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第4章 異能編

廃墟ビル 5

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<古野白楓季視点>



「有馬くん! よかった!」

 思わず大きな声が出そうになるのを抑え、小声で話す。

「どうかしたんですか?」

 その声に、少しだけ気が緩みそうになる。
 今は緩んでいる場合じゃないのに。

「急いでいるので手短に話すわね」

 ということで、さっそく里村君の件をお願いしたところ……。

 まさかの展開。
 既に里村君を保護しているなんて!

 でも、偶然って?
 どういうことなのか、全く理解できないわ。

「……」

 あの有馬君だものね。
 不思議ではない、か。

 それにそう、ありがたいことなのだから。

 なんて考えていると。

「助けは要りますか?」

 普通人なのに異能者に手を差し伸べてくれる。
 相変わらず、お人好しね。

 いつも頼っている私が言えることじゃないけど。
 でも、今日は。

「必要ないわ。それより、里村君をお願い」

「了解しました。それで、今は駅裏の廃墟ビルにいるんですよね?」

「っ? どうしてそれを? あっ!!」

 通路の前方。
 その角から、あいつらが現れた!

 でも、2人だけ?
 もうひとりは?

 後ろ!?

 気づいた時には、炎の玉が目の前に迫って! 

「くっ!」

 反射的に通路に身を投げる。
 炎は私の髪を数本焼いて頭上を通過。

「古野白君!」

 廊下で一回転して、すぐさま体勢を整える。

「大丈夫です。こっちは任せてください」

「……頼むぞ!」

「りょーかい」

 今のは危なかった。
 あと一瞬でも遅れていたら、顔をやられていたに違いない。

 通路に落ちているのは、焼けた数本の髪と携帯電話。

「……」

 安い代償じゃない!
 だから、次はあなたの番よ。

「よく避けたなぁ」

「何てことないわ」

 若い男ね。
 私と同年代かもしれない。

「へっ、いつまで大口叩いていられるかな?」

「あなたの前では、ずっとよ!」

「ぬかせ! 炎玉!」

 炎の玉が発動。

 それ、もう何度も見ているのよ。
 対処できるに決まってるでしょ。

「炎霧!」

 まずは炎を顕現。
 その炎を目の前で霧のように広げ、敵の炎を包み込み。

「消去!」

 そのまま消し去ってやる。

「なっ!?」

 操炎の異能も使い方次第。
 単純に炎を放つばかりが能じゃないの。

「なっ!」

 驚き立ち尽くしている男に接近。

「くそっ!」

 男が右手、左手と闇雲に突き出してくる。
 遅いし力もない攻撃だ。

「あなた、異能を使うだけなのね」

「何だと!」

 突き出された男の左拳を左に避けることで躱し、左足に力を入れる。
 そのまま左足を軸に横回転。
 勢いをつけ。

 右足の後ろまわし蹴り!

「ガッ!」

 頭部に入った。
 完璧だ。

「……」

 炎の異能使いが、膝から廊下に崩れ落ちる。
 ピクリとも動かない。

「ねっ、ずっとだったでしょ」




「さすが古野白。やるなぁ」

 武上君が歩み寄って来た。
 鷹郷さんは見当たらない。

「ありがと。でも、相手がだらしなかっただけよ。で、そっちは?」

「……逃げられたな」

「また?」

「……」

 武上君だけならまだしも、鷹郷さんもいたのに。

「消えるようにいなくなったんだ。とんでもない逃げ足だぞ、あいつら」

「……それで、鷹郷さんは?」

「その先で何か調べてる」

「そうなの? こっちも、この男を尋問したいんだけど」

「じゃあ、呼んでくらぁ」


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