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第5章 王都編
迎撃 2
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こっちにも護衛としての準備がある。
必要な情報は教えてもらわないと、適切な対処ができなくなるんだ。
最悪、命に関わってくる。
今回なんかは特にそう。
襲撃の可能性だけでも教えてほしかった。
「コーキさん、ごめんなさい」
「さっきも言ったが、口止めしたのはオレだ。すまん」
深く頭を下げるふたり。
「コーキさんには伝えたいとウィル様は言ってたんだよ。それをウチのがね。本当に申し訳なかったよ」
カロリナさんも横に並んで頭を下げてくる。
「本当に申し訳ない」
「……」
冒険者ギルドの教官であるヴァルターさんが取った選択なんだ。
当然、考えはあったんだろう。
それは理解できる。
ただ、困った事態に違いはない。
とはいえ、今は。
「……分かりました。もういいですから、頭を上げてください」
「コーキさん……」
謝罪なんかより、対策だろ。
「ウィルさん、今は襲撃に備えましょう」
「……はい」
「悪い。あとで、きっちり詫びを入れさせてもらう」
「いいですよ、もう」
ヴァルターさんの詫びって、恐ろしそうだしな。
「それで、どうするんです? この先で待ち伏せされているんですよね?」
「……そうだ」
「迂回できないんですか?」
「迂回しても無駄だろう」
「どのみち追ってくると?」
「ああ。あっちも既に気付いているだろうからな」
「……」
御者席に出て先を見てみると。
……検問所の前にいるな。
ここから目視できるのだから、あちらも当然気付いているはず。
つまり、今は様子見といったところか。
「遅かれ早かれ戦いになるということですね」
「そういうことだ」
退こうが進もうが、戦いにはなる。
それでも、待ち伏せされているということは罠が設置されている可能性も……。
「少し戻って迎撃しませんか?」
「オレもそれがいいと思う。けど、身体は大丈夫なのか?」
「……ええ、戦えますよ」
多分、戦えるだろう。
ただ、思っていた以上に身体が重いんだ。
記憶の中にある疲労症状より、かなりきつい。
これ、本当にただの疲労なんだよな?
「無理はしなくていいぞ」
「ここは、無理をする場面でしょ」
「……」
「さあ、行きましょう」
馬車が進路を逆にとる。
さて、相手がどう出るか?
馬車の中から気配を探り続ける、と。
「……」
こっちが少し移動したところで。
「敵が動き出しましたよ」
俺が離れた敵の気配を察知できることはヴァルターさんも既に知っている。
「そうか、なら、あそこで待ち伏せるとしよう」
岩場に囲まれた狭隘地。
迎撃に適した空間が近くにある。
「了解」
さっきの場所から少し戻った地点にあるこの狭隘地。
大きな岩に囲まれているおかげで左右の道幅は4メートルもない。
ヴァルターさんと俺がその狭隘地で待ち構え、ウィルさんとカロリナさんを乗せた馬車は20メートル程後ろに停車している。
ウィルさんは戦えないだろうが、カロリナさんは元冒険者なので今でもそれなりに戦えるらしい。それに、御者の彼はヴァルターさんの弟子でもある。
何より、ノワールがいるんだ。
今となっては、ほんと心強い味方だよ。
さて、彼らにウィルさんを護ってもらうとして、こちらは迎撃に専念しよう。
「来たぞ!」
「ええ」
「本当に平気なのか?」
「やるしかないでしょ」
「……悪いな」
ヴァルターさん、今日は謝ってばかりだぞ。
「大丈夫ですよ、戦えますから」
「……」
ゆっくりとこちらに進んでくる、その数は20人。
2人が騎乗しており残りは徒歩。
全員が軽く武装している、か。
「ほぅ、やっぱりあなたもいますか」
騎乗している1人が話しかけてきた。
「懲りない人ですねぇ」
それはこっちのセリフだ。
「久しぶりだな、オルセー」
オルセー。
夕連亭で俺が倒したあのオルセーが目の前にいる。
夕連亭での一件は処理が済んでいると聞いていたのに、こうしてオルセーがウィルさんの前に再び現れるとは。
「……」
ヴァルターさんの話の中で、レンヌ家のオルセーという名前を耳にした時に嫌な予感はしていたんだが、その予感が的中したと。
おっ、ヴァルターさんが俺の前に。
「これは何の真似だ。レンヌ家の意向なのか?」
「当然でしょう。さあ、ウィルミネアをこちらに渡しなさい。そうすれば、あなたたちは助けてあげますよ」
「そんなことをすると思うのか」
「いいえ、全く思いませんね」
「……」
「確認してあげたのは一族のよしみとでも言いますか。まっ、私の温情ですよ」
「勝手なことばかりしておきながら、よく言えたもんだな」
「心外ですねぇ。勝手なことをしているのはあなた方、コルヌ家でしょうに」
「……どういうことだ?」
「ウィルミネアの件は風根衆の総意ということですよ」
「出まかせを、レンヌ家の考えだろうが」
「いえ、いえ、衆門の総意です。コルヌはそれも知らぬようですね。いや、知らぬのはあなた方だけかな」
「……」
これは、風向きが良くないんじゃないのか。
必要な情報は教えてもらわないと、適切な対処ができなくなるんだ。
最悪、命に関わってくる。
今回なんかは特にそう。
襲撃の可能性だけでも教えてほしかった。
「コーキさん、ごめんなさい」
「さっきも言ったが、口止めしたのはオレだ。すまん」
深く頭を下げるふたり。
「コーキさんには伝えたいとウィル様は言ってたんだよ。それをウチのがね。本当に申し訳なかったよ」
カロリナさんも横に並んで頭を下げてくる。
「本当に申し訳ない」
「……」
冒険者ギルドの教官であるヴァルターさんが取った選択なんだ。
当然、考えはあったんだろう。
それは理解できる。
ただ、困った事態に違いはない。
とはいえ、今は。
「……分かりました。もういいですから、頭を上げてください」
「コーキさん……」
謝罪なんかより、対策だろ。
「ウィルさん、今は襲撃に備えましょう」
「……はい」
「悪い。あとで、きっちり詫びを入れさせてもらう」
「いいですよ、もう」
ヴァルターさんの詫びって、恐ろしそうだしな。
「それで、どうするんです? この先で待ち伏せされているんですよね?」
「……そうだ」
「迂回できないんですか?」
「迂回しても無駄だろう」
「どのみち追ってくると?」
「ああ。あっちも既に気付いているだろうからな」
「……」
御者席に出て先を見てみると。
……検問所の前にいるな。
ここから目視できるのだから、あちらも当然気付いているはず。
つまり、今は様子見といったところか。
「遅かれ早かれ戦いになるということですね」
「そういうことだ」
退こうが進もうが、戦いにはなる。
それでも、待ち伏せされているということは罠が設置されている可能性も……。
「少し戻って迎撃しませんか?」
「オレもそれがいいと思う。けど、身体は大丈夫なのか?」
「……ええ、戦えますよ」
多分、戦えるだろう。
ただ、思っていた以上に身体が重いんだ。
記憶の中にある疲労症状より、かなりきつい。
これ、本当にただの疲労なんだよな?
「無理はしなくていいぞ」
「ここは、無理をする場面でしょ」
「……」
「さあ、行きましょう」
馬車が進路を逆にとる。
さて、相手がどう出るか?
馬車の中から気配を探り続ける、と。
「……」
こっちが少し移動したところで。
「敵が動き出しましたよ」
俺が離れた敵の気配を察知できることはヴァルターさんも既に知っている。
「そうか、なら、あそこで待ち伏せるとしよう」
岩場に囲まれた狭隘地。
迎撃に適した空間が近くにある。
「了解」
さっきの場所から少し戻った地点にあるこの狭隘地。
大きな岩に囲まれているおかげで左右の道幅は4メートルもない。
ヴァルターさんと俺がその狭隘地で待ち構え、ウィルさんとカロリナさんを乗せた馬車は20メートル程後ろに停車している。
ウィルさんは戦えないだろうが、カロリナさんは元冒険者なので今でもそれなりに戦えるらしい。それに、御者の彼はヴァルターさんの弟子でもある。
何より、ノワールがいるんだ。
今となっては、ほんと心強い味方だよ。
さて、彼らにウィルさんを護ってもらうとして、こちらは迎撃に専念しよう。
「来たぞ!」
「ええ」
「本当に平気なのか?」
「やるしかないでしょ」
「……悪いな」
ヴァルターさん、今日は謝ってばかりだぞ。
「大丈夫ですよ、戦えますから」
「……」
ゆっくりとこちらに進んでくる、その数は20人。
2人が騎乗しており残りは徒歩。
全員が軽く武装している、か。
「ほぅ、やっぱりあなたもいますか」
騎乗している1人が話しかけてきた。
「懲りない人ですねぇ」
それはこっちのセリフだ。
「久しぶりだな、オルセー」
オルセー。
夕連亭で俺が倒したあのオルセーが目の前にいる。
夕連亭での一件は処理が済んでいると聞いていたのに、こうしてオルセーがウィルさんの前に再び現れるとは。
「……」
ヴァルターさんの話の中で、レンヌ家のオルセーという名前を耳にした時に嫌な予感はしていたんだが、その予感が的中したと。
おっ、ヴァルターさんが俺の前に。
「これは何の真似だ。レンヌ家の意向なのか?」
「当然でしょう。さあ、ウィルミネアをこちらに渡しなさい。そうすれば、あなたたちは助けてあげますよ」
「そんなことをすると思うのか」
「いいえ、全く思いませんね」
「……」
「確認してあげたのは一族のよしみとでも言いますか。まっ、私の温情ですよ」
「勝手なことばかりしておきながら、よく言えたもんだな」
「心外ですねぇ。勝手なことをしているのはあなた方、コルヌ家でしょうに」
「……どういうことだ?」
「ウィルミネアの件は風根衆の総意ということですよ」
「出まかせを、レンヌ家の考えだろうが」
「いえ、いえ、衆門の総意です。コルヌはそれも知らぬようですね。いや、知らぬのはあなた方だけかな」
「……」
これは、風向きが良くないんじゃないのか。
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