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第3章 救出編
魔法訓練 2
しおりを挟む俺の魔法を見てもらおうと、シアに声をかけたところ。
「はい」
「おう」
「……」
ヴァーンが笑いながら返事を返してくる。
「どうした、コーキ?」
「いや……」
ヴァーンには言ってないんだけどな。
お前も俺の魔法を見たいのか。
「そうか。なら、見せてくれよ」
「……ああ」
気を取り直して、まずは。
「ファイヤーボール」
詠唱を破棄して魔法名だけで放つ。
伸ばした手の先から放たれた火の玉が、シアのそれと同様に岩に激突。
岩肌を抉るように凝縮し、霧散する。
「なっ!?」
「えっ!?」
ファイヤーボールが消え去った後。
岩の表面が一部融解している。
調節したのだが、少し威力が強過ぎたようだ。
「何だそれ! 詠唱無しで、その威力かよ」
「……」
まだ続くぞ。
「では、もう一度」
今度は発声はなし。
手も動かさない。
無言のまま、俺の胸辺りからファイヤーボールを放つ。
「おいおい……。今度は無言か!」
「すごい……。そんなこともできるんですね」
「ホント、出鱈目なやつだな、おい」
「本当に凄いです!」
「凄いっつうか、おかしいだろ」
「……」
ギリオン同様、ヴァーンも口数が多いんだよ。
「シア、今のを見て分かったと思うけれど、魔法の発動には長い詠唱も魔法名も必要ないんだ」
「はい」
「当然のことだが、詠唱無しで素早く魔法を使えるようになれば、それだけで戦いを有利に進めることができる。さらに、魔法名を口に出さないことで、相手の意表を突くことにもなる」
オルドウに来て以降行った実戦からも、それは明白。
魔法だろうが剣だろうが体術だろうが、速度が重要なことに変わりはない。
その上、相手の意表を突けるのなら、なお好しだ。
「はい」
「今すぐにそれをやろうとしても無理というものだが、とりえず詠唱破棄の練習をして、それが身に付いた後に無詠唱の習得を目指そうか」
「はい! 練習します。ぜひ教えてください」
「コーキ、俺にも教えてくれよ」
「……」
お前もかよ。
「なんだ、駄目なのか?」
まあ、駄目とは言わないが。
でも、そうか。
「ヴァーンも魔法を使うんだったな」
「おう、俺は魔法と剣を扱う冒険者だぜ」
そうだった。
ヴァーンはオルドウでは珍しい魔法剣士系の冒険者なんだよな。
まっ、俺もそうなんだけど。
「ヴァーンは、俺がシアに教えるのを横で聞いていれば充分だろ」
ヴァーンなら、横で聞いていれば何とかするはず。
「ありがたい。それで十分だ。よろしく頼むな」
そう言って、屈託のない笑顔を見せてくる。
日に焼けた顔に真白な歯が眩しいわ。
はぁ。
憎めない奴だよ。
その点、ギリオンと同じだよな。
「ヴァーンさん、一緒に頑張りましょう!」
「シア、よろしくな」
嬉しそうに握手しているよ。
まあな、一緒に訓練するのなら、仲が良いのは悪いことじゃない。
ふたりで切磋琢磨してくれ。
「詠唱破棄を習得するためには、まずは魔力の流れを感じてもらう必要がある」
「はい」
「そうなのか」
「ふたりとも、今まで魔力の流れを感じたことはあるかな?」
「……ないです」
「俺もないなぁ」
やはり、そうなんだな。
こちらの世界の魔法の使い手は、魔力に対する感覚が乏しいとは感じていたんだよ。
ただし、あの例がある。
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