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第五部 『帝国』編
502 「新たな魔導器の目覚め(2)」
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そうして外に出ると、昨日神々の塔に入った残り3人が、出口あたりに集まっていた。
その後ろの周りには、他の『ダブル』と殿下の家臣の人達がそれぞれ集団を作ってこちらを見ている。
「おおっ、それが新たなキューブの姿か」
「赤い方が殿下が手に入れられた方ね」
「青い方が僕達から誰かを選ぶのかな?」
「一応、魔力総量の多い人全員にチャンスはあるかもですけど、魔力総量が高い人を選ぶ傾向が強いみたいです」
「他に何かあるのかしら?」
オレの説明に火竜公女さんが首を傾げる。
さらに後ろにいる『ダブル』も、強い興味を向けてくる。
「不活性の間に長い所持していたら持ち主経由で魔力が流れ込むみたいで、そういう場合はその持ち主が優先したりするみたいです。
あとは、普通は暴走していた頃の記憶とか記録がリセットされるっぽいんですが、たまに多少記憶を残してる場合があって、恩義を感じて選ぶってのもありました。
けど、取り敢えず最低でもAランクの上位くらいの魔力総量は必要だと思います」
「なるほどな、だから塔に入れると判断された私達が集められたわけだ」
「そうです」
そう言っている間にも、青いのが3人に近づく。
さらにスミレさんの時のようにそれぞれの前に行って、凝視するように見つめる。けど、スミレさんのように抱きついたりはしない。
また、3人が終わると、後ろのギャラリーの方も軽く見て回った。
さらにその後、少し離れた飛行船の甲板から見ていた、ボクっ娘と悠里の方へも向かう。
そういえばあの二人もキューブを持っていなかった。
そうして再び戻ってきて、最終的に真面目な勇者様のヒイロさんに手を差し伸べた。
「僕の新しい主人は、あなたみたいだ。本当はそこの男の人が一番なんだけど、僕たちの同類をもう仕えさせている人はダメって言われたから、あなたにします。構いませんか?」
「ぼ、僕で良いのかな? 僕は殆ど何もしてないんだけど?」
困惑しつつ、青いやつよりむしろオレや少し離れた場所にいるハルカさん達へ顔を向けてる。
そしてさらに他の『ダブル』達へと顔ごと視線を向けていく。
基本的にこういう性格だから、クズ勇者様の横暴を許したんだろうと思える光景だ。
「いらないなら、『帝国』にあげて下さい。『帝国』の本国に戻れば、多分相応しい人は何人も居ると思いますよ」
「それはならん、ヒイロよ。意志持つ存在に選ばれたのなら、素直に受け入れよ」
「……はい。分かりました。そうしましょう」
マーレス殿下の言葉に、ヒイロさんが納得したような表情を見せた。
オレの下らない煽り言葉より、マーレス殿下の誠実な言葉の方が響いたようだ。
そしてようやくキューブの件が片付いたので、順次飛行船が出発してガラパゴス諸島の西部、昨日戦った場所を目指す。
そこには『帝国』軍の飛行船と兵士や乗組員の半分程度が、死者の埋葬や後片付けなどをしているはずだ。
そして島へ移動中、ハルカさんとボクっ娘には、今日向こうであった事を伝えておいた。
ボクっ娘の方は「りょーかい」の一言で済む事だけど、ハルカさんの方は「母らしい」と苦笑気味だった。
どちらも否定的な印象はないので、問題なしと思っていいだろう。
そして1刻(2時間)後、各船内で朝食も済ませた午前8時半くらい、昨日の場所に戻ってきた。
これがハードモードなお話の中だったら、話を盛り上げるため新たな敵、しかもさらに強い敵が出現して、残っていた人達を全滅させ、罠でも張っているところだ。
もしくは残った人が襲われて全滅まであと少しというところで、オレ達が駆けつけるシーンだろう。
けど、遠望した時点で煙が立っていないどころか、近づくと残っていた竜騎兵がお出迎えしてくれた。
こちらも竜騎兵や疾風の騎士達が出迎えに応えるために出て行って、昨日の戦場跡で編隊飛行などをしてはしゃいでいた。
「平和なもんだな」
「何? また新たな敵の出現でも期待してたの?」
ハルカさんが、半ばジト目でオレのオタクマインドを読んでくる。
オタク的な事が少し分かるシズさんは、小さく一度笑みを浮かべ、分からないトモエさんは頭にクエスチョンマークを浮かべている。もっともトモエさんは、舵を握っている事もあってか気にはしてない。
オレの気持ちを理解してくれるレイ博士は機関室、リョウさんは浮遊石の結晶の制御でこの場にはいない。
そうして着陸したら、『帝国』はマーレス殿下の指揮のもとで状況の確認を済ませる。
どうやら、昼には発てるらしい。
その間にオレ達は戦死者の合同葬に出るけど、ヒイロさんに『ダブル』で集まるように請われた。
そこで船をフェンデルさん、ホランさんに任せて地上へと降りる。
ノヴァの船からも『ダブル』達が降りてくるところだった。ノヴァの船も乗組員の何割かがこちらの世界の住人だからだ。
そうして飛行船から少し離れた場所、こちらの世界の人の全てからも少し離れた場所に、この場にいる『ダブル』全員が集まる。
オレ達の船からは19人、ノヴァの船からは33人の合計52人。この世界にいる日本人『ダブル』のおおよそ1%が集まっている事になる。
しかも最低でもBランク、半数以上がAランク以上という精鋭揃いだ。
そしてヒイロさんを真ん中に、火竜公女さん、空軍元帥が左右に並ぶ。
その前に40名近い『ダブル』が半円状に囲む。オレ達もその片隅にみんなと同じように陣取る。
中学生くらいまでなら体育座りでもしただろうけど、さすがにみんな立ったままだ。
なんだか集会でも始まりそうな雰囲気だけど、昨日何か聞いてきた事を話すのだろうくらいの察しはつく。
そしてヒイロさんが口を開いた。
集会、いや発表の始まりだ。
「みんな、わざわざ集まってもらって申し訳ありません。昨日僕ら、いや僕は『世界』と名乗る神々の塔の番人か何かの存在に、この世界について、魔物について、300年ごとに呼ばれるという客人について、僕達がなぜ呼ばれたのかについてを中心に色々聞いたんだ。
そしてこの手の知識や情報は願い事に含まれなかったから、思いつく限り色々聞くことができた。
もう僕の仲間達には昨日の夜簡単に話したんだけど、これは『ダブル』全員が知るべきだと思ったから、この場でまずは概要を話したいと思う。またそれぞれの細かいことは、この一週間の間に話したい。
でも、聞きたくない、聞く必要もない、と思う人も居るだろうから、その人は飛行船に戻ってもらって構わない」
そこで一度言葉を切り、周りを見つめる。
オレの見るところ、ヒイロさんの両脇の二人は面倒ごとに巻き込まれたって雰囲気を感じる。
空の眷属な人はなんだかんだで自由な人達だから、正直どうでも良いんだと思う。
そしてそれは、少なくとも表向きはオレの仲間も同じだった。
「(帰ろっか?)」
「(私もレナにさんせー。でも、空気読めない奴にはなりたくないんだよなー)」
「いいんじゃない。さ、船に戻ろう」
即決でトモエさんが回れ右した。
空の眷属よりもっと自由な人だ。
しかも他の仲間達も動き出している。オレ達の仲間で聞きたそうにしているのは、レイ博士とこの場の絵をスケッチしているリョウさんくらいだ。
ハルカさんは少し躊躇いが見られるけど、これは単に真面目キャラなせいだ。
「あのオレ達、今日も神々の塔に入る予定なんですけど、その相談をしたいので今日は失礼させて頂きます。申し訳ありません。ハルカさん」
「う、うん。それじゃあ私も失礼します」
それでも少し躊躇するハルカさんの手を取って、その場を離れた。
その後ろの周りには、他の『ダブル』と殿下の家臣の人達がそれぞれ集団を作ってこちらを見ている。
「おおっ、それが新たなキューブの姿か」
「赤い方が殿下が手に入れられた方ね」
「青い方が僕達から誰かを選ぶのかな?」
「一応、魔力総量の多い人全員にチャンスはあるかもですけど、魔力総量が高い人を選ぶ傾向が強いみたいです」
「他に何かあるのかしら?」
オレの説明に火竜公女さんが首を傾げる。
さらに後ろにいる『ダブル』も、強い興味を向けてくる。
「不活性の間に長い所持していたら持ち主経由で魔力が流れ込むみたいで、そういう場合はその持ち主が優先したりするみたいです。
あとは、普通は暴走していた頃の記憶とか記録がリセットされるっぽいんですが、たまに多少記憶を残してる場合があって、恩義を感じて選ぶってのもありました。
けど、取り敢えず最低でもAランクの上位くらいの魔力総量は必要だと思います」
「なるほどな、だから塔に入れると判断された私達が集められたわけだ」
「そうです」
そう言っている間にも、青いのが3人に近づく。
さらにスミレさんの時のようにそれぞれの前に行って、凝視するように見つめる。けど、スミレさんのように抱きついたりはしない。
また、3人が終わると、後ろのギャラリーの方も軽く見て回った。
さらにその後、少し離れた飛行船の甲板から見ていた、ボクっ娘と悠里の方へも向かう。
そういえばあの二人もキューブを持っていなかった。
そうして再び戻ってきて、最終的に真面目な勇者様のヒイロさんに手を差し伸べた。
「僕の新しい主人は、あなたみたいだ。本当はそこの男の人が一番なんだけど、僕たちの同類をもう仕えさせている人はダメって言われたから、あなたにします。構いませんか?」
「ぼ、僕で良いのかな? 僕は殆ど何もしてないんだけど?」
困惑しつつ、青いやつよりむしろオレや少し離れた場所にいるハルカさん達へ顔を向けてる。
そしてさらに他の『ダブル』達へと顔ごと視線を向けていく。
基本的にこういう性格だから、クズ勇者様の横暴を許したんだろうと思える光景だ。
「いらないなら、『帝国』にあげて下さい。『帝国』の本国に戻れば、多分相応しい人は何人も居ると思いますよ」
「それはならん、ヒイロよ。意志持つ存在に選ばれたのなら、素直に受け入れよ」
「……はい。分かりました。そうしましょう」
マーレス殿下の言葉に、ヒイロさんが納得したような表情を見せた。
オレの下らない煽り言葉より、マーレス殿下の誠実な言葉の方が響いたようだ。
そしてようやくキューブの件が片付いたので、順次飛行船が出発してガラパゴス諸島の西部、昨日戦った場所を目指す。
そこには『帝国』軍の飛行船と兵士や乗組員の半分程度が、死者の埋葬や後片付けなどをしているはずだ。
そして島へ移動中、ハルカさんとボクっ娘には、今日向こうであった事を伝えておいた。
ボクっ娘の方は「りょーかい」の一言で済む事だけど、ハルカさんの方は「母らしい」と苦笑気味だった。
どちらも否定的な印象はないので、問題なしと思っていいだろう。
そして1刻(2時間)後、各船内で朝食も済ませた午前8時半くらい、昨日の場所に戻ってきた。
これがハードモードなお話の中だったら、話を盛り上げるため新たな敵、しかもさらに強い敵が出現して、残っていた人達を全滅させ、罠でも張っているところだ。
もしくは残った人が襲われて全滅まであと少しというところで、オレ達が駆けつけるシーンだろう。
けど、遠望した時点で煙が立っていないどころか、近づくと残っていた竜騎兵がお出迎えしてくれた。
こちらも竜騎兵や疾風の騎士達が出迎えに応えるために出て行って、昨日の戦場跡で編隊飛行などをしてはしゃいでいた。
「平和なもんだな」
「何? また新たな敵の出現でも期待してたの?」
ハルカさんが、半ばジト目でオレのオタクマインドを読んでくる。
オタク的な事が少し分かるシズさんは、小さく一度笑みを浮かべ、分からないトモエさんは頭にクエスチョンマークを浮かべている。もっともトモエさんは、舵を握っている事もあってか気にはしてない。
オレの気持ちを理解してくれるレイ博士は機関室、リョウさんは浮遊石の結晶の制御でこの場にはいない。
そうして着陸したら、『帝国』はマーレス殿下の指揮のもとで状況の確認を済ませる。
どうやら、昼には発てるらしい。
その間にオレ達は戦死者の合同葬に出るけど、ヒイロさんに『ダブル』で集まるように請われた。
そこで船をフェンデルさん、ホランさんに任せて地上へと降りる。
ノヴァの船からも『ダブル』達が降りてくるところだった。ノヴァの船も乗組員の何割かがこちらの世界の住人だからだ。
そうして飛行船から少し離れた場所、こちらの世界の人の全てからも少し離れた場所に、この場にいる『ダブル』全員が集まる。
オレ達の船からは19人、ノヴァの船からは33人の合計52人。この世界にいる日本人『ダブル』のおおよそ1%が集まっている事になる。
しかも最低でもBランク、半数以上がAランク以上という精鋭揃いだ。
そしてヒイロさんを真ん中に、火竜公女さん、空軍元帥が左右に並ぶ。
その前に40名近い『ダブル』が半円状に囲む。オレ達もその片隅にみんなと同じように陣取る。
中学生くらいまでなら体育座りでもしただろうけど、さすがにみんな立ったままだ。
なんだか集会でも始まりそうな雰囲気だけど、昨日何か聞いてきた事を話すのだろうくらいの察しはつく。
そしてヒイロさんが口を開いた。
集会、いや発表の始まりだ。
「みんな、わざわざ集まってもらって申し訳ありません。昨日僕ら、いや僕は『世界』と名乗る神々の塔の番人か何かの存在に、この世界について、魔物について、300年ごとに呼ばれるという客人について、僕達がなぜ呼ばれたのかについてを中心に色々聞いたんだ。
そしてこの手の知識や情報は願い事に含まれなかったから、思いつく限り色々聞くことができた。
もう僕の仲間達には昨日の夜簡単に話したんだけど、これは『ダブル』全員が知るべきだと思ったから、この場でまずは概要を話したいと思う。またそれぞれの細かいことは、この一週間の間に話したい。
でも、聞きたくない、聞く必要もない、と思う人も居るだろうから、その人は飛行船に戻ってもらって構わない」
そこで一度言葉を切り、周りを見つめる。
オレの見るところ、ヒイロさんの両脇の二人は面倒ごとに巻き込まれたって雰囲気を感じる。
空の眷属な人はなんだかんだで自由な人達だから、正直どうでも良いんだと思う。
そしてそれは、少なくとも表向きはオレの仲間も同じだった。
「(帰ろっか?)」
「(私もレナにさんせー。でも、空気読めない奴にはなりたくないんだよなー)」
「いいんじゃない。さ、船に戻ろう」
即決でトモエさんが回れ右した。
空の眷属よりもっと自由な人だ。
しかも他の仲間達も動き出している。オレ達の仲間で聞きたそうにしているのは、レイ博士とこの場の絵をスケッチしているリョウさんくらいだ。
ハルカさんは少し躊躇いが見られるけど、これは単に真面目キャラなせいだ。
「あのオレ達、今日も神々の塔に入る予定なんですけど、その相談をしたいので今日は失礼させて頂きます。申し訳ありません。ハルカさん」
「う、うん。それじゃあ私も失礼します」
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