、という可能性もありますね」
「……」
それでいいのか?
と思ってしまうが、メルビンの表情に憂いは見えない。
相変わらず屈託のない表情で穏やかなもの。
「最悪、ギルドで叱られればいいんですよ。こんな山で無理は禁物ですから」
ここ数日行動を共にしていなければ、単に責任感に欠けているだけだと思ったのだろうな。
見た目と違って、ふてぶてしくも頼もしい男だよ。
「異常調査もそうですが、辺境伯の足取りも全く掴めませんねぇ」
「困ったことにな」
「困る?」
「……」
「イリサヴィアさんが、困る必要なんて全くないですけどね」
「……そうだな」
「足取りが掴めないということは既にワディン領に逃げのびているか、そもそもミルトやエビルズピークを通っていないか。いずれにしてもイリサヴィアさんに責任はありません」
「……うむ」
「情報の質が問題なんです」
その通り。
私と同じ思考をメルビンもしている。
やりやすいわけだな。
「では、エビルズピークの調査もさっさと片付けてしまいましょうか」
「ああ」
普段はひとりで行動することが多い冒険者活動。
こういう者と一緒なら、複数での行動も悪くない。
そう思える冒険者連中だ。
とはいえ、それでも。
ひとりの方が気楽なことに変わりはないがな。
水を飲み人心地ついたそれが次に目にしたものは、水中を泳ぐ魚たち。
本能から魚たちを捕食対象と感じ取ったそれ。
空腹という次の渇きを満たすため、迷わず水中に身を投げ魚に向かって突進。
が……。
「ガガッ!?」
経験したことのない水中。
魚を捕まえるどころか、身体の自由がきかず上手く進むこともできない。
「ガガガッ!」
必死の思いで水から抜け出したそれ。
「ウオオォォォォォ!!」
初めて知る己の不甲斐なさ。
耐えがたいほどの空腹。
空を仰ぎ咆哮をあげてしまう。
その叫びに反応したのか。
近くの木の中に潜んでいた鳥たちは一斉に空へ飛び立ち。
小動物たちは山中深く逃げ去る。
「オオォ……」
咆哮の余韻が漂う山中。
静寂に包まれるエビルズピーク最奥。
「オォ……」
それは空腹を満たす対象が見つからず途方に暮れる。
再び水の中に入るか?
辺りを探し歩くか?
迷っているそれの前に現れたのは……。
彼我の力量差を察知できない魔物たち。
喚声を嬌声のごとく感じ取り、それの前に姿を現した。
自ら探すことなく現れた捕食対象に愉悦が湧き上がってくる。
蹂躙が、始まった!!
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「イリサヴィアさん、これでミルト山の調査は終了です」
「ここからはエビルズピークということか?」
「ええ、エビルズピークを調べれば今回の仕事は終わりですよ」
ようやくか。
「……」
本当に溜息をつきたくなる。
ミッドレミルトの山で過ごすというのが、これほど大変なことだったとは。
認識が甘かった。
自惚れていたようだ。
情けない。
情けないが、この仕事。
早く終えて山を下りたいものだな。
とはいえ……。
「魔物の異常行動の原因は不明のままだが?」
それに加え、辺境伯を見つけることもできずにいる。
つまり、時間を無駄に過ごし疲労を溜めているだけで成果はないという現状。
「はは、それは仕方ないですよ。まあ、ミルト山に原因は無かったということでしょ」
「エビルズピークに原因があると?」
「そうですね。その可能性が高いです。あるいは……」
「あるいは?」
「我々が見逃している、という可能性もありますね」
「……」
それでいいのか?
と思ってしまうが、メルビンの表情に憂いは見えない。
相変わらず屈託のない表情で穏やかなもの。
「最悪、ギルドで叱られればいいんですよ。こんな山で無理は禁物ですから」
ここ数日行動を共にしていなければ、単に責任感に欠けているだけだと思ったのだろうな。
見た目と違って、ふてぶてしくも頼もしい男だよ。
「異常調査もそうですが、辺境伯の足取りも全く掴めませんねぇ」
「困ったことにな」
「困る?」
「……」
「イリサヴィアさんが、困る必要なんて全くないですけどね」
「……そうだな」
「足取りが掴めないということは既にワディン領に逃げのびているか、そもそもミルトやエビルズピークを通っていないか。いずれにしてもイリサヴィアさんに責任はありません」
「……うむ」
「情報の質が問題なんです」
その通り。
私と同じ思考をメルビンもしている。
やりやすいわけだな。
「では、エビルズピークの調査もさっさと片付けてしまいましょうか」
「ああ」
普段はひとりで行動することが多い冒険者活動。
こういう者と一緒なら、複数での行動も悪くない。
そう思える冒険者連中だ。
とはいえ、それでも。
ひとりの方が気楽なことに変わりはないがな。
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