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第3章 救出編

ダブルヘッド 10

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<ヴァーン視点>



「さすがに、これはまずいな」

「魔力ねぇのか」

「残り僅かだ。ここから4つの目をつぶすのは難しい」

 4つどころか2つですら容易じゃない。

「ちっ、しかたねぇな」

「オオォォォ!」

「っと、避けろ!」

 完全に目を回復させたダブルヘッドが飛びかかってきた。
 目をつぶされた怒りからなのか、これまで以上に恐ろしい威力だ。

「ぐっ!」

 その攻撃を、俺は左にギリオンは右に跳び退いて何とか躱す。

「あっぶねえな」

「ああ」

 これは危なかった。
 そして、まずい状況だ。

 とりあえず、続戦するにしろ、逃げるにしろ、少しでもダメージを与えておきたい。
 話はそれからだ。

「隙を見て魔法を撃つから、1つだけでも目をつぶしてくれ」

「おう、分かったぜ」

 完全にやる気になっているダブルヘッドとの間合いをはかる。

 まだ、まだだ。
 もう少し。

 よーし、次で。

「ファイヤーボール」

 魔法を放つ。
 さらに次の魔法を放つべく詠唱を始めようとしたまさにその時。

 ドシーーン!!

 地響きを立て、この開かれた空間に砂煙が舞い上がる。

 その中から姿を現したのは……。

 新たな魔物!

「なっ!?」

 なんてことだ!?
 信じられない!!

 常夜の森の方向からやってきたその新たな魔物。
 それは、ダブルヘッド!!

 2頭目のダブルヘッドだった。

「……まじぃな」

 さすがのギリオンも顔色が悪い。
 俺も同様だろう。

「ああ……」

 新たに表れたダブルヘッドは今まで戦っていたダブルヘッドに比べると一回り小さなサイズだが……。

 それにしても、ダブルヘッドが2頭。
 こうなると、逃げるのも困難か。

「おう、よく見ろ。あいつ左の頭がねぇぞ」

 ギリオンの声に思わず目をやると、その言葉通り小さいダブルヘッド、小ダブルヘッドの左頭部分は無惨に切り取られていた。

「単頭のダブルヘッド。それなら可能性も」

 あるんじゃないか。
 どこで首を斬られたのか分からないが、というかダブルヘッドの首を切断できる存在が近くにいることに驚きだが、これは不幸中の幸いだ。

 ほんの僅かながらも光明が見えた。

 そう思えたのに。

 無傷の大ダブルヘッドが単頭のダブルヘッドに近づき身を寄せる。
 するとすぐに、失っていた頭の部分が光り始め……。

「嘘だろ」

「んだよ、それ」

 頭が再生してしまった。

「……」

 最悪だ!
 いや、最悪を超えている。

 ……。

 もう、どうしろというんだ。

 あまりのことに頭が真っ白になり、呆然と立ち尽くしてしまう。

「おい、ヴァーン。しっかりしろ。攻撃がくんぞ!」

「あ、ああ」

 そうだ、な。
 まだ、身体は動く。
 僅かだが魔力も残っている。

 微かに見えた希望の光は消えてしまったけれど。
 最後まであがくしかない。




*********************




 ダブルヘッドを追い、常夜の森の端を駆ける。
 今まさにあいつはテポレン山との境界の開けた空間に入った。

 そこがお前の墓場だ!

 魔力を身体中に巡らせ、さらに加速。
 空地が見えてきた。

 そこには、冒険者らしきふたりの姿。
 ギリオンとヴァーンだ!!

 こんな所にいたのか!
 でも、良かった。
 無事みたいだ。

 が、ダブルヘッドと戦っている。
 うん?
 あれは2頭目のダブルヘッド。
 ここにもう1頭いたのか。

 さっきのダブルヘッドより大きな個体。
 そんなダブルヘッド2頭と戦っているふたり。
 さすがに苦しいはずだ。
 案の定、押され続けている。

 あっ、まずい!

 ダブルヘッドの攻撃がギリオンに迫る。
 ここからじゃ間に合わない。

 まずい、まずいぞ!!

 ダブルヘッドの凶悪な爪がギリオンの身体を抉ろうとした、その瞬間。
 その爪がはじき返された。

 えっ、アル?
 アルなのか!

 ギリオンの後ろから飛び出したアルが剣でダブルヘッドの攻撃を防いだんだ。

 いいぞ、アル。
 以前とは見違える動きだ。

 けど、アルも随分疲れているように見える。

 もう少し耐えてくれよ!
 すぐに到着するからな。

 しかし、アルもここにいたとはな。
 きっとシアもいるのだろう。
 これで4人を救い出せるぞ。

 と思った瞬間。

 後方に隠れていたシアが前に出てくる。
 そこに向かってダブルヘッドが突進を開始する!

 危ない!
 シア、魔法を撃てるのか?

 もう少しだけ防いでくれよ。
 今着くからな。

 一気に森を駆け抜け。

 開けた空地へ!



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