30年待たされた異世界転移

明之 想

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第6章 移ろう魂編

移ろい、移ろわぬもの 1

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<セレスティーヌ視点>



「そんなことが……」

「……」

「本当のことなのですね、コーキさん?」

「はい。信じられないと思いますが、お話したことは全て事実です」

「……信じます。コーキさんのことは信じていますから」

 コーキさんが私に嘘を吐くはずがない。
 特に、こんな重要なことで。
 それに。

「今のこの姿を見れば……」

 鏡に映る私は、セレスティーヌの姿ではない。
 明らかに違う。
 初めて見る体。
 けれど、その中にいるのは私。

 他人の体の中に私が入っている。
 その事実が、現実を教えてくれる。
 コーキさんの話が真実だと。

「こんな荒唐無稽な話を信じていただき、ありがとうございます」

「いえ……」

「その体に、この世界の環境と、慣れないことばかりだと思いますが」

「……」

「しばらくはこちらの世界で、幸奈の姿で過ごしてもらうことになります」

「はい。分かっております」

 鏡に映る自分の姿。
 コーキさんから聞いた説明。
 本当に驚いてしまった。

 今の私の状況も。
 この世界のことも。
 コーキさんが異世界の方で、2つの世界を往来できるということも……。

 全てに驚き混乱したけれど。

「……」

 私が目覚めたこの場所は、予知で見た未知のあの世界。
 この部屋の中にあるものも窓の外に見えるものも、全てが異世界のもの。

 オルドウの広場で、コーキさんに話した予知の中の世界。
 そこは異世界ではと、コーキさんは言ってくれた。

 あの時は冗談だと思ったけれど……。

 本当のことだったのね。
 本当に異世界の予知だったんだ。

「……」

 周りは未知のものばかり。
 未知なのに私は知っている。

 だから……。

 私の魂がこの体に入っていること。
 私が異世界にいること。

 もちろん驚きはあるけれど、納得するものもあった。

 それに……。

 コーキさんが、私をセレスだと気づけなかった理由も理解できたから。

「……」

 コーキさん……。
 私をゆきなと呼んで、私と認識できなかった時。
 見知らぬ場所でひとりにされたようで、とても不安だった。

 コーキさんが私のことを忘れてしまったんだと思うと、心が張り裂けそうで。
 今の状況も忘れて、ただ悲しくて。
 心が痛くて……。

 でも、忘れたわけではなかったんだ。

 それを知れただけで、体が満たされていく。
 安心で心が……。

 本当によかった!


「セレス様、身体は辛くないですか?」

「……平気だと思います」

 ゆきなさんという方の体なのに、思った以上に馴染んでいるような?
 不思議。

「そうですか。では、現在の状況は理解してもらえたようですので、今後についてお話しても?」

「はい、お願いします」

「セレス様の魂が今の体を出て本来の体に戻ることは……おそらく可能だと思います。ただ、それがいつ実現するかは分かりません」

「ゆきなさんの異能次第ということですね」

「そうなります。ですので、しばらくは幸奈としてこの世界で暮らしてもらう必要があります」

「はい」

 あちらの世界のこと。
 心配だけれど、幸いお父様の救出は無事終了している。
 あとは、オルドウに下るだけ……。

 それに、皆がついている。
 シア、アル、ディアナ、ユーフィリア、ヴァーンさん。
 ワディン騎士のみんなが。
 だから、大丈夫。
 きっと、無事にワディンに戻れるはず。

「……」

 そもそも、この世界にいる私にできることなんて何もない。
 どうしようもない。
 それなら、今は自分のことを。
 自分のことを考えるしか!

「この世界に不慣れなセレス様には、様々なことを知ってもらわなければいけません」

「……はい」

「私がずっとそばにいることができれば良いのですが、あちらの世界の様子を見に行く必要もありますので」

「……」

 この世界でコーキさんと離れたくない。
 でも、やっぱり。
 あちらの世界のことも気になってしまう。

 向こうにいるゆきなさん、お父様、みんな。
 大丈夫だと思っても、心配が消えることなんてない。

 けど、コーキさんが様子を見に行ってくれるなら……。

「当分の間、私は2世界を往来することになると思います」

「……」

「ですので、まずはこの世界について最低限の知識を身につけてもらえればと」

「……そうですね」

「それと、他の者がいる前ではセレス様のことを幸奈と呼びますので、忘れず返答してくださいね」

「……分かりました」

 コーキさんにはセレスと呼んでもらいたい。
 この世界でひとりにもなりたくない。
 他にも色々と……。

 でも、この状況だから。

 そう。
 今は頑張らないと!

「っ!?」

 と思ったのに、急に頭痛が。






***********************

※ セレスの予知については、第3章『異世界人』『予知』や第4章『予知』『手掛かりは』などで少し触れております。

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