邂逅〜封印されし宝具と悠久を彷徨う武人

narahara

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現世

コンビニ

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「何かを買いに来たのかい?この宗純に任せて、あなたはすぐに私と帰りなさい。お母さんが心配している」

脂ぎった男が尊大に言う。

高価そうな和服。

プンと焚き染めた香の匂いがする。

「ホッといてくれよ」

涼馬が邪険に言う。

「何を生意気な。お前は、大事な蔦の院の息子だ。何かがあったら困るっ!言うことを聞けっ!」

涼馬が怒りの形相で睨みつける。

「ほう、この道満に逆らおうというのか?こざかしいっ!」

涼馬の拳が握られる。

身体に怒りのエネルギーが充満しているのが分かる。

拳を握りしめた腕が後ろに引かれ、拳が道満と名乗る男の顔面に叩きつけられようとした瞬間、グイと腕が掴まれた。

新任教師の藤原だ。

体育教師らしく力強い。

「伏戸くん、落ち着けっ!落ち着くんだ」

よく通る声が身体に染み、怒りが落ち着いていくのを涼馬は感じる。

道満はジロリと藤原を見る。

「誰だね?君は」

「伏戸くんが通う平原高校の教師の藤原と申します」

藤原は丁寧な口調で答える。

「ほお、先生ですか。見回り、ご苦労様です」

道満は、そう言いながら舐め回すように藤原を見る。

続いてその横の黒服の男も。

「今、不要の外出は禁止されているんでしたな。先生からもこの聞かん坊に注意をしてやって下さい」

小馬鹿にした口調だ。

「ほら、行くぞ」

「車に乗る距離じゃない。歩くよ。先生、じゃあね」

そう言い捨て、涼馬はさっさとコンビニの外に出る。

「宗純、お前がついて行け」

「かしこまりました」

後ろで声がする。

涼馬は足を早めた。

         *

涼馬と宗純が去り、道満も無言でコンビニを出て車に乗り込んだ。

その車を藤原と黒服の男が見送る。

「あれは、“ワタリ”だろうか」

藤原が聞く。

「おそらく、“汚洲”との“ワタリ”でしょうな。土臭さを香で隠している」

黒服の男が答える。

「そんなモノが伏戸くんの近くに、、、道満と名乗っていたな、、、ということは蘆屋道満の移し身か?」

「古の陰陽師、蘆屋道満その人の魂の流れなのか、単に、その名を語っているのか分かりませんが、用心に越したことはない相手だということは間違いがありませんね。あの出立ち、“大地の母と生きる会”と関係していると見て間違いがないでしょう」

「“大地の母と生きる会”か。伏戸涼馬の家が、その道場となっているのだな。確か、忌み神にそのような名を待つモノがいたな。“大地の母”、、、口にするべからざる名のモノ、、、土の忌み神を奉じているのか、、、」

「おそらく。“土”で間違いはないでしょう。そして、この様子では風の忌み神もまたこの街にいついたと見えます」

「“汚洲”との坂がこの街に出来たか」

「恐らく。坂の条件が揃ってしまったのでしょう。詳しくは藤原の父に探らせております」

「迷惑をかけるな」

「いえ、我が家の勤めですから」

「伏戸涼馬、、、彼は罠なのだろうか、、、」

「こればかりは、わかりません。若が感じた波動を信じるか、敵の奸計と警戒するか、しばらくは慎重に動かなければなりません。けれど、若が彼と会い、そして、仲が悪いはずの土の忌み神と風の忌み神が共にこの街にある」

「行方不明者も、切り裂き魔も奴らの仕業と見て間違いがないだろうしな」

「若、本当に家を見に行く気ですか?」

「ああ、手をこまねいて知らせを持つのは性に合わない」

「私が油断して顔を見られたばかりに。申し訳ありません」

「心配するな。教師の仕事の一環で見回っている途中に彼の家の前を通るだけだ」

「まあ、あの家には憑いているとして“土”。“土”は“風”の宿敵ですから、若に危害を与える理由はありませんが、、、」

「ここで考えていても仕方ない。動くだけだ」

そう言うと、藤原は涼馬の消えた方角へ歩き出す。

それを黒服の男が見送る。








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