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第3章 救出編
酔っ払い 2
しおりを挟む「ゾルダーもヤランも、ホントにもうやめた方がいい。こんなところで揉めたら問題になるぞ」
「うるせぇ。これは教育的指導だ」
「いろいろ教えてやるんだよ」
「フン、あんたらに教わることは何もないと思うがな。コーキもそう思うだろ」
ヴァーンも反応してしまった。
もう無視はできないか。
「そうだな。酔っ払いに教わることはないな」
「なにっ!」
「すまんが、煽るようなことは言わないでくれないか。こいつら狩りが上手くいかなくて、酒を大量に飲んじまったんだ」
ひとりだけまともなケリーさんとやらが、ふたりの前に出て話しかけてくる。
「仕事中に飲酒ですか」
「……ああ。俺も今日初めてこいつらと組んだんだが、まさか酒を飲むとは思わなかった」
「そうですか、分かりました。それじゃあ、早く連れて帰ってください」
「そうさせてもらおう。ゾルダー、ヤラン帰るぞ」
「何ごちゃごちゃ言ってんだ。こいつらを置いて帰るわけねえだろうが」
「そうだぜ。指導してやらねぇとな」
「お前ら……」
頭を抱えるケリーさん。
「コーキ、こいつら帰る気ないぜ」
「そうだな」
このふたりがこのまま引き下がるとは思えない、か。
「コーキ先生?」
「シアは心配しなくていいから」
「おっ、女の前でカッコつけるのか」
俺の知る限りオルドウの冒険者ギルドはしっかりとした立派な組織だ。
素晴らしく統制の取れた組織だとも思っている。
実際、ギルドの建物の中ではこういった輩は今まで全く見かけたことがない。
でも、いるんだよなぁ。
こんな奴らが、どの組織にも。
まあ、冒険者ギルドもそうそう完璧に運営できるもんじゃないか。
「新人が女の前でいい所見せたいんだろ」
「残念だったな、みっともない所を見せることになって」
「新人らしく大人しくしてればいいものを」
「ほんとだぜ、弱えくせにな」
さて、どうしてやろうかと考えていると。
シアが俺とヴァーンの前に足を踏み出し……。
「コーキ先生はみっともなくありません、弱くありません」
あいつらをを睨んで捲し立てた。
ありがたいけど、危ないぞ。
「シア、下がった方がいい」
「そうだぜ、ここは俺たちに任せとけって」
「でも、この人たちが」
「こいつら、またカッコつけてんぜ」
「バカだな、こいつらバカだわ」
「違います。黙ってください! その汚い口を閉じてください」
「何だと、この女!」
「黙るのはお前だ!」
「黙りません!」
「このアマ、調子に乗りやがって」
バシン!
「あっ!?」
こいつ!
シアに手を出したな。
しかも、その顔に!
「ゾルダー、お前。何してんだ!」
「うるせぇ。ケリーは黙ってろ」
頬を平手打ちされた衝撃で、シアは固まっている。
「シア、大丈夫か」
左の頬が赤い。
「あっ……。はい」
「もういいから、こっちに」
「……はい」
「ああ、何だお前ら。女の顔をはたかれたのが何だってんだ?」
こいつら。
酒が入っているからといって、見逃せるもんじゃないぞ。
「コーキ!」
ヴァーンも同じ気持ちだろう。
「ああ、仕方ない」
「申し訳ない。本当に申し訳ない」
ケリーさんがゾルダーとヤランの傍らで謝っている。
が、これは許すことはできないな。
「ケリーさんは少し下がっていてください」
「……」
「おっ、やる気になったか?」
「やっとかよ」
「ああ、そうだ。先輩方に指導してもらおうか」
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