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第4章 異能編
和見幸奈 6
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※ 今話もセンシティブな内容となっております。
※ 後書きに、前話、今話の内容を簡単に記しておきますので、
※ 苦手な方は、後書きを読んで先に進んでください。
******************************
******************************
******************************
<和見幸奈視点>
それは、様々な……。
様々な爬虫類の死骸だった。
……。
……。
虫だけでも、どうしようもなく気持ちが悪かったのに。
辛かったのに。
爬虫類の死骸だなんて!
……あの時。
実際にそれを見たあの時。
目に入ったあの瞬間。
頭が真っ白になって。
何も考えられなくなってしまった。
気を失っていたのかもしれない。
……。
……。
でも、父は……そんなわたしの様子など気にする素振りもなかった。
養女が恐ろしい液体の中、真っ青な顔で震えているのに、何も……。
液体の中に追加されたそれら。
虫とは違い、確かな質量をもってわたしに迫ってくる異物。
耐えがたい不快感と絶え間ない嘔吐感。
そんなものに苛まれながらも、わたしは逃げ出すことができなかった。
父の言葉を拒絶することはできなかった。
それでも……。
やはり、慣れとは恐ろしい。
人とは恐ろしい。
何度もそれに浸かっているうちに、麻痺したように嘔吐感は消えていったのだから。
もちろん、不快であることに変わりはなかったのだけれど……。
3度目の変化。
それは浴槽内での変化ではなかった。
「はじめまして幸奈さん」
あの不気味な液体に身体を預けるようになって4か月が経過した頃。
父がある女性を連れて地下室にやって来た。
「こちらの素晴らしい異能の使い手が、異能発現の手助けをしてくれる」
父の傍らにいたのはわたしと同年代に見える細身の女性。
夏だというのに、全身を黒一色で覆っている。
黒のロングスカート、黒のシャツ、手にも黒い手袋。
素肌を見せているのは顔だけ。
まるでわたしを葬送にやってきた死神のような姿……。
対するわたしは、いつものように下着を身に着けているだけ……。
「では、さっそく始めますわ」
「よろしく頼む」
浴槽の前で呆然と佇む私の前に歩み寄って来る彼女。
顔にかかる長く綺麗な黒髪を払いのけた手が私に向けられ。
「憂波!」
彼女のその言葉とともに現れたのは……。
音?
とても小さいけれど……。
耳の中を、頭の中を直接触られているような、そんな音が響き渡る。
「……」
最初はちょっと不快なだけだった。
それなのに。
「痛い!?」
次第にその音が頭の中で動き回り、耐え難い痛みが頭を襲ってきた。
例えるなら……そう、火箸で頭の中をかき回されているような激痛。
「うぅぅ」
立っていることもできず、床に手をつき倒れてしまう。
あぶら汗があふれ出てくる。
「や、やめて」
「……」
「お願い、やめて!」
「……どうします?」
「もう少しだけ続けてくれるかな」
「ええ、分かりましたわ」
そんな!
「お父様」
お願い!
やめさせて!
お願いします!
お願いだから。
ああぁ……。
「……」
「……」
意識が消えてしまった。
異能をその身に浴びることで異能発現につながる。
異能の世界で囁かれているそんな話を信じた父。
その後も、わたしは何度となく異能に晒されることになってしまった。
その大半は、音波を使うこの女性。
あとひとり、20歳くらいの若い男性の異能者がやって来ることもあった。
そんな生活が半年間。
父がわたしの異能発現を諦めるまで続いた。
……。
……。
……。
液体に死骸に異能。
あの15歳の6か月。
もう思い出したくもなかったのに……。
また、父に呼び出されてしまった。
地下室に来るように言われてしまった。
あれを再開!
いや!!
いやだ!!!
あんな事されたくない。
もう、耐えられない。
それなのに……。
それなのに、この身体はいまだに反応してしまう。
父に命令されたら……。
……。
……。
……。
助けて。
助けて!
わたしを助けて、功己!!
……。
……。
でも……。
そんな姿、見られたくない。
知られたくない。
だから……。
だから、せめて。
わたしを見捨てないで!
わたしを嫌わないで!
お願い!!
こんな汚れたわたしだけど……。
こんなわたし……。
……。
……。
……。
******************************
******************************
<『和見幸奈 5、6』の概略>
異能発現のため、父親から様々な苦行を強いられる幸奈。
15歳時、半年の間その苦行に耐えた幸奈だったが、結局異能が発現することはなかった。
そして、20歳になった今。
また父親に呼び出され……。
※ 最後の40行は比較的読みやすい内容です。
※ 気になる方は、そちらを読んでから先にお進みください。
※ 後書きに、前話、今話の内容を簡単に記しておきますので、
※ 苦手な方は、後書きを読んで先に進んでください。
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<和見幸奈視点>
それは、様々な……。
様々な爬虫類の死骸だった。
……。
……。
虫だけでも、どうしようもなく気持ちが悪かったのに。
辛かったのに。
爬虫類の死骸だなんて!
……あの時。
実際にそれを見たあの時。
目に入ったあの瞬間。
頭が真っ白になって。
何も考えられなくなってしまった。
気を失っていたのかもしれない。
……。
……。
でも、父は……そんなわたしの様子など気にする素振りもなかった。
養女が恐ろしい液体の中、真っ青な顔で震えているのに、何も……。
液体の中に追加されたそれら。
虫とは違い、確かな質量をもってわたしに迫ってくる異物。
耐えがたい不快感と絶え間ない嘔吐感。
そんなものに苛まれながらも、わたしは逃げ出すことができなかった。
父の言葉を拒絶することはできなかった。
それでも……。
やはり、慣れとは恐ろしい。
人とは恐ろしい。
何度もそれに浸かっているうちに、麻痺したように嘔吐感は消えていったのだから。
もちろん、不快であることに変わりはなかったのだけれど……。
3度目の変化。
それは浴槽内での変化ではなかった。
「はじめまして幸奈さん」
あの不気味な液体に身体を預けるようになって4か月が経過した頃。
父がある女性を連れて地下室にやって来た。
「こちらの素晴らしい異能の使い手が、異能発現の手助けをしてくれる」
父の傍らにいたのはわたしと同年代に見える細身の女性。
夏だというのに、全身を黒一色で覆っている。
黒のロングスカート、黒のシャツ、手にも黒い手袋。
素肌を見せているのは顔だけ。
まるでわたしを葬送にやってきた死神のような姿……。
対するわたしは、いつものように下着を身に着けているだけ……。
「では、さっそく始めますわ」
「よろしく頼む」
浴槽の前で呆然と佇む私の前に歩み寄って来る彼女。
顔にかかる長く綺麗な黒髪を払いのけた手が私に向けられ。
「憂波!」
彼女のその言葉とともに現れたのは……。
音?
とても小さいけれど……。
耳の中を、頭の中を直接触られているような、そんな音が響き渡る。
「……」
最初はちょっと不快なだけだった。
それなのに。
「痛い!?」
次第にその音が頭の中で動き回り、耐え難い痛みが頭を襲ってきた。
例えるなら……そう、火箸で頭の中をかき回されているような激痛。
「うぅぅ」
立っていることもできず、床に手をつき倒れてしまう。
あぶら汗があふれ出てくる。
「や、やめて」
「……」
「お願い、やめて!」
「……どうします?」
「もう少しだけ続けてくれるかな」
「ええ、分かりましたわ」
そんな!
「お父様」
お願い!
やめさせて!
お願いします!
お願いだから。
ああぁ……。
「……」
「……」
意識が消えてしまった。
異能をその身に浴びることで異能発現につながる。
異能の世界で囁かれているそんな話を信じた父。
その後も、わたしは何度となく異能に晒されることになってしまった。
その大半は、音波を使うこの女性。
あとひとり、20歳くらいの若い男性の異能者がやって来ることもあった。
そんな生活が半年間。
父がわたしの異能発現を諦めるまで続いた。
……。
……。
……。
液体に死骸に異能。
あの15歳の6か月。
もう思い出したくもなかったのに……。
また、父に呼び出されてしまった。
地下室に来るように言われてしまった。
あれを再開!
いや!!
いやだ!!!
あんな事されたくない。
もう、耐えられない。
それなのに……。
それなのに、この身体はいまだに反応してしまう。
父に命令されたら……。
……。
……。
……。
助けて。
助けて!
わたしを助けて、功己!!
……。
……。
でも……。
そんな姿、見られたくない。
知られたくない。
だから……。
だから、せめて。
わたしを見捨てないで!
わたしを嫌わないで!
お願い!!
こんな汚れたわたしだけど……。
こんなわたし……。
……。
……。
……。
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<『和見幸奈 5、6』の概略>
異能発現のため、父親から様々な苦行を強いられる幸奈。
15歳時、半年の間その苦行に耐えた幸奈だったが、結局異能が発現することはなかった。
そして、20歳になった今。
また父親に呼び出され……。
※ 最後の40行は比較的読みやすい内容です。
※ 気になる方は、そちらを読んでから先にお進みください。
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