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第3章 救出編

魔落 8

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 彼我の距離をなくすように、一気に跳躍!

「グギ!?」

 そして、これまた魔力を纏わせ、切れ味を底上げした剣で一気に片を付ける。

「グギャァァ」

 まずは1匹。

 で、目の前には10匹のゴブリン。
 驚き立ち止まっている。
 ありがたい!

「雷撃!」

 ここはどことも知れぬ地下空洞、いくら魔力が潤沢に残っているとはいえ魔力消費はなるべく抑えたい。

 なので、省エネタイプの雷撃だ。
 これでは全てを倒しきることはできないだろうが、牽制には充分のはず。

 こちらの思惑通り、5匹のゴブリンが身体を震わせ動きを止めた。
 他の5匹も立ち止まったまま。

 よし!

 5匹のゴブリンの急所を的確に切り裂きながら横に通り抜ける。
 残るは5匹。
 そして、さらに後方の40匹程度のゴブリン。

 なら、次は。

「炎舞!」

 火魔法を自己流に改良した魔法、炎舞。
 炎が波のように舞いながら襲いかかる広範囲に効果のある魔法だ。
 ただし、必殺の効力はない。

「グギャギャァァ」
「グギィィ」
「ギャァァ」

 想定以上に、大きな炎の波がゴブリンを襲っている。
 炎にまとわりつかれ苦しみもがくゴブリンたち。

 ……。

 思った以上に効果があるみたいだな。

 これは、黒ゴブリンが火に弱いからなのか?

 それとも……。

 予想以上の炎であったところを見ると、俺の魔法のレベルが上がっている?
 あるいは、この空間では魔法の効力が高いのか?

 理由は分からないが、こちらにとって悪いことじゃない。

 と、炎に焼かれ苦しみながら1匹のゴブリンが襲いかかってきた。
 そのゴブリンを剣の一撃で迎え撃つ。

「ギギィ……」

 よし、残るは40匹。
 ここから少し離れた大空洞中央部にいるゴブリンたちに向かって駆ける。

「炎舞!」






「お怪我は大丈夫でしょうか?」

「ええ、何とか」

 約50匹の黒ゴブリン集団との戦い。
 やはり、簡単なものではなかった。

 序盤は楽に戦えたものの、後半は統制の取れた動きで抵抗してきたゴブリンたちに、かなりの苦戦を強いられたからな。

 まあ、それでも何とか倒しきることはできたが、時間もかかったし怪我も負ってしまったんだよ。

 戦闘後、確認してみると結構深い傷だったので、回復魔法では心もとなくゾルダーから受け取った魔法薬を少しだけ使うことになってしまった。

 おかげで、無事に完治。
 やはり、高級な回復薬は違う。
 残量は多くないが、今後も大切に使わせてもらおう。

 あの時はゾルダーから迷惑を受けたが、この薬には助けられてばかりだな。

「どこも痛くはありませんか?」

「大丈夫、問題ないですよ」

 今回は倒すことができたが……。

 このレベルの魔物に集団で攻めてこられると、やっぱり簡単じゃない。
 100匹、200匹で襲われるなんてことを想像すると、ぞっとしないな。

「でしたら良いのですが、心配で……」

 気遣わしげにこちらを眺めているセレスティーヌ様。
 その表情からは、本当に心配してくれているというのが伝わってくる。
 高位貴族のお嬢様に心配してもらえるというのは、畏れ多くもありがたいことだ。

 でも、そんなことより気になるのは彼女の顔色。
 白磁のように綺麗な肌に、今朝のような血色の良さが窺えない。
 相変わらず気丈に振る舞ってはいるが、明らかに様子が異なっている。

 まあ……。
 こんな魔物たちとの遭遇で何も感じないわけがない、か。

 おそらく、この地下空洞から脱出するまで、まだ時間はかかるだろう。
 何とか彼女のストレスを緩和しながら探索を続けないといけないな。

 とりあえず。

「私にとってはあの程度の魔物、50くらいは問題ありませんから」

 などと、笑いながら喋ってみる。

「そんなこと……」

 もう少しか。

「セレスティーヌ様が応援してくれているなら、どんな魔物でも打倒可能かもしれませんよ。それに、貴女の笑顔を見ていると元気が出てきますので」

 次は、さらに柄にもないことを……。

 こんな状況下だ。
 しかたない。

「……」

「セレスティーヌ様の笑顔は何より勇気を与えてくれますから」

 ホント、似合わない。

「ふふ……そんなことでよろしいなら幾らでも」

 そう言って、はにかみながら微笑んでくれた。



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