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第4章 異能編

能力開発研究所 9

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「君は……」

「またまたぁ、そんな怖い顔しないでほしいなぁ」

「……君はあの日から、ずっと監視していたのか?」

「まさか! ぼくもそこまで暇じゃないですよ。それに、有馬さんはとっても鋭いので、ぼくに気付いちゃうでしょ」

「……」

「でも、この前みたいに街で見かけたら、つい様子を見たくなるんですよねぇ」

「……随分と好かれたものだな」

「はは、そうですよ。ぼくは有馬さんにはとっても興味がありますから」

 こんな気味の悪い少年に興味を持たれるとは……。
 とてもじゃないが笑えない。

「それで、君は何者なんだ?」

「だから、13歳の少年ですって。有馬さんと仲良くなりたい少年です。あっ、壬生という名前なので憶えていてくださいね」

 13歳の少年……。

 確かに、ステータスには13歳と表示されている。
 だが、この圧力、この雰囲気。
 そして、この異能。

「……」

 13歳じゃないな。
 異能を調べ終えた今なら、理解できるぞ。


  壬生 伊織(ミブ イオリ)

レベル 3

13歳 男 人間 

HP  105
SP  291
STR 118
AGI 128
INT 457

<異能>
 揺魂、魂移、念動力



 日本では、これまで数人を鑑定してきたが初めて見るレベル3の異能者だ。
 13歳でレベル3というだけでも驚きなのに。
 ステータスの数値がそれ以上に凄まじい。

「……」

 レベル3だから、ある程度高い数値なのは理解できる。
 が、異能に関係するSP(異能力・異能力量)とINT(知能・知性)が異常に高い。
 高すぎる。

 信じがたいステータスだ。
 今の俺のステータスと比べれば、その異常さがはっきり分かるというもの。



  有馬 功己(アリマ コウキ)

レベル 5

20歳 男 人間

HP  165
MP  218
STR 262
AGI 182
INT 301



 レベルが2つ上の俺よりも、SP(MP)とINTがはるかに高い数値になっている。
 本当に信じがたい。

「……」

 これだけでも充分目を見張る鑑定結果なんだ。
 だというのに……。

 異能が尋常じゃない。


<異能>
 揺魂、魂移、念動力


 通常、異能者に備わっている異能は1つ。
 複数の異能は持てないはず。

 その異能を、壬生という名の少年は3つも持っている。

 異能を2つ持つ者なんて私は見たことがない。
 古野白さんは以前そう言ってたんだぞ。

「……」

 さらにだ。
 異能の内容がまた……。


「有馬さん、難しい顔して、どうかしました?」

「……読めばいい」

「だから、読めませんって」

 実際はどうだか分からない。
 ただ、そういう異能は持っていないか?

「で、何を考えているんですか?」

「君が普通の少年じゃないと考えていただけだ」

「ぼくは、ただの13歳の中学生ですよ」

「……ただの少年は消えたりしない」

「ああ、そうかも」

 どこまでも余裕を崩さない。
 それどころか、人を食ったような、小馬鹿にしたような表情を見せてくる。

 威圧感と不快感を同時に与えられているようだ。

「……ただの少年は異能など持っていない」

「うん、うん、なるほど」

「何より、複数の異能を持っているわけがない! そうだろ、壬生伊織君」

 俺がその事実を口にした瞬間。
 壬生少年の目から笑みが消え。
 余裕が消え。

 空気が変わる。
 研究所内の空気が変わっていく。

「……」

 重さを増した空気が体にのしかかり、皮膚にはひりつくようなプレッシャーが。
 やはり普通じゃない。
 想像以上……。


「……どうして?」

「何がかな?」

「どうして知っている?」

「さあ」

 さらに増すプレッシャー。
 凍りつく空気。

「……」 

 要らぬ一言だったな。
 不要な刺激を与え、情報まで。

 そう、自ら手の内を明かす必要はなかった。

「異能と名前を……」

「……」

 未熟にも、壬生少年の言動に影響を受けてしまったか。

 が、今さらだな。
 口にしたものは仕方ない。

「読めるのか?」

「それは、君だろ」

「……」

「……」

 瞳から光を消した壬生少年の威圧感は凄まじい。
 もうオルセーどころじゃないぞ。
 ダブルヘッド、いや、トリプルヘッドの放つ存在感にも負けていない。

「……」

「……」

 沈黙の中、プレッシャーが増していく。
 それが突然。

「!?」

 消し飛んだ!

「くく、くくく、ははは……」



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