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第1章 オルドウ編
再び 2
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「少しは落ち着いたかな」
「は、はい。これは、その?」
神様の力、それとも魔法的な何か?
とにかく、さざめいていた波が凪いでいくかのように心が落ち着いてくる。
「気にすることはない」
「はい……ありがとうございました」
「それより、キミ、ちょっと顔が疲れているというか老けたというか、どうしたんだい?」
「……30年、経ちましたから」
相手が神様といえど、その言葉は辛い。
30年待ったのだから。
それでも、顔に出さないように何とか意識を集中する。
「ん? 30年?」
神様は右手を虚空に伸ばし、軽く左右に振っている。
「これは……ああ、そういうことか」
頭を抱えている。
いや、違うか。
何と言ったらいいのか、とにかく、実際に神様が頭を抱えているわけではないが、そういうイメージが伝わってくる。
「どうかしましたか?」
「手違い、計算違い……」
えっ?
手違い?
計算違い?
どんな違いが?
まさか、異世界に行けないとか?
そんな、ここまで来て。
「キミのもとに来る時期が想定外だったものでね」
「……」
そっちか。
なら、異世界には行けるよな。
それなら、問題ない。
問題ないが、想定外ということは遅過ぎたのか、それとも早過ぎたのか?
早過ぎということはないよな。
なら、手違いで30年も待たされてしまったということ。
まあ、でも今、再び神様に会えたのだから。
「……」
感情が心の中で入り乱れてしまう。
「キミには苦労をかけたようだ」
「……いえ」
こうしてまた機会が与えられたのだから、好しとしなければならない。
このまま神様に会うこともなく一生を終えていた可能性もあるのだから。
覚えていてくれただけでもありがたいことだ。
それに何というか失礼なのだろうけど、10歳時のことを考えれば、今回の手違いにも妙に納得するものがある。
「大丈夫かな?」
まずい、表情に出ていた?
ひどい顔つきをしていたのだろうか。
注意していたのに。
「……すみません。動揺してしまって」
随分と動揺したけど、もう大丈夫。
急いで心を静める。
これでも30年間ずっと鍛錬してきた身だ。
できるよな。
「ああ、いい。無理はしないで」
神様からは確かな気遣いが感じられる。
言葉と共に温かな波動も伝わってくる。
ありがたいことだ。
ゆっくりと心が整っていく。
「その信心は本物のようだ」
信心?
もちろん、ずっと神様を信じてきた。
信じて、信じて、信じ抜いて、もうそれしか信じるものがなくて、これまで生きてきたけど。
「はい」
「事もあろうに、そんなキミを……ああ、ちょっと動かないように」
そう言って神様は左手を俺の前頭部に近づけ、触れた?
「つっ!?」
「ああ、少し痛かったかな。ふむ……これで痛くないだろう」
「はい、大丈夫です」
「では、少し覗かせてもらうよ」
その言葉と共に俺の額から何かが繫がっているような、頭の中に風が吹くような、何とも名状しがたい感覚が……。
おそらく俺の記憶のようなものを見ているのだろう。
「なるほどねぇ…」
1分とも10分とも判別しがたい時間の後。
「事情は分かったよ。しかし、想定外とはいえ、こうして再び会えて良かった」
今までの少し親しみやすい感じから一変、厳粛とも荘厳ともいえるような雰囲気を纏った神様が告げてくれた。
「はい、こうして神様とふたたび会えただけで……」
言葉に詰まる。
本当にこの瞬間を待ちわびていたのだから。
「は、はい。これは、その?」
神様の力、それとも魔法的な何か?
とにかく、さざめいていた波が凪いでいくかのように心が落ち着いてくる。
「気にすることはない」
「はい……ありがとうございました」
「それより、キミ、ちょっと顔が疲れているというか老けたというか、どうしたんだい?」
「……30年、経ちましたから」
相手が神様といえど、その言葉は辛い。
30年待ったのだから。
それでも、顔に出さないように何とか意識を集中する。
「ん? 30年?」
神様は右手を虚空に伸ばし、軽く左右に振っている。
「これは……ああ、そういうことか」
頭を抱えている。
いや、違うか。
何と言ったらいいのか、とにかく、実際に神様が頭を抱えているわけではないが、そういうイメージが伝わってくる。
「どうかしましたか?」
「手違い、計算違い……」
えっ?
手違い?
計算違い?
どんな違いが?
まさか、異世界に行けないとか?
そんな、ここまで来て。
「キミのもとに来る時期が想定外だったものでね」
「……」
そっちか。
なら、異世界には行けるよな。
それなら、問題ない。
問題ないが、想定外ということは遅過ぎたのか、それとも早過ぎたのか?
早過ぎということはないよな。
なら、手違いで30年も待たされてしまったということ。
まあ、でも今、再び神様に会えたのだから。
「……」
感情が心の中で入り乱れてしまう。
「キミには苦労をかけたようだ」
「……いえ」
こうしてまた機会が与えられたのだから、好しとしなければならない。
このまま神様に会うこともなく一生を終えていた可能性もあるのだから。
覚えていてくれただけでもありがたいことだ。
それに何というか失礼なのだろうけど、10歳時のことを考えれば、今回の手違いにも妙に納得するものがある。
「大丈夫かな?」
まずい、表情に出ていた?
ひどい顔つきをしていたのだろうか。
注意していたのに。
「……すみません。動揺してしまって」
随分と動揺したけど、もう大丈夫。
急いで心を静める。
これでも30年間ずっと鍛錬してきた身だ。
できるよな。
「ああ、いい。無理はしないで」
神様からは確かな気遣いが感じられる。
言葉と共に温かな波動も伝わってくる。
ありがたいことだ。
ゆっくりと心が整っていく。
「その信心は本物のようだ」
信心?
もちろん、ずっと神様を信じてきた。
信じて、信じて、信じ抜いて、もうそれしか信じるものがなくて、これまで生きてきたけど。
「はい」
「事もあろうに、そんなキミを……ああ、ちょっと動かないように」
そう言って神様は左手を俺の前頭部に近づけ、触れた?
「つっ!?」
「ああ、少し痛かったかな。ふむ……これで痛くないだろう」
「はい、大丈夫です」
「では、少し覗かせてもらうよ」
その言葉と共に俺の額から何かが繫がっているような、頭の中に風が吹くような、何とも名状しがたい感覚が……。
おそらく俺の記憶のようなものを見ているのだろう。
「なるほどねぇ…」
1分とも10分とも判別しがたい時間の後。
「事情は分かったよ。しかし、想定外とはいえ、こうして再び会えて良かった」
今までの少し親しみやすい感じから一変、厳粛とも荘厳ともいえるような雰囲気を纏った神様が告げてくれた。
「はい、こうして神様とふたたび会えただけで……」
言葉に詰まる。
本当にこの瞬間を待ちわびていたのだから。
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