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第5章 王都編
王都の長い夜 2
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行政区と商業区を結ぶような場所に位置する大広場。
ファミノと一緒に踊った広場よりひと回り大きい円形のこの大広場が、夜闇の中にひときわ美しく輝いている。
広場中央に造られた見事な噴水。
噴水に水を運ぶための水路、それを囲うように設置された花壇。
絶妙な調和をもってライトアップされた幽玄の美。
漆黒の中に浮かぶ理想郷……。
「……」
美しく、静穏で清浄な空気の中、蓄積された疲労も消えていくようだ。
本当に心地いい。
と、癒されていたのに、無粋な乱入者のせいで……。
「なんで、コーキがこんな所にいんだよ?」
「護衛依頼の仕事で王都に滞在しているだけだ。ギリオンこそ、どうして王都に?」
「オレも仕事だぜ。レイリュークにちっと誘われてな」
レイリューク?
ジルクール流剣術の達人レイリュークさん?
オルドウの道場でギリオンが何度も挑んでいた相手じゃないか。
彼がギリオンを王都に呼んだのか?
わざわざオルドウから?
「よく知らねえが、人手不足らしくてな。オレの力を借りてえんだと」
レイリュークさんが、ギリオンをそこまで評価していたとは。
意外だな。
「って、んなこたぁ、今はどうでもいい!」
珍しい。
ギリオンが焦っている。
「おい、コーキ、ここに3人組が逃げて来なかったか?」
「ああ、さっき広場を走り抜けて行ったな」
「おっ、さすがコーキだ! おめぇはヴァーンと違って役に立つぜ」
「……」
「で、どっちに逃げて行きやがった?」
「東の通りに走って行ったぞ」
「おし! オレは追いかけっから……コーキ、おめえも手伝うか?」
なぜ俺が?
ここで、ゆっくりしていたのに。
「よーし、一緒に追いかけっぞ」
「俺はここにいるから、頑張れよ」
「おいおい、ダブルヘッドの処理、忘れてねえよな」
「……」
「コーキがいねえから、ギルドじゃあ大変だったぜ」
それを言われると辛い。
「……分かった、手伝ってやるよ」
「そうこなくっちゃな」
「いいから、早く終わらせるぞ」
「おうよ!」
さっさと片付けよう。
ギリオンとふたり、広場を出て東へ走るが……。
広場から遠ざかるにつれて、暗闇が増してくる。
中央大通りと違い、この辺りには魔道具があまり設置されていないようだ。
「見当たらねえ」
「……」
「ホントに、こっちなんだよな?」
「広場から東に走り去ったから、合っているはずだ」
「つっても、東も広いからよぉ」
その通り。
王都の広さはオルドウとは比べ物にならない。
その上、この夜闇の中なのだから。
逃亡者を探すのは容易じゃないぞ。
「コーキ、あれ使えねえか?」
「あれ?」
「気配だ。おめえなら探れんだろ?」
「……難しいな。王都は人が多すぎる。それに、3人の気配も把握してないからな」
「ちっ、無理かよ」
「ああ」
「しゃあねえ。こっち行くぜ」
そう言って、北に向かって走り出した。
どんな根拠が?
「いったい、あいつら何者なんだ?」
「ん? レイリュークの敵じゃねえか」
「敵? レイリュークさんは王都でジルクール流剣術を教えている剣士なんだよな?」
「そうだぜ」
「なら、どういった敵が? こんな時間に逃げる敵なんて……」
普通じゃない。
「んな詳しいことは知らねえ。けどよぉ、あいつの道場を見張ってたり……いろいろあんだろ」
事情を理解していないのか?
ギリオンらしいと言えばギリオンらしいが……。
「それで、あの3人は何を?」
「門弟を襲ったらしいわ」
襲った!
「それ、犯罪だろ?」
「多分な。まっ、そんな細けぇことはどうでもいいんだよ」
「細かいって、おまえ」
「オレはよぉ、あいつらを捕まえてレイリュークに引き渡せばいいだけ」
「……」
「んで、オレの仕事は終了。あとは飲みに行って、明日また道場でレイリュークと仕合う」
ギリオン……。
「それだけだぜ」
「王都に来たのは、それが目的か」
「ったりめぇだろ。レイリュークと毎日戦えるんだぜ」
「……」
まったく。
ぶれない奴だよ、おまえは。
ところで。
「ヴァーンは来てないんだよな」
「おう。あいつぁ、オルドウだ」
「……」
ヴァーンが傍についているなら安心なんだが。
ギリオンのこの様子を見ていると、どうにも不安になってしまう。
「ギリオンは、いつまで王都に滞在する予定なんだ?」
「あと10日ほどだろうな」
10日。
それくらいなら心配することもない、か。
「それだけありゃ、レイリュークにも勝てるかんな。それによぉ、帰ってアルの面倒もみねえといけねぇし」
10日でレイリュークさんに勝てるという話は聞き流すとして。
アルのためにオルドウに戻るとは、ギリオンもなかなか……。
「おめえは、いつまで王都にいんだ?」
「3、4日だな」
「なら、王都にいる間に飲みに行こっぜ」
王都でギリオンと酒。
「……」
悪くないな。
「んん? この後でいいか。よーし、早く捕まえて飲みに行くぞ!」
などと話しながら、走ること数分。
貴族区との境界である内壁が見えてきた。
と、壁の前に3人の気配?
「ギリオンの勘が当たったかもしれない」
明らかに怪しい3人。
まだ目視できないが、確かに内壁の手前に。
ファミノと一緒に踊った広場よりひと回り大きい円形のこの大広場が、夜闇の中にひときわ美しく輝いている。
広場中央に造られた見事な噴水。
噴水に水を運ぶための水路、それを囲うように設置された花壇。
絶妙な調和をもってライトアップされた幽玄の美。
漆黒の中に浮かぶ理想郷……。
「……」
美しく、静穏で清浄な空気の中、蓄積された疲労も消えていくようだ。
本当に心地いい。
と、癒されていたのに、無粋な乱入者のせいで……。
「なんで、コーキがこんな所にいんだよ?」
「護衛依頼の仕事で王都に滞在しているだけだ。ギリオンこそ、どうして王都に?」
「オレも仕事だぜ。レイリュークにちっと誘われてな」
レイリューク?
ジルクール流剣術の達人レイリュークさん?
オルドウの道場でギリオンが何度も挑んでいた相手じゃないか。
彼がギリオンを王都に呼んだのか?
わざわざオルドウから?
「よく知らねえが、人手不足らしくてな。オレの力を借りてえんだと」
レイリュークさんが、ギリオンをそこまで評価していたとは。
意外だな。
「って、んなこたぁ、今はどうでもいい!」
珍しい。
ギリオンが焦っている。
「おい、コーキ、ここに3人組が逃げて来なかったか?」
「ああ、さっき広場を走り抜けて行ったな」
「おっ、さすがコーキだ! おめぇはヴァーンと違って役に立つぜ」
「……」
「で、どっちに逃げて行きやがった?」
「東の通りに走って行ったぞ」
「おし! オレは追いかけっから……コーキ、おめえも手伝うか?」
なぜ俺が?
ここで、ゆっくりしていたのに。
「よーし、一緒に追いかけっぞ」
「俺はここにいるから、頑張れよ」
「おいおい、ダブルヘッドの処理、忘れてねえよな」
「……」
「コーキがいねえから、ギルドじゃあ大変だったぜ」
それを言われると辛い。
「……分かった、手伝ってやるよ」
「そうこなくっちゃな」
「いいから、早く終わらせるぞ」
「おうよ!」
さっさと片付けよう。
ギリオンとふたり、広場を出て東へ走るが……。
広場から遠ざかるにつれて、暗闇が増してくる。
中央大通りと違い、この辺りには魔道具があまり設置されていないようだ。
「見当たらねえ」
「……」
「ホントに、こっちなんだよな?」
「広場から東に走り去ったから、合っているはずだ」
「つっても、東も広いからよぉ」
その通り。
王都の広さはオルドウとは比べ物にならない。
その上、この夜闇の中なのだから。
逃亡者を探すのは容易じゃないぞ。
「コーキ、あれ使えねえか?」
「あれ?」
「気配だ。おめえなら探れんだろ?」
「……難しいな。王都は人が多すぎる。それに、3人の気配も把握してないからな」
「ちっ、無理かよ」
「ああ」
「しゃあねえ。こっち行くぜ」
そう言って、北に向かって走り出した。
どんな根拠が?
「いったい、あいつら何者なんだ?」
「ん? レイリュークの敵じゃねえか」
「敵? レイリュークさんは王都でジルクール流剣術を教えている剣士なんだよな?」
「そうだぜ」
「なら、どういった敵が? こんな時間に逃げる敵なんて……」
普通じゃない。
「んな詳しいことは知らねえ。けどよぉ、あいつの道場を見張ってたり……いろいろあんだろ」
事情を理解していないのか?
ギリオンらしいと言えばギリオンらしいが……。
「それで、あの3人は何を?」
「門弟を襲ったらしいわ」
襲った!
「それ、犯罪だろ?」
「多分な。まっ、そんな細けぇことはどうでもいいんだよ」
「細かいって、おまえ」
「オレはよぉ、あいつらを捕まえてレイリュークに引き渡せばいいだけ」
「……」
「んで、オレの仕事は終了。あとは飲みに行って、明日また道場でレイリュークと仕合う」
ギリオン……。
「それだけだぜ」
「王都に来たのは、それが目的か」
「ったりめぇだろ。レイリュークと毎日戦えるんだぜ」
「……」
まったく。
ぶれない奴だよ、おまえは。
ところで。
「ヴァーンは来てないんだよな」
「おう。あいつぁ、オルドウだ」
「……」
ヴァーンが傍についているなら安心なんだが。
ギリオンのこの様子を見ていると、どうにも不安になってしまう。
「ギリオンは、いつまで王都に滞在する予定なんだ?」
「あと10日ほどだろうな」
10日。
それくらいなら心配することもない、か。
「それだけありゃ、レイリュークにも勝てるかんな。それによぉ、帰ってアルの面倒もみねえといけねぇし」
10日でレイリュークさんに勝てるという話は聞き流すとして。
アルのためにオルドウに戻るとは、ギリオンもなかなか……。
「おめえは、いつまで王都にいんだ?」
「3、4日だな」
「なら、王都にいる間に飲みに行こっぜ」
王都でギリオンと酒。
「……」
悪くないな。
「んん? この後でいいか。よーし、早く捕まえて飲みに行くぞ!」
などと話しながら、走ること数分。
貴族区との境界である内壁が見えてきた。
と、壁の前に3人の気配?
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明らかに怪しい3人。
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