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第5章 王都編
東へ 2
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グラスブルとナガアランは王都キュベルリアに向かう途中でも立ち寄った街なので、ある程度は見知っている。けれど、そこから東の町や村は初めて訪れる土地だ。
どんな場所であろうと初見の地というものには興味をそそられる。
おかげで、飽きることなく数日を過ごすことができたかな。
ただし、ヴァルターさんの夜酒に付き合わされるのだけは大変だった。
この人、かなりの酒豪なんだよ。
それはもう、ギリオン以上に。
「……」
そうか!
剣好き、酒好き、さらに筋肉に覆われた大男とくれば、ギリオンと話が合うに違いない。
2人で酒を飲むと、すぐに意気投合しそうだぞ。
でも、あれか。
ギリオンにヴァルターさんを紹介したら、自分が剣で勝つまで勝負しろと挑み続けそうだな。
王都でギリオンと飲んだ夜、謎のアリマ青年とヴァルターさんの勝負に興味津々だったからさ、あいつ。
というふうに旅は進み。
着実に日程を消化していく。
その結果、予定より少し早くレザンジュとの国境付近に到着することができた。
で、今日の昼頃には国境検問所に到着する予定なんだけれど……。
「コーキさん、体調はどうですか?」
「少し熱があるようです」
「まだ熱が……」
「すみません。しばらくすれば治ると思いますので」
情けないことに、体調を崩してしまったんだ。
おそらくは疲労による発熱。
前回の人生でも、疲労で発熱したことが何度かあったからなぁ。
「……」
最近の肉体酷使は、この20歳の身体でもさすがにきつかったのかもしれない。
そこへ持ってきて、この穏やかな旅。夜酒。
気が緩んだ、ってことか。
「旅の途中で、ほんと申し訳ないです」
「そんな、気にしないでください。誰にでも体調が悪い時はありますから」
「……」
「辛い時はただ休めばいいんです、ね」
護衛対象にこんな言葉を貰うなんて。
ありがたい以上に情けない。
これじゃ、護衛失格だ。
早く治さないと!
でも、まあ、治癒魔法を使い馬車で休んでいれば、すぐに良くなるはず。
「やっぱり、今日は宿で休んだ方が良かったのかなぁ?」
「いえ、こうして馬車の中で休めれば平気ですよ」
「そうですか?」
「ええ」
「分かりました。でも今は、体調回復のために少しでも眠ってくださいね」
「……はい」
馬車が進んでいる道の先の気配を探ってみたところ……。
怪しい存在など全く感じられない。
これなら、少し眠っても問題はないだろう。
「……」
眼を閉じると、睡魔がすぐに襲ってくる。
これだけ眠くなるというのは、やはり普段とは違う……。
「……」
「お嬢、我々は今後に備えましょう。ここまでは何の問題もありませんでしたが、レザンジュに入る前に何かあるかもしれませんからな」
「そうね」
馬車の中で横になっているこちらに背を向け、ヴァルターさんがウィルさんに話しかけている。
それに答えるウィルさんの声は少しかたい。
まどろみの中、俺はそれを聞いていた。
……。
……。
……。
どれくらい眠っただろうか。
周りから感じるただならぬ雰囲気に覚醒を促される。
「やっぱり本当だったのね」
「そうみたいですなぁ」
「あんた!」
「ああ、分かってる」
馬車が停まっているぞ。
何かあったのか?
まだ熱が残っている重い身体。
そいつを無理やり叩き起こして……。
「コーキさん、目を覚まされたんですね」
「はい、迷惑をかけてすみません。それで、何が起こっているんでしょう?」
「その……。馬車が狙われているようなのです」
狙われている?
魔物にか?
それとも。
「また、野盗でしょうか?」
「いえ、今回は……」
どんな場所であろうと初見の地というものには興味をそそられる。
おかげで、飽きることなく数日を過ごすことができたかな。
ただし、ヴァルターさんの夜酒に付き合わされるのだけは大変だった。
この人、かなりの酒豪なんだよ。
それはもう、ギリオン以上に。
「……」
そうか!
剣好き、酒好き、さらに筋肉に覆われた大男とくれば、ギリオンと話が合うに違いない。
2人で酒を飲むと、すぐに意気投合しそうだぞ。
でも、あれか。
ギリオンにヴァルターさんを紹介したら、自分が剣で勝つまで勝負しろと挑み続けそうだな。
王都でギリオンと飲んだ夜、謎のアリマ青年とヴァルターさんの勝負に興味津々だったからさ、あいつ。
というふうに旅は進み。
着実に日程を消化していく。
その結果、予定より少し早くレザンジュとの国境付近に到着することができた。
で、今日の昼頃には国境検問所に到着する予定なんだけれど……。
「コーキさん、体調はどうですか?」
「少し熱があるようです」
「まだ熱が……」
「すみません。しばらくすれば治ると思いますので」
情けないことに、体調を崩してしまったんだ。
おそらくは疲労による発熱。
前回の人生でも、疲労で発熱したことが何度かあったからなぁ。
「……」
最近の肉体酷使は、この20歳の身体でもさすがにきつかったのかもしれない。
そこへ持ってきて、この穏やかな旅。夜酒。
気が緩んだ、ってことか。
「旅の途中で、ほんと申し訳ないです」
「そんな、気にしないでください。誰にでも体調が悪い時はありますから」
「……」
「辛い時はただ休めばいいんです、ね」
護衛対象にこんな言葉を貰うなんて。
ありがたい以上に情けない。
これじゃ、護衛失格だ。
早く治さないと!
でも、まあ、治癒魔法を使い馬車で休んでいれば、すぐに良くなるはず。
「やっぱり、今日は宿で休んだ方が良かったのかなぁ?」
「いえ、こうして馬車の中で休めれば平気ですよ」
「そうですか?」
「ええ」
「分かりました。でも今は、体調回復のために少しでも眠ってくださいね」
「……はい」
馬車が進んでいる道の先の気配を探ってみたところ……。
怪しい存在など全く感じられない。
これなら、少し眠っても問題はないだろう。
「……」
眼を閉じると、睡魔がすぐに襲ってくる。
これだけ眠くなるというのは、やはり普段とは違う……。
「……」
「お嬢、我々は今後に備えましょう。ここまでは何の問題もありませんでしたが、レザンジュに入る前に何かあるかもしれませんからな」
「そうね」
馬車の中で横になっているこちらに背を向け、ヴァルターさんがウィルさんに話しかけている。
それに答えるウィルさんの声は少しかたい。
まどろみの中、俺はそれを聞いていた。
……。
……。
……。
どれくらい眠っただろうか。
周りから感じるただならぬ雰囲気に覚醒を促される。
「やっぱり本当だったのね」
「そうみたいですなぁ」
「あんた!」
「ああ、分かってる」
馬車が停まっているぞ。
何かあったのか?
まだ熱が残っている重い身体。
そいつを無理やり叩き起こして……。
「コーキさん、目を覚まされたんですね」
「はい、迷惑をかけてすみません。それで、何が起こっているんでしょう?」
「その……。馬車が狙われているようなのです」
狙われている?
魔物にか?
それとも。
「また、野盗でしょうか?」
「いえ、今回は……」
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