261 / 1,294
第4章 異能編
再びの…… 3
しおりを挟む
魔落に来て8日が経った。
今回は俺のレベルも上がっているし、何より一度経験している魔落だ。
ほとんど問題なく過ごすことができている。
魔物相手に大きな怪我をすることもない。
食料も休憩所も問題なし。
脱出口を探すというのも、ここで数日過ごすための口実。
セレス様相手の名目に過ぎない。
目的は当然、セレス様の治療とセレス様を助けるための他の手段を探すことだ。
そんなわけで、魔落に来て以来ずっとセレス様の治療を続けている。
治癒魔法、その応用、気功を使った治療など。
考えつく術を全て試してみた。
たっぷりと時間もかけている。
けれど、その成果が分からないんだ。
セレス様の体内をめぐる魔力も気も問題はない。
鑑定で調べてみても何も異状は見つからない。
でもそれは、初日からずっとそう。
これでは、完治できたかどうかを判別することなどできるわけもない。
「……」
これ以上、ここで治療を続けても結果は変わらないんじゃないか。
今では半ば以上そう思っている。
「……」
もちろん、治療以外の他の手段もいろいろと考えてみた。
が、現状これといった解決策は見出せていない。
こうなるともう……。
トトメリウス様の知恵を借りるしかないのか?
「……」
その思いが強くなり。
結局、あの神域中枢を訪れることを決意したんだ。
そして今。
うっすらと霞がかった空間。
トトメリウス様の神域空間に俺とセレス様は足を踏み入れた。
「コーキさん、ここは?」
「ええ、神域です」
セレス様には、ここがトトメリウス様の神域だと説明済み。
なぜ俺が知っているんだ、もっと早く来れば良かったんじゃないか、なんていう疑問をセレス様が抱かないように、適当に話は作っている。
いい加減な作り話ではあるが、それなりに信じてくれたようだ。
「……」
魔落に来てから、俺は嘘ばかりついているな。
おかげで嘘が上手くなってしまった。
まったく嬉しくないよ。
嬉しくないし、申し訳ない。
セレス様、こんな嘘は今だけですから、どうか許してください。
「大丈夫なのでしょうか?」
「ええ、問題ないはずです」
とはいえ、トトメリウス様の対応は読めない。
今回が2回目だと認識してくれているのかどうなのか?
時を司っているのだから、全て了解済み。
時間遡行など関係なく、トトメリウス様は俺のことを覚えている。
そう思いたいが……。
もし覚えていなかったら。
俺はどういう態度をとればいいんだ?
「……」
今さらながら不安になってくる。
まあでも……。
どちらにしても、目的に変わりはない。
お願いするだけだ。
「……」
ゴーレムが現れないな。
二度目だからか?
前回俺が倒したからなのか?
「……」
そもそも、トトメリウス様は?
現れてくれるんだろうな。
まさか、姿を見せないなんてことは……。
「コーキさん?」
セレス様の表情が曇っている。
こんな謎空間にずっと立っているだけなんだ。
当然か。
「もう少し待ってください」
「……はい」
「……」
やはりゴーレムは現れない、か。
それなら。
(トトメリウス様)
心の中で呼びかけてみる。
(トトメリウス様。 トトメリウス様!)
すると……。
いきなり空気が変わった。
その威圧感に身体が重く感じられる、が……。
あの空気だ。
「コーキさん、これは!?」
曇っていたセレス様の顔色が変化している。
「大丈夫です。任せてください」
と、目の前にはあの異形。
トトメリウス様だ!
今回は俺のレベルも上がっているし、何より一度経験している魔落だ。
ほとんど問題なく過ごすことができている。
魔物相手に大きな怪我をすることもない。
食料も休憩所も問題なし。
脱出口を探すというのも、ここで数日過ごすための口実。
セレス様相手の名目に過ぎない。
目的は当然、セレス様の治療とセレス様を助けるための他の手段を探すことだ。
そんなわけで、魔落に来て以来ずっとセレス様の治療を続けている。
治癒魔法、その応用、気功を使った治療など。
考えつく術を全て試してみた。
たっぷりと時間もかけている。
けれど、その成果が分からないんだ。
セレス様の体内をめぐる魔力も気も問題はない。
鑑定で調べてみても何も異状は見つからない。
でもそれは、初日からずっとそう。
これでは、完治できたかどうかを判別することなどできるわけもない。
「……」
これ以上、ここで治療を続けても結果は変わらないんじゃないか。
今では半ば以上そう思っている。
「……」
もちろん、治療以外の他の手段もいろいろと考えてみた。
が、現状これといった解決策は見出せていない。
こうなるともう……。
トトメリウス様の知恵を借りるしかないのか?
「……」
その思いが強くなり。
結局、あの神域中枢を訪れることを決意したんだ。
そして今。
うっすらと霞がかった空間。
トトメリウス様の神域空間に俺とセレス様は足を踏み入れた。
「コーキさん、ここは?」
「ええ、神域です」
セレス様には、ここがトトメリウス様の神域だと説明済み。
なぜ俺が知っているんだ、もっと早く来れば良かったんじゃないか、なんていう疑問をセレス様が抱かないように、適当に話は作っている。
いい加減な作り話ではあるが、それなりに信じてくれたようだ。
「……」
魔落に来てから、俺は嘘ばかりついているな。
おかげで嘘が上手くなってしまった。
まったく嬉しくないよ。
嬉しくないし、申し訳ない。
セレス様、こんな嘘は今だけですから、どうか許してください。
「大丈夫なのでしょうか?」
「ええ、問題ないはずです」
とはいえ、トトメリウス様の対応は読めない。
今回が2回目だと認識してくれているのかどうなのか?
時を司っているのだから、全て了解済み。
時間遡行など関係なく、トトメリウス様は俺のことを覚えている。
そう思いたいが……。
もし覚えていなかったら。
俺はどういう態度をとればいいんだ?
「……」
今さらながら不安になってくる。
まあでも……。
どちらにしても、目的に変わりはない。
お願いするだけだ。
「……」
ゴーレムが現れないな。
二度目だからか?
前回俺が倒したからなのか?
「……」
そもそも、トトメリウス様は?
現れてくれるんだろうな。
まさか、姿を見せないなんてことは……。
「コーキさん?」
セレス様の表情が曇っている。
こんな謎空間にずっと立っているだけなんだ。
当然か。
「もう少し待ってください」
「……はい」
「……」
やはりゴーレムは現れない、か。
それなら。
(トトメリウス様)
心の中で呼びかけてみる。
(トトメリウス様。 トトメリウス様!)
すると……。
いきなり空気が変わった。
その威圧感に身体が重く感じられる、が……。
あの空気だ。
「コーキさん、これは!?」
曇っていたセレス様の顔色が変化している。
「大丈夫です。任せてください」
と、目の前にはあの異形。
トトメリウス様だ!
33
お気に入りに追加
646
あなたにおすすめの小説

異世界召喚?やっと社畜から抜け出せる!
アルテミス
ファンタジー
第13回ファンタジー大賞に応募しました。応援してもらえると嬉しいです。
->最終選考まで残ったようですが、奨励賞止まりだったようです。応援ありがとうございました!
ーーーー
ヤンキーが勇者として召喚された。
社畜歴十五年のベテラン社畜の俺は、世界に巻き込まれてしまう。
巻き込まれたので女神様の加護はないし、チートもらった訳でもない。幸い召喚の担当をした公爵様が俺の生活の面倒を見てくれるらしいけどね。
そんな俺が異世界で女神様と崇められている”下級神”より上位の"創造神"から加護を与えられる話。
ほのぼのライフを目指してます。
設定も決めずに書き始めたのでブレブレです。気楽〜に読んでください。
6/20-22HOT1位、ファンタジー1位頂きました。有難うございます。

玲子さんは自重しない~これもある種の異世界転生~
やみのよからす
ファンタジー
病院で病死したはずの月島玲子二十五歳大学研究職。目を覚ますと、そこに広がるは広大な森林原野、後ろに控えるは赤いドラゴン(ニヤニヤ)、そんな自分は十歳の体に(材料が足りませんでした?!)。
時は、自分が死んでからなんと三千万年。舞台は太陽系から離れて二百二十五光年の一惑星。新しく作られた超科学なミラクルボディーに生前の記憶を再生され、地球で言うところの中世後半くらいの王国で生きていくことになりました。
べつに、言ってはいけないこと、やってはいけないことは決まっていません。ドラゴンからは、好きに生きて良いよとお墨付き。実現するのは、はたは理想の社会かデストピアか?。
月島玲子、自重はしません!。…とは思いつつ、小市民な私では、そんな世界でも暮らしていく内に周囲にいろいろ絆されていくわけで。スーパー玲子の明日はどっちだ?
カクヨムにて一週間ほど先行投稿しています。
書き溜めは100話越えてます…

異世界で農業をやろうとしたら雪山に放り出されました。
マーチ・メイ
ファンタジー
異世界召喚に巻き込まれたサラリーマンが異世界でスローライフ。
女神からアイテム貰って意気揚々と行った先はまさかの雪山でした。
※当分主人公以外人は出てきません。3か月は確実に出てきません。
修行パートや縛りゲーが好きな方向けです。湿度や温度管理、土のphや連作、肥料までは加味しません。
雪山設定なので害虫も病気もありません。遺伝子組み換えなんかも出てきません。完璧にご都合主義です。魔法チート有りで本格的な農業ではありません。
更新も不定期になります。
※小説家になろうと同じ内容を公開してます。
週末にまとめて更新致します。

【改訂版アップ】10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~
ばいむ
ファンタジー
10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~
大筋は変わっていませんが、内容を見直したバージョンを追加でアップしています。単なる自己満足の書き直しですのでオリジナルを読んでいる人は見直さなくてもよいかと思います。主な変更点は以下の通りです。
話数を半分以下に統合。このため1話辺りの文字数が倍増しています。
説明口調から対話形式を増加。
伏線を考えていたが使用しなかった内容について削除。(龍、人種など)
別視点内容の追加。
剣と魔法の世界であるライハンドリア・・・。魔獣と言われるモンスターがおり、剣と魔法でそれを倒す冒険者と言われる人達がいる世界。
高校の休み時間に突然その世界に行くことになってしまった。この世界での生活は10日間と言われ、混乱しながらも楽しむことにしたが、なぜか戻ることができなかった。
特殊な能力を授かるわけでもなく、生きるための力をつけるには自ら鍛錬しなければならなかった。魔獣を狩り、いろいろな遺跡を訪ね、いろいろな人と出会った。何度か死にそうになったこともあったが、多くの人に助けられながらも少しずつ成長し、なんとか生き抜いた。
冒険をともにするのは同じく異世界に転移してきた女性・ジェニファー。彼女と出会い、ともに生き抜き、そして別れることとなった。
2021/06/27 無事に完結しました。
2021/09/10 後日談の追加を開始
2022/02/18 後日談完結しました。
2025/03/23 自己満足の改訂版をアップしました。
英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜
駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。
しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった───
そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。
前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける!
完結まで毎日投稿!
迷い人 ~異世界で成り上がる。大器晩成型とは知らずに無難な商人になっちゃった。~
飛燕 つばさ
ファンタジー
孤独な中年、坂本零。ある日、彼は目を覚ますと、まったく知らない異世界に立っていた。彼は現地の兵士たちに捕まり、不審人物とされて牢獄に投獄されてしまう。
彼は異世界から迷い込んだ『迷い人』と呼ばれる存在だと告げられる。その『迷い人』には、世界を救う勇者としての可能性も、世界を滅ぼす魔王としての可能性も秘められているそうだ。しかし、零は自分がそんな使命を担う存在だと受け入れることができなかった。
独房から零を救ったのは、昔この世界を救った勇者の末裔である老婆だった。老婆は零の力を探るが、彼は戦闘や魔法に関する特別な力を持っていなかった。零はそのことに絶望するが、自身の日本での知識を駆使し、『商人』として新たな一歩を踏み出す決意をする…。
この物語は、異世界に迷い込んだ日本のサラリーマンが主人公です。彼は潜在的に秘められた能力に気づかずに、無難な商人を選びます。次々に目覚める力でこの世界に起こる問題を解決していく姿を描いていきます。
※当作品は、過去に私が創作した作品『異世界で商人になっちゃった。』を一から徹底的に文章校正し、新たな作品として再構築したものです。文章表現だけでなく、ストーリー展開の修正や、新ストーリーの追加、新キャラクターの登場など、変更点が多くございます。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています

爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。
秋田ノ介
ファンタジー
88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。
異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。
その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。
飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。
完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる