30年待たされた異世界転移

明之 想

文字の大きさ
363 / 1,578
第5章 王都編

王都 2

しおりを挟む
 美しき白の都、白都キュベルリア。
 白都へと通じる時忘門。

 ウィルさんからもジンクからも馬車の中でさんざん話を聞いていたのに、残念ながら俺たちの到着した時間では、その感動を味わうことができなかった。

 それでもまあ、薄暮の中にうっすらと浮かび上がる白亜宮を眺めることができただけでも良かったのかな。

 時は忘れなかったけれど、宮城の威容を感じ取ることができたような気がするから。

 しかし……。
 この街は本当に上手く設計されているよな。
 それに、立地も素晴らしい。

 王都の南と東には大きな河が流れ、西は湿地帯、東から北東にかけては山地が広がっている。天然の要害であり、自然の恵みの宝庫でもある白都。

 ちなみに、この南と東の大河の水で作られた水路が街のいたる所で見られるらしい。これもまた、キュベルリアの名物だと。

 美しく整備され、自然に恵まれ、要害でもある。
 白都の真の姿を見ることができる明日が楽しみだな。




 翌朝。
 この旅の間も欠かさず続けている日課の鍛練を終え、宿の食堂でウィルさんと朝食をいただく。

「さすが王都といった宿ですね」

「ええ、居心地の良い宿が取れて幸運でした」

 王都到着後に急いで見つけた今回の宿。
 どうやら良い宿にあたったらしい。

「王都には少なくとも4日は滞在する予定ですので、落ち着ける宿でないと困りますからね」

 ウィルさんは夕連亭で働いているだけあって、宿については一家言あるようだ。
 そんなウィルさんが納得できる宿で良かったよ。

「それで、王都滞在中ですが、コーキさんは予定通り自由に行動してください」

「本当に良いのですか?」

「もちろんです。そういう約束でしたよね?」

「ええ、まあ……」

 その話はあらかじめ聞いている。
 この自由時間を使って、一度日本に戻る予定も立てている。

 とはいうものの。

「王都では護衛しなくても……?」

「大丈夫ですよ。王都は治安の良い街ですし、衛兵も常に巡回しているみたいですからね。それに、深夜などは1人で出歩きませんし」

「治安の良い街なのですね」

「ええ。ですので、私の心配などせず王都を満喫してくださいね」

 そういうことなら。

「では、お言葉に甘えて」

「ふふ、自由時間なのに、コーキさんは本当に真面目な方ですよね」

「はあ……」

「とにかく、こちらのことは気にせず、気楽に過ごしてください」

「分かりました」

「ということで、この話は終わりです。これから、私は王都に来た目的を果たしに行きますので。あ、そうそう、もし何か問題が起きたら、宿の受付に言伝しておいてください」

「了解しました。お気をつけて」

 宿の食堂を出て部屋に戻って行くウィルさんを見送る俺は、まだ朝食後のお茶をいただいている。

「さて、これからどうしたものかな」

 王都滞在中に確定している予定はというと。
 明日の昼にジンクのレストランで昼食をとり、その後にエリシティア様のもとを訪れるという2件だけ。それ以外は全くの自由時間。

 当然、今日は特にすることもない。
 なら、ここはやはり……。

 ゆっくり街を楽しむとするか。
 昨日は見ることができなかった白都を満喫しよう。

「悪くないな」

 異世界の王都をひとりで散策。
 はは。
 年甲斐もなく、心が躍ってしまうぞ。


 ということで、部屋に戻り簡単に出掛ける用意をした後。
 宿を出発することに。

「おおぉ」

 宿の外は雲ひとつない晴天、絶好の散策日和。
 最高だな。

 さて。
 まずは、宿から南に向かってみようかと思う。
 向かうは南大門、時忘門。
 昨日の王都入城の際に通った有名な大門だ。

 城門をくぐった瞬間、時を忘れて立ち止まってしまうという白亜宮の眺め。
 何をおいても、その眺めを確認しないといけない。

 さあ、行こう!

 大通りに出て、南に向かって歩を進める。

「……」

 天気も良いし、気温もオルドウに比べると暑くもなく丁度いいと思える。
 湿度も高くない。
 本当に気持ちのいい朝だ。

 気分も高揚してくるというもの。

 そんな俺が今歩いている中央大通りは、時忘門から宮城まで続く王都のメインストリートらしい。

 かなり道幅があるな。
 50メートル近くあるんじゃないか。

 人や馬車が通行するには広すぎると感じるが、これはこれで国の威信を見せつけるという点では意味があるのだろう。日本でも、平安京の朱雀大路は80メートル以上の道幅だったとか。

 などと、中央大通りの広さに感心しながらも、さらに足を進める。

「……」

 こう広いと、大通りの西側と東側を同時に見物するのは難しい。
 なので、行きは西側を、帰りは東側を歩くことにしよう。


 俺とウィルさんの滞在している宿は中央大通り沿いに存在する商業区画の一画にあり、貴族区との境界である内壁と時忘門とのちょうど中間あたりに位置している。

 中央大通りは北の宮城から貴族区、一般区の中の行政区、商業区を通り、時忘門へと続いているため、あの宿は商業区の中でも北寄りの立地というわけだ。
 北に行くほど地価は上がり格も上がるということだから、それなりの格式がある宿なんだろう。



 宿を出て数分。
 午前中のこの時間でも、中央大通りには多くの人の姿が見られる。
 通行している馬車も絶えることがない。

 まだ少し歩いただけなのに、その熱気に圧倒されそうだ。

 この旅の途中で訪れたどの街よりも活気があり、エネルギーに満ち溢れていることは間違いないな。

 ところで、往来を行き交っているのはいわゆる人族だけではない。
 オルドウではあまり見かけることのなかった異種族の人たちも、大通りを普通に歩いている。
 当然、俺の知らない種族の人たちも目に入ってくる。

 これぞ、まさに異世界!
 そう思わずにはいられない!


しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

間違い転生!!〜神様の加護をたくさん貰っても それでものんびり自由に生きたい〜

舞桜
ファンタジー
「初めまして!私の名前は 沙樹崎 咲子 35歳 自営業 独身です‼︎よろしくお願いします‼︎」  突然 神様の手違いにより死亡扱いになってしまったオタクアラサー女子、 手違いのお詫びにと色々な加護とチートスキルを貰って異世界に転生することに、 だが転生した先でまたもや神様の手違いが‼︎  神々から貰った加護とスキルで“転生チート無双“  瞳は希少なオッドアイで顔は超絶美人、でも性格は・・・  転生したオタクアラサー女子は意外と物知りで有能?  だが、死亡する原因には不可解な点が…  数々の事件が巻き起こる中、神様に貰った加護と前世での知識で乗り越えて、 神々と家族からの溺愛され前世での心の傷を癒していくハートフルなストーリー?  様々な思惑と神様達のやらかしで異世界ライフを楽しく過ごす主人公、 目指すは“のんびり自由な冒険者ライフ‼︎“  そんな主人公は無自覚に色々やらかすお茶目さん♪ *神様達は間違いをちょいちょいやらかします。これから咲子はどうなるのか?のんびりできるといいね!(希望的観測っw) *投稿周期は基本的には不定期です、3日に1度を目安にやりたいと思いますので生暖かく見守って下さい *この作品は“小説家になろう“にも掲載しています

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

転生チートは家族のために ユニークスキル『複合』で、快適な異世界生活を送りたい!

りーさん
ファンタジー
 ある日、異世界に転生したルイ。  前世では、両親が共働きの鍵っ子だったため、寂しい思いをしていたが、今世は優しい家族に囲まれた。  そんな家族と異世界でも楽しく過ごすために、ユニークスキルをいろいろと便利に使っていたら、様々なトラブルに巻き込まれていく。 「家族といたいからほっといてよ!」 ※スキルを本格的に使い出すのは二章からです。

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕だけ別な場所に飛ばされた先は異世界の不思議な無人島だった。

アノマロカリス
ファンタジー
よくある話の異世界召喚… スマホのネット小説や漫画が好きな少年、洲河 愽(すが だん)。 いつもの様に幼馴染達と学校帰りの公園でくっちゃべっていると地面に突然魔法陣が現れて… 気付くと愽は1人だけ見渡す限り草原の中に突っ立っていた。 愽は幼馴染達を探す為に周囲を捜索してみたが、一緒に飛ばされていた筈の幼馴染達は居なかった。 生きていればいつかは幼馴染達とまた会える! 愽は希望を持って、この不思議な無人島でサバイバル生活を始めるのだった。 「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕の授かったスキルは役に立つものなのかな?」 「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は幼馴染達よりも強いジョブを手に入れて無双する!」 「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は魔王から力を授かり人類に対して牙を剥く‼︎」 幼馴染達と一緒に異世界召喚の第四弾。 愽は幼馴染達と離れた場所でサバイバル生活を送るというパラレルストーリー。 はたして愽は、無事に幼馴染達と再会を果たせるのだろうか?

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

処理中です...