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第3章 救出編

魔落 10

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 セレスティーヌ様と共に、必ずここを脱出する。
 そうは言ってもだ。

 この地下空洞内の魔物は、弱くはない。
 セレスティーヌ様を護りながらそんな魔物たちと戦い、ここを脱出する。

 ……。

 もっと、しっかりしないと駄目だろうな。
 大怪我を負ったり、魔力を切らしそうになったりのこんな戦い方では、この先どうなることか。

 今顧みると反省点がいくつも思い浮かんでくる。
 戦い方がなってない、そう思わずにはいられない。

 はぁ。

 どうやら、自分の能力を過大評価していたみたいだ。
 ここ最近の戦いで自惚れていた。

 このままでは、いつか大きな失敗をするかもしれない。
 もっと慎重に冷静に事を進めていかないと。

 そんなことを考えている俺の頭に。

「私の領地にいた騎士の誰よりもお強いです」

 セレスティーヌ様の言葉もあまり入ってこない。
 おざなりに返事をしてしまう。

「そんなことはないでしょう」

「いえ、本当です」

「はあ……」

「私は心からそう思っております」

「魔物戦には相性がありますので」

「でも! お強いのは確かです!!」

 セレスティーヌ様の口から出た予想外に大きな声。
 思索も断ち切られてしまった。

「……ありがとうございます」

 我に返ったところで、隣に座っているセレスティーヌ様の様子を窺うと。
 思いつめたような表情。

 ……。

 ああ、俺のせいだな。

 反省するのはいいが、落ち込んでいる姿をセレスティーヌ様に見せるのは良くない。
 こんな極限の状況下で、俺の様子が彼女に与える影響を考えたら当然だ。

「今日は約100匹のゴブリンを倒すことができましたからね」

 そう言って、にやっと笑いかけてみる。

「その通りです。お強いです」

「まあ、ゴブリンなら100匹どころか200匹でも300匹でも平気ですよ」

「随分と増えましたね」

「お姫様の応援と笑顔があれば、もっと増えます」

「まあ」

「100人力ですね」

「そんなこと……」

 俺から顔をそらし俯いてしまう。

「セレスティーヌ様のことは、必ず護りますから」

「……はい」

「そのためにも、今は少しだけ休憩しますね」

「ああ、そうでした。お疲れなのに申し訳ありません。少しお休みください」

「では、お言葉に甘えて」

 横穴の中で身体を横たえる。
 すると、すぐに眠気が襲ってきた。
 昨夜は眠るセレスティーヌ様の傍で控えて警戒していたため、あまり眠っていない。
 今朝も朝から探索に戦闘。

 どうやら自分で思っている以上に疲れていたようだ。

「コーキ様、ここなら安心ですから、どうかゆっくり休んでください。私が見張りをしますので」

「でも、何かありましたら、すぐに起こしてください」

 魔物が近づいてくれば、気配で目が覚めるとは思うけれど。

「はい」

「お願いします」




「うーん」

 懐中時計で時刻を確認する。
 19時か。どうやら、結構眠ってしまったようだ。
 セレスティーヌ様にも迷惑をかけたな。

「セレスティ……」

 座ったまま舟を漕いでいる。
 彼女も疲れているよな。

 でもまあ、顔色は悪くないし、寝息も穏やかだ。
 安心してくれているってことなんだろうな。

 しかし……。

 本当に整った容姿をしている。
 オルドウで知り合った女性は不思議なことに美形ばかりだが、その中でも彼女は群を抜いている。

 今はまだ少しあどけなさが残っているが、あと数年も経てばとんでもない美女になることだろう。

 まっ、俺にとっては庇護すべき対象でしかないのだが。

 そんな彼女……。

 今までも、そして今も大変なのだが、ここを脱出した後も困難が待ち受けているのだろう。
 その過酷な運命を思うと、やるせない気持ちになってしまう。

「……」


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