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第3章 救出編

どうして……

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 赤?
 鮮やかな赤?

「苦しい……」

「ゴホッ、ゴホッ!」

 大量の血!?
 喀血!?

 その事実を前に俺は、俺は……。

「コーキ、さ……苦し、い」

 セレス様、倒れて!
 まずい!
 呆けている場合じゃない。

「ゴホォ!!」

 セレス様を抱え。
 俺の膝に頭をのせて、気道を確保。

「セレス様、待ってください。今治癒魔法を使いますから!」

 急げ!
 すぐだ、今すぐだ!

「ゴホッ、ゴホッ」

 溢れ出る大量の喀血に手が震える。足が震える。
 急いで治癒魔法を発動しようとするが、ままならない。

 でも、なんとか。

「セレス様、治癒魔法です。これで、楽になります! 楽になりますから!」

「コ……キ、さん」

「セレス様!」

「はぁ、はぁ……くるし……」

「大丈夫です、頑張って!」

「ん、ん」

「もうすぐ効きますからね、セレス様!」

 頼む!
 効いてくれ!
 頼む!

「あり、がと」

「大丈夫、大丈夫ですよ!」

「ゴホッ、ゴホッ……く、るしい」

「セレス様、セレス様!」

「ゴホッ」

「治癒魔法使ってますから。大丈夫ですから!」

 効いてくれよ!

「……ゴホゥ!」

「セレス様!」

「い、きが……」

 息が!
 そんな!

「くる、し……」

「っ! 治癒魔法が効きます!」

「ゴホッ!」

「もうすぐ効きますから!」

「ゴホッ……」

「セレス様!」

「……」

 目が虚ろに! 

「ゴホッ、ゴホゥ!!」

 地面が真っ赤に!

 まずい、まずい!

「コー……さん、もう……」

「セレス様!?」

「……だめ、か、も」

「な、何を言ってるんですか! 大丈夫ですから!」

 治癒魔法を使い続ける。
 全力で!
 全魔力で!

「……あ、りがと……」

「セレス様!?」

「ゴホッ、ゴホッ!」

「セレス様、セレス!」

「オルド……いきた……」

「行きましょう、オルドウに!」

「いっしょ……あるき、た、かっ」

「歩けますよ。一緒に歩くんですよ!」

 治癒魔法、俺の魔力全てやるから、何とかしてくれ!

「……う、れし、い」

 何とかしてくれよ!
 誰か、何か!!

「はあ、はあ……」

「セレス!」

「たのし、み……」

 何だよ。
 何だよ、その笑顔は。

「セレス!」

 神様!
 トトメリウス様!

 見てますよね。
 見てるんだろ!

 何とかしてくれよ!

「ゴホゥッ!!」

 真っ赤に!
 真っ赤に!!

「セレス!!」

 何とかしろ。
 助けてくれよ。

 加護だってあるんだろ。

 何とか!

「ゴボッ……」

 くそっ!

「一緒に行こう。ほら、そこがオルドウだから。なぁ、セレス!」

「う、ん……」

「新しい人生が待ってるんだ!」

「……ん……」

「セレス!」

 駄目だ。
 いやだ。
 やめてくれ!

「……」

 お願いだ!

 こんなこと。
 こんなこと!!

「泣か、な……」

 セレスの美しい指が俺の顔に伸び。
 頬に触れ。

「……ない、で……」

 頬に触れ。

 頬に触れ。

 そして……。

 ……。

 ……。

 地に……落ちた。

 ……。

 ……。

「セレス?」

「……」

「セレス??」

「……」

「セレス、セレス!!」

「……」

「やめてくれ!」

「……」

「冗談はやめてくれよ!」

「……」

「そんな、セレス! 嘘だろ? 嘘だよな?」

「……」

「目を開けてくれ!」

「……」

「笑ってくれよ!!」

「……」

「嘘だ……」

「……」

「嘘だぁぁ!!!」

「……」

「セレス……」

「……」

「ここまで来ただろ……」

「……」

「ふたりで、ここまで……」

「……」

「どうして……」

「……」

「どうしてぇぇ!!!」

「……」

「……」

「……」

「ああぁぁ……」

「……」

「ああぁぁぁぁ!!」

「ああっ、ああっ!!」

「あぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「……」

「ぁぁぁぁぁ……」

「……」

「……」

「……」




 ……。

 ……。

 ……。

 ……。

 ……。




 ただ。

 ただ……。

 セレスは眼を閉じたまま。

 ……。

 ……。

 ……。

 もう……。

 その美しい瞳を見せてくれることはなかった。








 第3章 完


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