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第3章 救出編
セレスティーヌ 8
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さて、それでだ。
まずは、どうしたものか?
セレスティーヌ様をテポレン山の麓まで連れて行くと約束したものの、まずはこの崖下から脱出しないといけないのだが。
「……」
10メートル以上あるこの崖を登るのは容易じゃない。
俺ひとりなら何とかなるかもしれないが、セレスティーヌ様のことを考えると崖を登るという選択肢は選びづらい。
なら、土魔法で土を大量に出して崖上まで移動。
という作戦も可能ではあるが、この高さとなると何度魔力を使い尽くせば崖上まで届くことやら。
これも、保留だな。
となると、崖下を探索して他の道を探すのが妥当か。
道を探しても見つからないようなら、ここに戻って来て登るなり、土魔法を使うなりすれば良い。とまあ、そんな感じで進めるしかないか。
とは言ってもだ。
順調に事が進まなければ、今夜は野宿になるかもしれないな。
セレスティーヌ様には申し訳ないけれど。
その可能性は高いかもしれない。
「セレスティーヌ様、この崖下を少し探索して麓への道を探しましょう」
半刻以上道を探したが、セレスティーヌ様が通ることができるような道を見つけることはできなかった。
もう、今から道を見つけたところで、夕暮れを前にテポレン山を下山することは叶わないだろう。
一応、エンノアの皆さんのお世話になるということも考えたが、エンノアの人々は外の人を歓迎していないようだし、それにレザンジュとは問題もあるようだからな。
レザンジュの貴族を連れて行くというのもはばかられる。
……。
とはいえ、野宿か。
それとも、エンノアか。
時間的にも……そうだな。
やむを得ない。
セレスティーヌ様には我慢してもらおう。
今夜は野宿だ。
「セレスティーヌ様、申し訳ないのですが今日中に下山することは難しくなりました。なので、野宿の準備をしたいと思います」
「そうですか……。分かりました、お任せします!」
野宿の話を聞きわずかに落胆したような顔を見せながらも、次の瞬間には笑顔で答えてくる。
大貴族の令嬢だというのに。
しかも、こんな儚げな容姿をしているのに。
立派なもの。
気丈なものだ。
「では、いったん先程の場所まで戻りましょう」
「はい」
テポレン山の山際から覗く陽はかなり傾いてきている。
急いだ方が良いだろう。
「……」
「……」
ふたりで戻る道中に、ほとんど会話はない。
当然のことながら、セレスティーヌ様の雰囲気も軽いものではない。
だからという訳ではないが、こちらとしても今夜のことを考えると気が重くなってくる。
今さらではあるが、貴族の未婚女性とふたりっきりで野宿なんてな。
本当に、大丈夫なのだろうか?
不敬罪とか?
ないよな?
そんな重苦しい雰囲気の中。
探索に出る際はかなり警戒していたセレスティーヌ様も、復路となると気が緩んでしまうのだろう、注意力が散漫になってきたように見える。
もちろん、蓄積した疲労もあるのだろうが、足の運びがおぼつかない。
それでも、気丈な態度を崩さず歩を進める様子は立派の一言だ。
とはいえ。
「この辺りは道幅が狭いので気をつけてください」
この崖下は崖上に比べると道らしき道もない。
それでも無理やり歩く傍らには斜面やら断崖やらと、かなり危険な場所と言える。
特にこの辺りは道幅が狭い。
足元も緩い。
注意が必要だ!
俺の言葉に軽く頷くセレスティーヌ様。
セレスティーヌ様の緊張と疲労、それに怪我による体調不良は理解していたつもりだが、彼女のしっかりした振る舞いを目の当たりにして、諸々見誤っていたのだろう。
「えっ、きゃあぁぁ」
「危ない」
地面にせり出した丈夫な木の根に躓き転倒するセレスティーヌ様。
倒れる先は植物が生い茂る斜面。
引き寄せようとするが、間に合わない。
このままじゃ、転がり落ちてしまう!
まずは、どうしたものか?
セレスティーヌ様をテポレン山の麓まで連れて行くと約束したものの、まずはこの崖下から脱出しないといけないのだが。
「……」
10メートル以上あるこの崖を登るのは容易じゃない。
俺ひとりなら何とかなるかもしれないが、セレスティーヌ様のことを考えると崖を登るという選択肢は選びづらい。
なら、土魔法で土を大量に出して崖上まで移動。
という作戦も可能ではあるが、この高さとなると何度魔力を使い尽くせば崖上まで届くことやら。
これも、保留だな。
となると、崖下を探索して他の道を探すのが妥当か。
道を探しても見つからないようなら、ここに戻って来て登るなり、土魔法を使うなりすれば良い。とまあ、そんな感じで進めるしかないか。
とは言ってもだ。
順調に事が進まなければ、今夜は野宿になるかもしれないな。
セレスティーヌ様には申し訳ないけれど。
その可能性は高いかもしれない。
「セレスティーヌ様、この崖下を少し探索して麓への道を探しましょう」
半刻以上道を探したが、セレスティーヌ様が通ることができるような道を見つけることはできなかった。
もう、今から道を見つけたところで、夕暮れを前にテポレン山を下山することは叶わないだろう。
一応、エンノアの皆さんのお世話になるということも考えたが、エンノアの人々は外の人を歓迎していないようだし、それにレザンジュとは問題もあるようだからな。
レザンジュの貴族を連れて行くというのもはばかられる。
……。
とはいえ、野宿か。
それとも、エンノアか。
時間的にも……そうだな。
やむを得ない。
セレスティーヌ様には我慢してもらおう。
今夜は野宿だ。
「セレスティーヌ様、申し訳ないのですが今日中に下山することは難しくなりました。なので、野宿の準備をしたいと思います」
「そうですか……。分かりました、お任せします!」
野宿の話を聞きわずかに落胆したような顔を見せながらも、次の瞬間には笑顔で答えてくる。
大貴族の令嬢だというのに。
しかも、こんな儚げな容姿をしているのに。
立派なもの。
気丈なものだ。
「では、いったん先程の場所まで戻りましょう」
「はい」
テポレン山の山際から覗く陽はかなり傾いてきている。
急いだ方が良いだろう。
「……」
「……」
ふたりで戻る道中に、ほとんど会話はない。
当然のことながら、セレスティーヌ様の雰囲気も軽いものではない。
だからという訳ではないが、こちらとしても今夜のことを考えると気が重くなってくる。
今さらではあるが、貴族の未婚女性とふたりっきりで野宿なんてな。
本当に、大丈夫なのだろうか?
不敬罪とか?
ないよな?
そんな重苦しい雰囲気の中。
探索に出る際はかなり警戒していたセレスティーヌ様も、復路となると気が緩んでしまうのだろう、注意力が散漫になってきたように見える。
もちろん、蓄積した疲労もあるのだろうが、足の運びがおぼつかない。
それでも、気丈な態度を崩さず歩を進める様子は立派の一言だ。
とはいえ。
「この辺りは道幅が狭いので気をつけてください」
この崖下は崖上に比べると道らしき道もない。
それでも無理やり歩く傍らには斜面やら断崖やらと、かなり危険な場所と言える。
特にこの辺りは道幅が狭い。
足元も緩い。
注意が必要だ!
俺の言葉に軽く頷くセレスティーヌ様。
セレスティーヌ様の緊張と疲労、それに怪我による体調不良は理解していたつもりだが、彼女のしっかりした振る舞いを目の当たりにして、諸々見誤っていたのだろう。
「えっ、きゃあぁぁ」
「危ない」
地面にせり出した丈夫な木の根に躓き転倒するセレスティーヌ様。
倒れる先は植物が生い茂る斜面。
引き寄せようとするが、間に合わない。
このままじゃ、転がり落ちてしまう!
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