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第五部 『帝国』編
406 「解けた誤解」
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「此度の事件を首謀したのは、邪神大陸の悪鬼どもであると判明した!」
再び口を開いたゴード将軍が衝撃発言をした。
急展開すぎてついていけない。
(悪鬼? 急進派と保守派の争い、第三皇子と第二王子の争いはどこに行ったんだ?)
トモエさんに顔を向けるも、首を左右に振るだけ。
寝る前の話にも、そんな事は何もなかった。
慌ててハルカさんの方を見るが、ハルカさんも説明を続けるようだ。
「魔物の動きを神殿騎士団が長らく追跡していたのですが、ようやくその動きを掴む事が出来ました」
「此度の騒動も、魔物どもを炙(あぶ)り出すために仕組んだもの。そして魔物どもは、漁夫の利を得るべくすぐ側まで来て潜伏している!」
その言葉で騒然となる。
何が正しいのか理解できなくなっているんだろう。
オレにも色々教えて欲しい。
けれど悪鬼、つまり悪魔が率いる魔物が近くにいるのなら、後回しだ。
さっきまで、オレ達を捕まえるなり殺そうとしていた『帝国』の兵士達も表情が改まる。
人同士の争いよりも、魔物を倒す事がこの世界の人としての当たり前の行動であり、兵士としての義務だからだ。
そしてそれを見て、ゴード将軍が小さく頷く。
「今この場所は、周辺に潜伏した魔物に半ば囲まれている。だが、我配下の『帝国』軍の増援が駆けつけつつあり、挟み撃ちも十分に可能だ」
「同時に神殿騎士団の一隊も駆けつつあります」
それに合わせるかのように、というか合わせてだろう、すでに翼竜を解放していたヴァイスと、今まで上空をゆっくり旋回していたライムが崖に降り立つ。
「偽りの諍(いさか)いはこれで幕とし、この場の全ての強者の力を合わせ、あまねく人に仇なす鬼どもを滅っそうではないか!」
「おーっ!」
将軍だけあって兵隊を煽る、もとい士気を鼓舞するのがうまい。
そこで呆けてる三剣士カーンも見習って欲しいものだ。
「で、どうする? まだやるか?」
オレの言葉に、キッと睨み返してくる。兜越しなのは相変わらずだけど、今までと違って目力がない。
というか、今日は最初からあんまり怖くはなかった。
「まずは魔物だ! カーン隊集合! 隊列を組み直す!」
それだけ告げると、回れ右して部下の元に戻ってしまった。
これでようやく邪魔者もいなくなったので、ハルカさんの側へと行く。
「間一髪だったよ」
「みたいね。空から先発して正解だったわ。けど、まだはしゃがないでね。ゴード将軍の前よ」
「お気遣い無用。なれど時間はないので、あとは魔物を滅してからにしていただけると助かる。それに目の前で逢引をされては、老骨も気恥ずかしくなると言うもの」
相変わらずな、ゴード将軍のジョークだ。
しかし意外に緊張がほぐれるもので、自然と笑みが溢れる。
それはみんなも同じようだ。
将軍一流の気分転換なのだろう。
「それで、オレ達はどうすれば? 指示をお願いします」
「皆様には、我らが魔物どもを追い込んだ後に、本命の悪鬼を滅していただきたい。私とカーンは兵達を指揮をせねばなりませんし、他にこの強い反応を見せる悪鬼を倒せる者がこの場におりません。合図をするまでお待ち頂きたい」
「そんなに強い悪魔が?」
「邪神大陸から我が国へと侵入している者どもの一部なのですが、あやつらには何度も煮え湯を飲まされました」
「けど、私達が相手にするのは多分簡単よ」
ハルカさんがそう言って、自分の腰元をパンパンと軽く叩く。
そこには黄色いキューブ、ミカンが入っている。
オレも応えるように、クロを入れた袋を軽く叩く。
「こいつらを見せつければ、誘蛾灯に寄って来る飛んで火にいる夏の虫ってわけだ」
「虫をついばむのは、ボクら得意だよ。ねーっ、ヴァイス」
「虫は嫌だなぁ? えっ、ライムはいいの?」
「虫なら火で焼き払えば簡単なんだがなぁ」
「うわっ、みんな好戦的。凄い」
「ここ数日、鬱憤(うっぷん)が溜まっていたからな。そっちもだろ?」
「まあね。それよりシズ、本当に獣人なんだね。マジウケル」
そう言ってシズさんをしげしげと見たあと、ケラケラと笑う。そして脈絡もなくオレにしなだれかかってきた。
「まあその辺は後で色々聞くとして、シズ達と違って私達は楽しい逃避行だったよ。ねーっ」
「いやいや、追いかけられっぱなしで、大変だったでしょ」
トモエさんの行動と一言でハルカさんがジト目になりかけているので、ここはフォローが必須だ。
けど周りは笑っている。
ハルカさんも今は追求する気はないらしく、すぐに真顔になる。
「挨拶遅れてゴメンなさい、ハルカです。詳しくは後でいい?」
そう言えば初対面だった。
けどトモエさんは、しばしハルカさんの顔を見つめるというより凝視する。
「どうかした?」
「う、うん、トモエ、です。あんまり可愛いから見つめちゃった。さあ、急ごう!」
「そ、そうね。じゃあ、さっさと魔物を鎮定して、ショウの反省会をしましょう」
「はーい!」
「えーっ」
締まらない言葉で仕切り直しだ。
ゴード将軍が孫を見るみたいな目なのが、せめてもの救いだ。
その後、まずは魔物の集団が潜伏している地域を中心に、包囲網を狭める動きを開始する。
オレ達は待機だ。
邪魔にならないよう、少し離れた場所へと移動する。
そして移動を終えてすぐにも戦闘が始まるけど、それでも待機だ。
本命が分かってから、オレ達の出番だからだ。
けど、『帝国』軍に包囲された魔物との戦いが始まっても全然連絡がこない。
しかも戦況は有利とは言えない感じだ。
仕方ないので、せめて様子だけでも確認しようと、低空から接近して見ることにする。
軍隊だと命令違反だけど、オレ達は協力者なので文句も言われないだろう。
そして場合によってはすぐに戦闘に移れるよう、ヴァイスとライムに分乗して、すでに始まっている魔物の戦いの現場へと向かう。
オレは低空から飛び降りる予定なのでライムの背に。同じ背には、悠里以外に同じく飛び降りる予定のハルカさんが乗っている。
ヴァイスにはシズさんとトモエさんが乗った。
トモエさんも低空からの降下をやりたがったが、流石にぶっつけはダメだと止められてブーたれていた。
再び口を開いたゴード将軍が衝撃発言をした。
急展開すぎてついていけない。
(悪鬼? 急進派と保守派の争い、第三皇子と第二王子の争いはどこに行ったんだ?)
トモエさんに顔を向けるも、首を左右に振るだけ。
寝る前の話にも、そんな事は何もなかった。
慌ててハルカさんの方を見るが、ハルカさんも説明を続けるようだ。
「魔物の動きを神殿騎士団が長らく追跡していたのですが、ようやくその動きを掴む事が出来ました」
「此度の騒動も、魔物どもを炙(あぶ)り出すために仕組んだもの。そして魔物どもは、漁夫の利を得るべくすぐ側まで来て潜伏している!」
その言葉で騒然となる。
何が正しいのか理解できなくなっているんだろう。
オレにも色々教えて欲しい。
けれど悪鬼、つまり悪魔が率いる魔物が近くにいるのなら、後回しだ。
さっきまで、オレ達を捕まえるなり殺そうとしていた『帝国』の兵士達も表情が改まる。
人同士の争いよりも、魔物を倒す事がこの世界の人としての当たり前の行動であり、兵士としての義務だからだ。
そしてそれを見て、ゴード将軍が小さく頷く。
「今この場所は、周辺に潜伏した魔物に半ば囲まれている。だが、我配下の『帝国』軍の増援が駆けつけつつあり、挟み撃ちも十分に可能だ」
「同時に神殿騎士団の一隊も駆けつつあります」
それに合わせるかのように、というか合わせてだろう、すでに翼竜を解放していたヴァイスと、今まで上空をゆっくり旋回していたライムが崖に降り立つ。
「偽りの諍(いさか)いはこれで幕とし、この場の全ての強者の力を合わせ、あまねく人に仇なす鬼どもを滅っそうではないか!」
「おーっ!」
将軍だけあって兵隊を煽る、もとい士気を鼓舞するのがうまい。
そこで呆けてる三剣士カーンも見習って欲しいものだ。
「で、どうする? まだやるか?」
オレの言葉に、キッと睨み返してくる。兜越しなのは相変わらずだけど、今までと違って目力がない。
というか、今日は最初からあんまり怖くはなかった。
「まずは魔物だ! カーン隊集合! 隊列を組み直す!」
それだけ告げると、回れ右して部下の元に戻ってしまった。
これでようやく邪魔者もいなくなったので、ハルカさんの側へと行く。
「間一髪だったよ」
「みたいね。空から先発して正解だったわ。けど、まだはしゃがないでね。ゴード将軍の前よ」
「お気遣い無用。なれど時間はないので、あとは魔物を滅してからにしていただけると助かる。それに目の前で逢引をされては、老骨も気恥ずかしくなると言うもの」
相変わらずな、ゴード将軍のジョークだ。
しかし意外に緊張がほぐれるもので、自然と笑みが溢れる。
それはみんなも同じようだ。
将軍一流の気分転換なのだろう。
「それで、オレ達はどうすれば? 指示をお願いします」
「皆様には、我らが魔物どもを追い込んだ後に、本命の悪鬼を滅していただきたい。私とカーンは兵達を指揮をせねばなりませんし、他にこの強い反応を見せる悪鬼を倒せる者がこの場におりません。合図をするまでお待ち頂きたい」
「そんなに強い悪魔が?」
「邪神大陸から我が国へと侵入している者どもの一部なのですが、あやつらには何度も煮え湯を飲まされました」
「けど、私達が相手にするのは多分簡単よ」
ハルカさんがそう言って、自分の腰元をパンパンと軽く叩く。
そこには黄色いキューブ、ミカンが入っている。
オレも応えるように、クロを入れた袋を軽く叩く。
「こいつらを見せつければ、誘蛾灯に寄って来る飛んで火にいる夏の虫ってわけだ」
「虫をついばむのは、ボクら得意だよ。ねーっ、ヴァイス」
「虫は嫌だなぁ? えっ、ライムはいいの?」
「虫なら火で焼き払えば簡単なんだがなぁ」
「うわっ、みんな好戦的。凄い」
「ここ数日、鬱憤(うっぷん)が溜まっていたからな。そっちもだろ?」
「まあね。それよりシズ、本当に獣人なんだね。マジウケル」
そう言ってシズさんをしげしげと見たあと、ケラケラと笑う。そして脈絡もなくオレにしなだれかかってきた。
「まあその辺は後で色々聞くとして、シズ達と違って私達は楽しい逃避行だったよ。ねーっ」
「いやいや、追いかけられっぱなしで、大変だったでしょ」
トモエさんの行動と一言でハルカさんがジト目になりかけているので、ここはフォローが必須だ。
けど周りは笑っている。
ハルカさんも今は追求する気はないらしく、すぐに真顔になる。
「挨拶遅れてゴメンなさい、ハルカです。詳しくは後でいい?」
そう言えば初対面だった。
けどトモエさんは、しばしハルカさんの顔を見つめるというより凝視する。
「どうかした?」
「う、うん、トモエ、です。あんまり可愛いから見つめちゃった。さあ、急ごう!」
「そ、そうね。じゃあ、さっさと魔物を鎮定して、ショウの反省会をしましょう」
「はーい!」
「えーっ」
締まらない言葉で仕切り直しだ。
ゴード将軍が孫を見るみたいな目なのが、せめてもの救いだ。
その後、まずは魔物の集団が潜伏している地域を中心に、包囲網を狭める動きを開始する。
オレ達は待機だ。
邪魔にならないよう、少し離れた場所へと移動する。
そして移動を終えてすぐにも戦闘が始まるけど、それでも待機だ。
本命が分かってから、オレ達の出番だからだ。
けど、『帝国』軍に包囲された魔物との戦いが始まっても全然連絡がこない。
しかも戦況は有利とは言えない感じだ。
仕方ないので、せめて様子だけでも確認しようと、低空から接近して見ることにする。
軍隊だと命令違反だけど、オレ達は協力者なので文句も言われないだろう。
そして場合によってはすぐに戦闘に移れるよう、ヴァイスとライムに分乗して、すでに始まっている魔物の戦いの現場へと向かう。
オレは低空から飛び降りる予定なのでライムの背に。同じ背には、悠里以外に同じく飛び降りる予定のハルカさんが乗っている。
ヴァイスにはシズさんとトモエさんが乗った。
トモエさんも低空からの降下をやりたがったが、流石にぶっつけはダメだと止められてブーたれていた。
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