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第6章 移ろう魂編
急転 5
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<セレスティーヌ視点>
しばらく沈黙が続いた後。
「あっ、申し訳ありません。大変なのはセレス様なのに、わたしが取り乱してしまって」
「いえ……」
それはいいのだけど。
今はそれより、わたしのことを聞かないと。
「セレス様?」
「ごめんなさい、シアさん。本当に何も思い出せないんです」
「……」
「あの、わたしに色々教えてくださいませんか?」
悲しそうな、それでいて難しい顔になるシアさん。
「記憶喪失……。でしょうか?」
「多分……」
そうだと思う。
というか、記憶喪失以外考えられない。
「……分かりました」
その後。
シアさんとわたし、共に詳しい事情は分からないながらも、お互いの認識をすり合わせるようにして話を進め……。
「……そうだったのですね」
最低限のことは把握できたと思う。
「はい。セレス様はワディンの神娘でございます」
「神娘……」
わたしはセレスという名の辺境伯爵令嬢。
その上、ただの令嬢ではないらしい。
「……」
身上は分かった。
理解した。
ただ……。
頭で理解はしても、心がついてこない。
だって!
わたしが神の娘と呼ばれているなんて!
そんなこと、すぐには信じられないから。
と、そこで。
「シア殿、話し声が聞こえたのだが……」
扉の外から声が聞こえ。
直後、扉が開いた。
「シア、誰と話してたんだ……っ!? セレスさん?」
「セレスティーヌ様!?」
「セレス様!!」
「……!!」
顔を出したのは20歳くらいの男性。
さらに、その後ろから3人の人たちが部屋に入って来る。
その4人の姿を見た瞬間。
「アル……ディアナ……ユーフィリア。ヴァーンさん……」
見覚えがないはずなのに、名前が頭に浮かんでくる。
そして。
「痛っ!」
さっき感じた以上の頭痛と目眩が……。
「えっ、セレス様? 大丈夫ですか? セレス様!」
頭が痛い!
重い!
「あっ!」
目の前が暗くなり……。
「セレス様、セレス様!?」
「セレスさん!」
「セレス様」
シアさんと皆さんの声が響く中。
また……。
意識を手放してしまった。
「うぅぅ……」
ここは、寝台の上?
わたしは?
「セレスティーヌ様!」
「……」
「セレス様!」
「……」
「セレス様!」
そうだ、わたしは……。
「シアさん?」
「あぁ! セレス様! また意識が戻らなかったら、どうしようかと……」
わたしの周りには、シアさんたち。
心配そうにこちらを見つめている。
「……心配かけて、ごめんなさい。でも、大丈夫ですから」
頭痛は少し残っているけれど、これくらいなら平気。
「本当ですか? 本当に、大丈夫なのですか?」
「はい」
「……」
二度も意識を失ったのだから、シアさんが心配するのも当然かな。
「よかった、セレスさん。良かったですよ!」
「えっと、ヴァーンさん? ご心配をおかけしました」
「そんなことはいいんです。あなたが目を覚まされたことが一番なんですから」
「……」
「セレス様、ほんとに良かった」
「セレスティーヌ様……」
「よかった……」
こちらを覗き込む皆さんの様子を見ていると、わたしのことを心から気遣ってくれているのがよく分かる。
わたしのために、こんなに!
「シアさん、わたしはどれくらい眠っていましたか?」
「今回は……四半刻も眠っておりません」
四半刻というのは……30分。
意識を失っていたのはそれだけ。
でも、その間にわたしは……。
「セレス様、まだ横になっていてください」
寝台の上に座ろうとするわたしを見つめるシアさんの瞳は不安に揺れている。
「平気ですよ。今意識を失った理由も何となく分かってますから。ヴァーンさん、アルさん、ディアナさん、ユーフィリアさんも、わたしはもう大丈夫ですので」
「おれたちのこと分かるんですか?」
「はい」
「セレス様が記憶をなくしていると、姉さんから聞いたんですが?」
「そうなんですけど……」
断片的に記憶が戻ってきたみたい。
特に、今意識を失っている間に。
だから、あんなに頭が痛かったんだ。
「少し思い出せたみたいです」
「えっ! 思い出した?」
「はい、まだ少しですが」
それでも、ここにいる4人のことは認識できる。
「セレスティーヌ様、わたくしのこともお分かりになるのですよね?」
「もちろんです。ディアナさん」
「……」
「本当、これで一安心だぜ。けど、セレスさん、その話し方は?」
「そうですよ、記憶が戻ったんなら?」
「それが、今回は記憶が戻ったというより……。知識として頭の中に戻ってきたような感じなのです」
この部屋にいるのはシアさんアルさん姉弟、冒険者のヴァーンさん、護衛騎士のディアナさんにユーフィリアさん。
それは理解できるのだけれど、実感のようなものが持てない。
本で知識だけを身に付けたような、そんな感じがする。
しばらく沈黙が続いた後。
「あっ、申し訳ありません。大変なのはセレス様なのに、わたしが取り乱してしまって」
「いえ……」
それはいいのだけど。
今はそれより、わたしのことを聞かないと。
「セレス様?」
「ごめんなさい、シアさん。本当に何も思い出せないんです」
「……」
「あの、わたしに色々教えてくださいませんか?」
悲しそうな、それでいて難しい顔になるシアさん。
「記憶喪失……。でしょうか?」
「多分……」
そうだと思う。
というか、記憶喪失以外考えられない。
「……分かりました」
その後。
シアさんとわたし、共に詳しい事情は分からないながらも、お互いの認識をすり合わせるようにして話を進め……。
「……そうだったのですね」
最低限のことは把握できたと思う。
「はい。セレス様はワディンの神娘でございます」
「神娘……」
わたしはセレスという名の辺境伯爵令嬢。
その上、ただの令嬢ではないらしい。
「……」
身上は分かった。
理解した。
ただ……。
頭で理解はしても、心がついてこない。
だって!
わたしが神の娘と呼ばれているなんて!
そんなこと、すぐには信じられないから。
と、そこで。
「シア殿、話し声が聞こえたのだが……」
扉の外から声が聞こえ。
直後、扉が開いた。
「シア、誰と話してたんだ……っ!? セレスさん?」
「セレスティーヌ様!?」
「セレス様!!」
「……!!」
顔を出したのは20歳くらいの男性。
さらに、その後ろから3人の人たちが部屋に入って来る。
その4人の姿を見た瞬間。
「アル……ディアナ……ユーフィリア。ヴァーンさん……」
見覚えがないはずなのに、名前が頭に浮かんでくる。
そして。
「痛っ!」
さっき感じた以上の頭痛と目眩が……。
「えっ、セレス様? 大丈夫ですか? セレス様!」
頭が痛い!
重い!
「あっ!」
目の前が暗くなり……。
「セレス様、セレス様!?」
「セレスさん!」
「セレス様」
シアさんと皆さんの声が響く中。
また……。
意識を手放してしまった。
「うぅぅ……」
ここは、寝台の上?
わたしは?
「セレスティーヌ様!」
「……」
「セレス様!」
「……」
「セレス様!」
そうだ、わたしは……。
「シアさん?」
「あぁ! セレス様! また意識が戻らなかったら、どうしようかと……」
わたしの周りには、シアさんたち。
心配そうにこちらを見つめている。
「……心配かけて、ごめんなさい。でも、大丈夫ですから」
頭痛は少し残っているけれど、これくらいなら平気。
「本当ですか? 本当に、大丈夫なのですか?」
「はい」
「……」
二度も意識を失ったのだから、シアさんが心配するのも当然かな。
「よかった、セレスさん。良かったですよ!」
「えっと、ヴァーンさん? ご心配をおかけしました」
「そんなことはいいんです。あなたが目を覚まされたことが一番なんですから」
「……」
「セレス様、ほんとに良かった」
「セレスティーヌ様……」
「よかった……」
こちらを覗き込む皆さんの様子を見ていると、わたしのことを心から気遣ってくれているのがよく分かる。
わたしのために、こんなに!
「シアさん、わたしはどれくらい眠っていましたか?」
「今回は……四半刻も眠っておりません」
四半刻というのは……30分。
意識を失っていたのはそれだけ。
でも、その間にわたしは……。
「セレス様、まだ横になっていてください」
寝台の上に座ろうとするわたしを見つめるシアさんの瞳は不安に揺れている。
「平気ですよ。今意識を失った理由も何となく分かってますから。ヴァーンさん、アルさん、ディアナさん、ユーフィリアさんも、わたしはもう大丈夫ですので」
「おれたちのこと分かるんですか?」
「はい」
「セレス様が記憶をなくしていると、姉さんから聞いたんですが?」
「そうなんですけど……」
断片的に記憶が戻ってきたみたい。
特に、今意識を失っている間に。
だから、あんなに頭が痛かったんだ。
「少し思い出せたみたいです」
「えっ! 思い出した?」
「はい、まだ少しですが」
それでも、ここにいる4人のことは認識できる。
「セレスティーヌ様、わたくしのこともお分かりになるのですよね?」
「もちろんです。ディアナさん」
「……」
「本当、これで一安心だぜ。けど、セレスさん、その話し方は?」
「そうですよ、記憶が戻ったんなら?」
「それが、今回は記憶が戻ったというより……。知識として頭の中に戻ってきたような感じなのです」
この部屋にいるのはシアさんアルさん姉弟、冒険者のヴァーンさん、護衛騎士のディアナさんにユーフィリアさん。
それは理解できるのだけれど、実感のようなものが持てない。
本で知識だけを身に付けたような、そんな感じがする。
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