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第5章 王都編
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昼まで宿で待っていたものの、ウィルさんは戻ってこないし連絡もない。
さて、こうなると今日も自由な1日になってしまった。
「……」
何の予定もない王都での1日。
今日と同様に予定がなかった2日前は、コルドゥラの騒動から剣姫に遭遇し、ファミノとダンスをし、冒険者ギルドではヴァルターさんと手合わせをして、夜はギリオンに振り回され……。
結果、忙しい一日に。
とはいえ、偶然が重なっただけだ。
さすがに今日は何も起こらないだろ。
「……」
今日こそは、ゆっくり過ごせるはず。
なら、まずは小広場でファミノの屋台に寄って、その後に噴水のある大広場で寛ごうか。
善は急げということで、宿を出て小広場に足を向けたところ……。
ウィルさんの姿が。
後ろにはヴァルターさんとカロリナさんもいる。
「コーキさん、良かったぁ!」
良かった?
俺の姿を認めて安心しているのか?
その様子には、既視感を覚えるぞ。
「宿にいたのですね」
「……ええ。ウィルさんは?」
「私はヴァルターたちと一緒に、あっ……昨日は連絡もせず申し訳ありませんでした」
「いえ、問題がないのなら、いいんですよ」
「でも、御迷惑を」
「迷惑ではないです。ただ、今後の予定だけは決めたいですね」
予定が決まらないと、上手く動けないからな。
「まさに今、予定について話そうと思っていたんです」
「そうなんですか? なら、私の部屋で話しましょう」
ウィルさん、ヴァルターさん、カロリナさんを促し宿に入り、部屋に戻る。
「ウィルさん、今後の予定は?」
「急な話なのですが……今日キュベルリアを出たいと思います」
今日出発?
ほんとに急だな。
「それで、良ければコーキさんにも同行してもらえないかと?」
どうして俺にそんな質問を?
答えるまでもない質問を?
「もちろん、オルドウには一緒に帰りますよ。私はウィルさんの護衛なんですから」
「あの、そうではなくて」
「……」
ん?
そうではない。
では、どういうことだ?
「実は、王都を出てレザンジュに向かおうと考えているんです」
「……レザンジュ王国にですか?」
「はい」
なるほど。
確かに、これは想定外だ。
「私にもレザンジュに同行してほしいということですね」
「はい。コーキさんがよろしければ、レザンジュの王都に一緒に……」
「……」
どうしたものか?
こちらとしては、オルドウに帰るつもりでいたからな。
レザンジュに行くなんて微塵も考えていなかった。
とはいえ、俺に急ぎの用事があるわけでもなく。
オルドウに戻ってすべきことも……。
ないことはないか。
それでも、急ぎはしない。
なら、乗り掛かった船。
レザンジュに行くのも悪くないな。
エリシティア様とセレス様の国、レザンジュ王国に。
「突然の予定変更ですので、コーキさんが断られても依頼不達成ということにはなりませんから。ですので、無理なようでしたら断わってくださって結構です。でも、もし、可能なら一緒に来ていただければ……嬉しいです」
遠慮がちに、そして心配そうにこちらの様子を窺っているウィルさん。
「いいですよ。レザンジュに行きましょう」
「本当ですか! ありがとうございます」
「コーキさん、ありがたい。あんたがいりゃ万全だ。これほど心強いことはないぞ」
心強いって、ヴァルターさんがいれば問題ないだろ。
まさか、同行しないのか?
「ヴァルターさんとカロリナさんもレザンジュに行くのですよね?」
「はい、ふたりも一緒です」
そうだよな。
「では、急がせて申し訳ないのですが、コーキさんの用意ができたらすぐに出発しようかと」
「今すぐですか?」
「はい」
「……分かりました。準備ができたら受付に集合ということで」
さて、こうなると今日も自由な1日になってしまった。
「……」
何の予定もない王都での1日。
今日と同様に予定がなかった2日前は、コルドゥラの騒動から剣姫に遭遇し、ファミノとダンスをし、冒険者ギルドではヴァルターさんと手合わせをして、夜はギリオンに振り回され……。
結果、忙しい一日に。
とはいえ、偶然が重なっただけだ。
さすがに今日は何も起こらないだろ。
「……」
今日こそは、ゆっくり過ごせるはず。
なら、まずは小広場でファミノの屋台に寄って、その後に噴水のある大広場で寛ごうか。
善は急げということで、宿を出て小広場に足を向けたところ……。
ウィルさんの姿が。
後ろにはヴァルターさんとカロリナさんもいる。
「コーキさん、良かったぁ!」
良かった?
俺の姿を認めて安心しているのか?
その様子には、既視感を覚えるぞ。
「宿にいたのですね」
「……ええ。ウィルさんは?」
「私はヴァルターたちと一緒に、あっ……昨日は連絡もせず申し訳ありませんでした」
「いえ、問題がないのなら、いいんですよ」
「でも、御迷惑を」
「迷惑ではないです。ただ、今後の予定だけは決めたいですね」
予定が決まらないと、上手く動けないからな。
「まさに今、予定について話そうと思っていたんです」
「そうなんですか? なら、私の部屋で話しましょう」
ウィルさん、ヴァルターさん、カロリナさんを促し宿に入り、部屋に戻る。
「ウィルさん、今後の予定は?」
「急な話なのですが……今日キュベルリアを出たいと思います」
今日出発?
ほんとに急だな。
「それで、良ければコーキさんにも同行してもらえないかと?」
どうして俺にそんな質問を?
答えるまでもない質問を?
「もちろん、オルドウには一緒に帰りますよ。私はウィルさんの護衛なんですから」
「あの、そうではなくて」
「……」
ん?
そうではない。
では、どういうことだ?
「実は、王都を出てレザンジュに向かおうと考えているんです」
「……レザンジュ王国にですか?」
「はい」
なるほど。
確かに、これは想定外だ。
「私にもレザンジュに同行してほしいということですね」
「はい。コーキさんがよろしければ、レザンジュの王都に一緒に……」
「……」
どうしたものか?
こちらとしては、オルドウに帰るつもりでいたからな。
レザンジュに行くなんて微塵も考えていなかった。
とはいえ、俺に急ぎの用事があるわけでもなく。
オルドウに戻ってすべきことも……。
ないことはないか。
それでも、急ぎはしない。
なら、乗り掛かった船。
レザンジュに行くのも悪くないな。
エリシティア様とセレス様の国、レザンジュ王国に。
「突然の予定変更ですので、コーキさんが断られても依頼不達成ということにはなりませんから。ですので、無理なようでしたら断わってくださって結構です。でも、もし、可能なら一緒に来ていただければ……嬉しいです」
遠慮がちに、そして心配そうにこちらの様子を窺っているウィルさん。
「いいですよ。レザンジュに行きましょう」
「本当ですか! ありがとうございます」
「コーキさん、ありがたい。あんたがいりゃ万全だ。これほど心強いことはないぞ」
心強いって、ヴァルターさんがいれば問題ないだろ。
まさか、同行しないのか?
「ヴァルターさんとカロリナさんもレザンジュに行くのですよね?」
「はい、ふたりも一緒です」
そうだよな。
「では、急がせて申し訳ないのですが、コーキさんの用意ができたらすぐに出発しようかと」
「今すぐですか?」
「はい」
「……分かりました。準備ができたら受付に集合ということで」
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