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第4章 異能編

能力開発研究所 8

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 この少年、心が読めるのか?
 そんな異能が?

「心は読めませんよ」

 また読んだ?

「読んでませんって。有馬さんの顔に出ているだけですよ」

「……」

「って、うそ、うそ。嘘ですよぉ。皆さんぼくを見ると幽霊と間違えるんで。有馬さんもそうかなぁって、思っただけです」

 何だ、この少年。
 ずっと口を閉ざしていたのに、一度開くと人を食ったようなことばかり。

「有馬さん、そんな顔しないでくださいよぉ」

 それに、どうして俺の名前を?

「有馬さんと呼ばれているのを聞いたんです」

 やっぱり、読んでるぞ!

「だから、顔に出てるんですって」

「……」

「また、そんな怖い顔してぇ。ぼくの方は、有馬さんと仲良くしようと思ってるのになぁ」

 仲良く?

「それは……どういうことかな?」

「言葉通りです。ぼくは有馬さんと仲良くなりたいんですよ」

「君は橘の仲間じゃ?」

「うーん、仲間ではないですねぇ。ぼくがちょっと面倒を見ているだけです」

 面倒を見ているだと。
 橘より立場が上なのか?
 こんな少年が。

「……」

 いや、違うな。

 確かに、外見は幼いとさえ思える容貌をしている。
 けど、この少年の持つ雰囲気は……。

 透けていた時は分からなかったが、今ならはっきりと分かる。
 この雰囲気は、とてもじゃないが少年の持つものじゃない。

 それどころか……。

 とんでもない圧力を感じる。
 あどけない少年が笑顔で話しているだけなのに。

「……」

 日本では感じたことがないような、重く鈍い圧力。
 あのオルセー以上の圧力。

 いったい、どういうことなんだ?

「そんな化け物を見るような目で見ないでくださいよぉ。心外だなぁ。ただの13歳の子供ですよ、ぼくは」

 そう、その通り。
 鑑定の表示でも、13歳になっている。

「……」

 色々と恐ろしい点はあるものの、年齢は確かに13歳なんだ。

「化け物といえば、有馬さんでしょ」

「……どういう意味かな?」

「だって、異能者じゃないのに、あの動きは異常ですよ。結界は2度とも容易く破壊するし、銃弾を避けて、転移の異能者である橘も簡単に倒して。こんなの普通の人間にできるわけがないじゃないですか。有馬さんこそ何者なんです?」

「……ただの20歳の大学生だ」

「ただの……ははは、面白いなぁ。有馬さんは、ほんと面白い人ですよ」

 この圧力。
 この余裕。

「……」

 これはもう、13歳だと思ってはいけない。

「やっぱりなぁ。最初からこの人は違うって思ってたんですよねぇ」

「最初とは、あの廃墟ビルの屋上のことかな?」

「ん? 違いますよ」

 違う?

「廃墟ビル以前に会っていると?」

「そうですよぉ」

「記憶にないんだが……」

「ええ~、ずっと前に会ってるじゃないですかぁ」

「……」

 どこでだ?

「公園ですよ、公園」

「……」

 公園?

「尾行していた時かな?」

「尾行って、いやだなぁ。あの時は、有馬さんの様子を見ていただけですって」

 それは尾行じゃないのか。

「それに、あれはビルの後じゃないですか。ぼくが有馬さんに初めて会ったのは、もっとずぅ~と前です」

 確かに。
 尾行していた少年に話しかけたのは、廃墟ビルの一件の後だ。

「ここまで言っても分からないって寂しいなぁ。ぼくは悲しいです」

 そう言って、本当に悲しそうな顔を見せる。

「……」

 駄目だ。
 容姿と喋り方に騙されそうになるが、この少年はとんでもない力を持っている異能者なんだ。

 気を緩めず、もっと慎重に!

「いつ、どこの公園で会ったのかな?」

「さっき、ぼくは言いましたよね。結界を2度破棄するのを見たって」

「……」

「はぁ~、まだ分からないんですか。あの夜の公園ですよ」

 公園で夜?
 いつのことを言ってる?

「そこで眠っているお姉さんと一緒に結界に閉じ込められたあの夜です。有馬さんが結界を破壊した後に会いましたよね」

 古野白さんと結界……。
 あの時に?

「「お兄さん、そこのお姉さん大丈夫? 救急車呼ぼうか?」って声かけたでしょ」

「……」

「まさか、それも覚えてないんですか?」

「……」

 いや……。

 思い出した。
 思い出したぞ!

 結界から古野白さんを助け出し、ベンチに座っていた時に声をかけてきた少年。
 目の前の少年が、あの時の少年なのか!

 そう言えば、そうだった。
 あの夜も少年の気配を感じとることができなかったんだ。

「……」

「思い出してくれたみたいですね」






*************************


※ 少年の初登場は、第2章『結界 3』、『古野白楓季 1』になります。
※ オルセーは夕連亭で戦った魔法剣士です。 
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