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第1章 オルドウ編
序10
しおりを挟む3年経った。
ぼくも中学生になっている。
あちらでは、リーナは14歳、オズは13歳になっているはず。
でも、神様とは会えていない。
あの世界にはまだ行けないようだ。
まだまだ子供だから仕方ない。
でも、いつになったら行けるのだろう。
あの時聞いておけばよかった。
今さら悔やんでも仕方ないか。
今はひたすら準備するだけ。
空手も剣道も勉強も順調だけど、もっと頑張ろう。
あの能力も色々と応用できるようになった。
ああ、そうだ。
いつあちらに行っても良いように、家族に置手紙を用意した。
あの世界についてのメモも何度も書き直している。
家族とは問題なく仲良く過ごせている。
反抗期が無いねと感心されたりもしたが、当然だ。
そんなムダなことをしている暇なんて無いのだから。
友達関係は、それなりかな。
そう言えば先日、いじめられそうになっていた後輩を助けたら、懐かれてしまったんだった。
こっちは忙しいから、あまり時間はないんだけどよく家に来るんだよな。
幸奈の弟、武志とは今でもたまに遊んでいる。相変わらず冒険やヒーローが大好きだ。やっぱりこいつは見込みがある。武志には異世界のことを話したくなるけど、ここは我慢だな。
幸奈と会う回数が以前より少なくなってきた。
けど、もう一緒に仲良く遊ぶ歳でもないから。
……。
問題なんてない。
中学3年になった。
来年からは高校生。
一歩ずつ大人に、そして異世界へ近づいているような気がして嬉しくなってしまう。
鍛錬にも気合いが入るというものだ。
そんな風に異世界のことばかり考えているからか、最近は友達と会うこともかなり減ってしまった。
でも、この春に幸奈とふたりで遠出するということがあった。
幸奈が梅の花が観たいと言ったからだ。
珍しくどうしても観たいと言い張るので、ふたりで電車に乗って梅園に出かけたんだ。
最初は梅なんて地味だと思っていたんだけど、幸奈と一緒に観た梅は薄紅色の綺麗なものだった。梅もなかなか悪くないものなんだな。
もちろん、幸奈は喜んでくれた。
だから。
「これ、持って帰れよ」
梅が色づいた枝を一本折って、手渡してしまった。
「そんな事しちゃだめだよ」
「……」
「でも……ありがと」
困ったような喜んでいるような複雑な表情。
よく分からない表情だった。
「功己、また一緒に来ようね」
「……時間があったらな」
「約束だよ」
「だから、暇だったら……分かったよ」
「ふふ、約束しちゃった」
「……」
こんな感じで無理やり約束もさせられた。
しかし、どうして梅ばかりなのかと疑問に思い、桜は好きじゃないのかと聞いたら。
「桜も好きだけど、梅の花のこの儚さが好きなんだよね」
ということだった。
まあ、確かに、そう言われればそうかもしれないな。
でも、中学3年で儚さが好きって。
それはどうなんだと思う。
7年経過。
武道も勉強も変わらず順調だ。
その反面、最近は人と会うことが少なくなった。
幸奈ともあまり会っていない。
だから、幸奈から突然話された内容には驚きしかなかったんだ。
……。
その幸奈との会話が、どうしても頭から離れない。
「わたし、先輩に告白されたんだけど」
「えっ!?」
「告白されたの」
「……へぇ、よかったな」
「ホントにそう思う?」
「ああ、モテて良かったんじゃないの」
「そう……そう思うんだ」
「……」
「付き合っていいかな?」
「……幸奈が決めることだろ」
「そう、だよね」
「……」
「でも、でも……付き合っていいんだよね」
「……ああ」
「そっかぁ……」
その時はそう答えることしかできなかった。
こっちは異世界のことで頭がいっぱいだから。
でも……。
その後、武志に言われてしまった。
「見損なったよ。お前に姉ちゃんは任せられない」
任せるも何も、幸奈は俺のものじゃないのに!
結局、幸奈は先輩の告白を断ったらしい。
でも、その先輩らしき男性とデートしている幸奈を偶然見てしまったんだ。
本当に付き合っていないのだろうか……。
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