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第6章 移ろう魂編

カーンゴルムへ 5

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<ヴァーンベック視点>



「グゥオロォォォォォ」

 くっ!

「ォォォ……」

 終わったか?

「……」

 分かっちゃいたが。
 こいつぁ、とんでもねえな。
 やばい咆哮だ。

 耳を塞いでいても、くらくらする。
 まるで頭が揺さぶられているようだぜ。

 とはいえ、この咆哮を受けるのは初めてじゃない。
 俺には何度か経験がある。
 今回も、何とか耐えきれたな。

 で。

「みんな、大丈夫か?」

「平気よ」

「問題ない」

 ディアナとユーフィリアは多少辛そうだが、大きな問題はないか。

「……平気だ」

「……」

「……」

 残りの3人は地面に膝がついたまま、立てない状態。
 すぐには戦えそうにないな。

 まあ、初めてあれを受けたんだ。
 仕方ねえ。

「セレスさん、シア、アルは少し休んでいてくれ。回復するまで3人で何とかする」

「大丈夫、おれは戦える!」

「やめとけ、アル。その状態で戦ったら、一撃を喰らっちまうかもしれねえ。少しだけ休んでろ」

「……」

「ディアナ、ユーフィリア、いけるな?」

「ああ」

「もちろん」

 よし、戦えそうだ。
 なら。

「そっちのホーンベアーからも咆哮があるかもしれねえ。気をつけてくれよ」

 あいつは一度咆哮すると、しばらくは咆哮できなくなる。
 なので、今は右手のホーンベアーの咆哮だけに注意すればいい。

「分かってる」

「了解」

「もうひと踏ん張りするぞ。ユーフィリア、先にこっちを倒すから隙があったら撃ってくれ」

「分かった」

「戦闘再開だ!」

 俺の目の前にいる手負いのホーンベアー。
 さっきの咆哮でかなりの力を使ったのか、動きがさらに鈍くなっている。
 やはり、咆哮は諸刃の剣だな。

 こうなると、深い傷を負わすことも難しくないだろうよ。
 剣で浅い傷をつけながら、好機を待つのみ!

 二度、三度と攻撃。

「ギャン」

 ヒットアンドアウェイを繰り返す。

 よし、よし、隙が出てきてるぞ。
 そこに剣を突き入れてやる。

「ギャ!」

 結構いいのが入った。
 けど、まだだ。
 剣を引き抜き一歩後退。

 ホーンベアーの反撃を躱す。

 ん?
 今の一撃でホーンベアーの体勢が崩れたのか。
 チャンス!

 と思ったら。

「ファイヤーアロー」

 俺より先にユーフィリアの炎の矢が炸裂。

「ギャーン!」

 ホーンベアーの胸にまともに入った。
 これは効いただろ。

 それでも倒れないか。
 頑丈な熊だぜ。

「とどめを」

「ああ」

 分かってる。
 動きが止まったホーンベアーの胸、ファイヤーアローを受けたその胸に。

「これで終わりだ!!」

 渾身の一突き。

「ギャ……」

 よし!!
 剣に伝わる感触は完璧。

 当然……。

 ホーンベアーは、俺の足下に崩れ落ちた。

「決まったぁ!」

「ヴァーン、やったわ!」

 後ろから歓声が上がる。
 ちっとは回復したみたいだな。

「ああ。けど、まだ終わっちゃいねえぞ」

 ディアナが相手をしているホーンベアーはそれほど傷を負っていない。

「ディアナ、加勢するぜ。ユーフィリア、魔法を頼む」

「ああ」

「了解」

「ヴァーンさん、俺もやる!」

「……ちゃんと剣を振るえるか確認してからだぞ」

「おう!」

 さあ、残すは1頭だ。
 まだ気は抜けねえが、それでも楽になったことに違いはないぜ。

 若干の余裕をもってディアナの横に並び、剣を構える。

「グルゥゥ」

 ちっ!
 またかよ。

「咆哮だ! 耳を塞げ」

「グウオォロォォォォォ!!!」

 っ!?
 こいつは!

「ロオォォォォ!!!」

 さっきより、凄い!

「オオォォォォ!!!」

 しかも、長い!

「オオォォォ……」

「……」

 やっと終わった。

「っ!」

 頭が痛ってえ。
 足にもきてる。
 まずいな。

 みんなは、どうなんだ?

「うぅ……」
「っ……」
「う……」
「……」
「……」

 ホントかよ!

 全員が戦える状態じゃない。
 セレスさんとシアにいたっては、両手両膝を地面につけている。

「……」

 俺も結構きついが……。
 ひとりでやるしかない、か。

 あいつも咆哮の後で、素早く動けないはず。
 なら、やれる!

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