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第4章 異能編
廃墟ビル 2
しおりを挟む「ツーツーツー」
「……」
古野白さんの声が途切れ、電子音だけが響いてくる。
嫌な予感が当たったというか、予想通りというか。
これはもう……。
異世界露見的には近づいちゃいけない状況。
距離を取るべき案件なんだろうな。
とはいえ、ここで退き返すという選択肢は俺にはない。
廃ビルに行くという一択のみ。
ただし、やみくもに動くつもりもない。
廃ビルで、古野白さんが危ないようなら手を貸す。
問題がないなら、隠れて様子を見るだけ。
この方針で進めるつもりだ。
まっ、里村が敵の手に落ちていない現状では、そこまで大きな問題もないはず。
そう思いたいものだが、電話の切れ方が気になってしまう。
「有馬くん?」
ずっと、こちらの様子を窺っていた里村。
気になるのも当然だな。
「何の話だったの?」
どう考えても、廃墟ビルは安全じゃない。
里村は連れて行かない方がいいよなぁ。
「何の電話だったの?」
「……廃ビルに来る必要はない、と」
「それ、嘘だよね」
「……」
「嘘だよね」
「……悪い」
「もう! ボクを連れて行きたくない気持ちは分かるけど、今さらだよ。何があっても驚かないからさ、一緒に行ってもいいでしょ」
「……」
「さっきは良いって言ったよね」
「まあ、な」
「じゃあ!」
仕方ないか。
「……分かった。けど、約束は守れよ」
「もちろんだよ。ありがと、有馬くん」
**************
<古野白楓季視点>
「鷹郷さん、あいつら本当にこのビルに現れるんですか?」
「そういう情報が入っている」
「そうでしたね。でも、私たちふたりで……」
今回は急な出動だったので、人数を集めることができなかった。
だから、鷹郷さんとふたりで事に当たっている。
「心配か?」
「いえ……」
そうは答えたものの。
「……」
鷹郷さんの力は十分理解している。
対異能における経験も能力も疑いようがない。
それでも、敵が何人いるか分からない現状。
あの橘もいるかもしれない状況。
ふたりでは心許ない、そんな気がしてしまう。
「心配は無用だ。武上も呼んだからな」
「武上君が! 連絡がついたんですか?」
「ああ、さっきまでは着信に気付かなかったそうだ」
「……」
武上君、何やってるのよ。
何のために携帯電話が支給されていると思ってるの!
本当にいい加減なんだから。
「すぐ来るそうだ。3人いれば安心だろ」
「それは、まあ……」
2人と3人では大違い。
これで少し気持ちが楽になった。
「だから古野白君、もうしばらく待機するぞ」
「はい、分かりました」
鷹郷さんとふたり、廃墟ビルを監視できる場所に姿を隠して敵が現れるのを待つ。
敵より先に、武上君に到着してもらわないと困るのだけれど。
「古野白君には苦労を掛けるな」
「いえ……」
最近は私が敵の矢面に立つことが多い。
鷹郷さんは、それを気にしてくれているのだと思う。
でも、全ては私が望んだこと。
後悔はない。
「鷹郷さんには、いつも助けてもらっていますから」
「……」
私がこうしていられるのは鷹郷さんのおかげ。
その思いに偽りはない。
ただ、このところの騒動では……。
鷹郷さんではなく、彼の力ばかり借りているような気がする。
彼の助けなかったら私は今頃どうなっていたことか?
あの結界に捕らわれて……。
想像するだけで、気分が悪くなるわね。
まあ、でも今は。
「集中しましょうか」
「そうだな」
そんな少し居心地の悪い会話をしながら待つこと数分。
「よお、お待たせ」
武上君が到着した。
「遅いわよ」
「そっかぁ? 敵さん、まだ現れてないんだろ」
「そうだけど」
「なら、問題ねえな」
相変わらず、緊張感がない。
もっとしっかりしてほしいのに!
「オレに任せとけ」
「……」
これでいて実戦では頼りになるのだから、あまり文句も言えないのよ。
ほんと、彼の身体強化は凄いから。
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