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第3章 救出編
魔落 19
しおりを挟む「ふぅ……」
今夜の野営場所である横穴の中。
上手く寝付くことができず、何度目かの寝返りをうつ。
背中に感じる砂地も、いつも以上に硬い。
目が冴えてしまう。
「……」
気持ちが晴れないからなのか。
眠れそうにないな。
ゆっくりと身を起こし、壁に背を預ける。
傍らには、規則正しい寝息をたてているセレス様。
穏やかな寝顔。
良かった。
今夜はゆっくり休めているようだ。
毎日大変なのだから、睡眠くらいはしっかりとってもらいたいからな。
「……」
ずっと気丈に振る舞っていたセレス様。
昨日は珍しく弱音を吐いていたな。
これまでは稀に表情に出ることはあっても、言葉にすることはなかったのに。
それだけ、まいっているということだ。
そりゃ、そうだよな。
12日もこんな所で探索ばかりしているんだから。
泣き言の1つや2つ、口から出るのも当然だ。
普通の貴族女性なら、とっくに心が折れているのではないかな。
セレス様は本当によく頑張っているよ。
結局昨日も、その後は元気な姿を見せてくれたから。
そんなセレス様を励ましている俺だけど……。
この火傷痕、残り少ない回復薬、いまだ見つからない脱出への手掛かり。
はぁぁ。
気分も重くなるというものだ。
「……」
まあ。
それでも、まだ切り札は残っている。
最悪の状況というわけでもない。
セレス様の方が俺の何倍も不安なはずなんだ。
そんなセレス様が前を向いているというのに。
俺が溜息ついている場合じゃないよな。
よーし!
切り替えよう。
もっとポジティブに。
そうだ、ちょうど、ポジティブな材料があった。
それは何かというと、レベル。
ここに来る前はレベル2だったものが、地下大空洞内での連日の戦闘のおかげで2つもレベルが上がり、今はレベル4になっている。
レベル4になったことによる各種ステータスの上昇はありがたい。
これで、戦闘も若干楽になるだろう。
けれど、今回はそれよりもっと素晴らしい恩恵があった。
なんと、新たなギフトとしてアイテム収納が手に入ったんだ!
アイテム収納とは、目に見えない謎の空間にアイテムを収納できるギフト。
ゲームなんかでよく見かける非常に使い勝手の良いギフトだ。
今のような状況では、これは本当に助かる!
非常にありがたい。
とはいえ、このアイテム収納にも制約がある。
収納できる種類は5種類で、1種類につき10個までという制限だ。
それでも、頭で念じるだけでアイテムの出し入れが可能。
収納中は時が止まるという機能までついたこのアイテム収納、俺のような冒険者にとっては有用なことこの上ない。
そして、この地下大空洞内においては、食糧の保存という点において遺憾なくその性能を発揮してくれることだろう。大空洞を生き抜く上で非常に有益なギフトだ。
ちなみに、ステータス画面で見た今のアイテム収納状況はというと。
<アイテム>
・ショルダーバッグ
・イビルリザードの背肉 3
・イビルリザードの腹肉 2
・イビルリザードの腿肉 2
・イビルエッグの腹肉 1
となっている。
ショルダーバッグの中には色々な物が入っているが、それも含めてショルダーバッグとして保存できるみたいだ。
イビルリザードとイビルエッグは、それぞれあの蜥蜴魔物と蛙魔物の名称らしい。
リザードは理解できるんだけど、蛙がなぜエッグなのかは意味が分からない。
分からないが、そう表示されるのだから、そういうものだと受け入れるしかないよなぁ。
ということで、レベルアップで手に入れたこのアイテム収納。
これにより今後の探索はかなり楽になるはずだ。
非常にポジティブな材料だな。
「んっ、んん……。あれ、コーキさん?」
目を覚ましたのか?
寝惚け眼でこちらを見つめてくるセレス様。
「どうしました?」
「え? どうもしま、せん……」
と言って、目を閉じてしまった。
「……」
まあ、まだ深夜だ。
ゆっくり眠ってくれたらいい。
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