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第二部
129「主従契約(2)」
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そして朝食後、さっそく準備に入った。
みんなに見られるので、特に女性陣はそれなりに身だしなみを整えることになった。
ハルカさんはこの神殿にあった道具を借り、オレたち3人は予備の法衣などを借りた。
また、祭壇などの準備も出来る限り行う。
もっとも、本来は別に何もしなくてもいいので、ここの神官達も取りあえず感がにじみ出ている。
通常の儀式等だと準備に何日もかけたりするが、あくまで個人の神官がすることだし、イレギュラーな儀式なので簡単でもいいだろうという感じだ。
それでも見た目をそれなりに整えると、何となく儀式っぽい雰囲気は醸し出された。
オレとハルカさんの出会いの時と比べると、まるで違っている。
しかしオレからすると、今回の方がちょっと茶番っぽく思え、二人でオレが何も分からないまま契約していた時の方が、どこか神聖で尊いように思えた。
ぼーっと半ば部外者の感覚でそんな事を思っていると、他の人たちも揃ってくる。
アクセルさんも、いつもより20%増しなキラキラした身なりだ。見届け人となる神官もそれらしい儀式用の服を着込んでいる。
そして舞台映えするアクセルさんが宣言する事で、主従の契約の儀式が始まる。
ギャラリーの数は、この後儀式治癒もするということで昨夜よりさらに集められていて、兵士を中心に100人くらいに増えていた。
神殿正面の正面扉の前、石段で少し高くなっている場所に、儀式を行う人たちが並んでいる。オレもその一人で、二回目の契約という事で最後の順番に指定されていた。
「これより、神殿巡察官ルカ殿とその供達による主従の契約をとり行う。この場にいる全ての者が証人となる事を神々に宣誓するものである」
アクセルさんの宣誓で儀式が始まる。
立会人、見届け人それぞれ名乗り儀式に加わり、儀式に使う法具に血を一滴たらす。
その都度法具が淡く光るので、それだけで魔法の契約が行われていることになるのだろう。
オレの時は、ハルカさんに額をキスされ魔法をかけられただけだけど、形式として色々と手順があるみたいだ。
順番はレナ、シズさん、そしてオレだ。ボクっ娘が最初なのは、疾風の騎士というこの世界でも希少な存在であるという点もあるが、何より人だからだ。
獣人のシズさんが最初にするより、人の世界で儀式を行うなら角が立たないだろうという配慮だ。
そして簡単に説明された通りに、壇上の真ん中にいるハルカさんのもとにボクっ娘が歩み寄り、その前で片膝を付く。
ハルカさんはボクっ娘の顔を両手に取って顔を上げさせ、自らもお辞儀するように少し姿勢を下げ、そして主従契約の魔法を発動させつつ額へと祝福のキスをする。
そうすると二人を淡い魔力の輝きが覆い、そして体に吸い込まれるように消えていく。
儀式と言ってもこれだけだ。
またアクセルさんと神官とは、ハルカさんとの間に予め魔法的なやり取りが交わされていて、これが本契約の準備になる。
そして契約の時に、立会人、見届け人も若干だけど二人から魔力の細い帯が飛ぶ事で契約が一体化される。
続いてシズさんが同じようにするが、ボクっ娘とする時は緩めの百合っぽいが、こちらはどちらかというとガチの同性愛、レズっぽい。
一部の『ダブル』も同じように感じたのか、低く小さくだけど感嘆のため息が漏れる。
そしていよいよオレの番だ。
少し男子の『ダブル』からの視線が痛い気がする。
けど、治癒の儀式で注目を集めるのにも慣れていたので、特に気負うでもなく先の二人と同じようにする。
そして定位置に付いて、ハルカさんが腰を曲げてきたところでささやいた。
「本当にいいの? 結構大変なことなのよ」
「結婚するわけじゃないだろ。もしそうなら、すげー嬉しいけど」
「バーカ。じゃ、遠慮なくいくわよ」
「おう。望むところだ」
そう言うとハルカさんが息を整え、魔法の発動を行う。
そしてまずはハルカさんが淡い魔力の輝きで覆われ、彼女の顔が急接近してその唇がオレの額に触れる。
前の二人よりも長いキスだった。
しかもそれで終わらず、一度顔を話すと今度はオレよりも低い位置に頭を持っていって、今度は胸の、心臓の辺りにも唇を触れる。
と言っても、マントの下の上半身が素っ裸というわけではない。
それでも薄いシャツ一枚だけなので、彼女の唇が触れたのが布越しに感じる事ができた。
さすがにちょとエロいんじゃないだろうかと思えるが、こっちの人たちは真剣な眼差しを向けているので妙なことを思うこともできなかった。
そして少し暖かい感触を心臓の上の辺りに感じるが、しばらくそのままの姿勢を維持する。淡い魔力の輝きも二人を包んでいる。
ちなみに、この二回のキスの場所には意味が有る。
額へのキスは祝福を、胸へのキスは所有を現すそうだ。
(つまりオレは、魔法的にハルカさんの所有物になった事になるのかな?)
ぼんやりと思っていると、魔力の輝きが拡散していくところだった。前の二人よりも派手で多めなのは、二回目の契約のためなのだろう。
そして輝きが消えると、ハルカさんがゆっくりと立ち上がり、アクセルさんと神官にそれぞれ片膝をついて、胸の前で両手の甲を外に向ける形で合わせる神殿の礼をする。
そして先に儀式を済ませた二人も再び前に出てきた全員で並んだところで、ハルカさんが衆目に対して向く。
「皆様、無事に主従の儀式終える事が出来ました。証人となって下さった事、深く感謝申し上げます」
と言って、立ったまま神殿の礼をとる。それに合わせてオレたち3人も、同じように神殿の礼をとる。
別に見世物ではないので拍手も喝采もないが、これで儀式は終わりだ。
しかし、やるべき事はこれで終わりではない。むしろ他の人たちにとっては、これからが本番だ。
ハルカさんも、礼を終えると周囲を見渡しつつ宣言する。
「それでは引き続き、癒しの儀式魔法を行使します。既に準備はしてあるので、神殿の者達の言葉に従い、それぞれの位置についてください」
そう言うとざわざわと動き出す。
昨日までの戦闘で以外に多数の負傷者を出している上に、ハルカさんが来るのを見越して応急処置や簡単な治癒に止めていた者も少なくない。
負傷の程度も、全身包帯まみれの者や四肢欠損などかなり酷い者もいる。ドラゾンの毒の息で患部が腐っている人もいた。
今までの戦闘で『ダブル』を含めて死者も出ているが、もう葬られているしさすがに対象外だ。
けど今回は、ハルカさん以外にもシズさんも魔法自体に参加する。シズさんはファースト・スペルの治癒や解毒などの魔法が使えるそうだ。
前のような事があったので、これからはハルカさん以外にも治癒の魔法が使える人が増えるのは凄い安心要素だ。
オレとボクっ娘は、今回は魔力タンク役だ。ボクっ娘は早速役に立てると、ちょっとはしゃぎ気味なので、結構ダルくなると脅しておいた。
そして儀式をする前の短いミーティングでハルカさんが言った通りの魔法が展開される。
「あのね、折角だから自分の力、魔力がどれだけ高くなっているか実際見ておきたいの。それで出来る限り派手にいきたいんだけど、構わないかしら?」
「魔力ならいくらでも引っ張り出してくれていいぞ」
「うん、ボクも」
「私は諸々の魔法の補助だな。汎用魔法の箇所は構築や拡大の手助けもできると思う」
「ありがとう。けど、私の力を知りたいのもあるし、シズとはまだ一緒に練習した事がないから、今回シズは抑えぎみでお願い」
「心得た」
そんなやり取りをしつつ、それぞれ既に描いてある簡易魔法陣の四隅に陣取る。
残念ながらハルカさんの対面は、魔法自体を補佐するシズさんが陣取っていて、オレはハルカさんの右側に突っ立つ。
魔法陣の大きさは直径10メートルを超えており、いつも通り中心に近づくほど重傷者が寝かされたりしている。
そしてオレにとって見慣れた光景が再現されたのだけど、色々と派手に大きくなっていたので、オレでも軽く驚かされた。
魔法陣内だけでなく、周りを囲んでいた人たちにも治癒の魔法の効果が及んでいた。
しかもその広がりは、オレでさえ今まで見たことないほど広かった。その上、効果もかなり高いようだ。
なんだか、キラキラした雪か紙吹雪のようなものがかなり派手に舞っている。
そして他の人たちは、オレ以上に驚いていた。
魔法が終わった後で、神々とハルカさんに感謝を捧げるこっちの人たちも一人や二人ではない。
人によっては聖女だと讃えるほどだ。
それらに表面上は冷静に応じていたハルカさんだけど、目線で早く人目のないところに行こうと強く促していた。
だから、立て続けての魔法で魔力を消耗して疲れたと言って、オレたちを連れてプライベートが確保されている神殿内の一室へと退散する。
しかも神殿の人々も全員外で作業などしているので、しばらく神殿は貸切状態だから精神的にもゆっくりできそうだ。
みんなに見られるので、特に女性陣はそれなりに身だしなみを整えることになった。
ハルカさんはこの神殿にあった道具を借り、オレたち3人は予備の法衣などを借りた。
また、祭壇などの準備も出来る限り行う。
もっとも、本来は別に何もしなくてもいいので、ここの神官達も取りあえず感がにじみ出ている。
通常の儀式等だと準備に何日もかけたりするが、あくまで個人の神官がすることだし、イレギュラーな儀式なので簡単でもいいだろうという感じだ。
それでも見た目をそれなりに整えると、何となく儀式っぽい雰囲気は醸し出された。
オレとハルカさんの出会いの時と比べると、まるで違っている。
しかしオレからすると、今回の方がちょっと茶番っぽく思え、二人でオレが何も分からないまま契約していた時の方が、どこか神聖で尊いように思えた。
ぼーっと半ば部外者の感覚でそんな事を思っていると、他の人たちも揃ってくる。
アクセルさんも、いつもより20%増しなキラキラした身なりだ。見届け人となる神官もそれらしい儀式用の服を着込んでいる。
そして舞台映えするアクセルさんが宣言する事で、主従の契約の儀式が始まる。
ギャラリーの数は、この後儀式治癒もするということで昨夜よりさらに集められていて、兵士を中心に100人くらいに増えていた。
神殿正面の正面扉の前、石段で少し高くなっている場所に、儀式を行う人たちが並んでいる。オレもその一人で、二回目の契約という事で最後の順番に指定されていた。
「これより、神殿巡察官ルカ殿とその供達による主従の契約をとり行う。この場にいる全ての者が証人となる事を神々に宣誓するものである」
アクセルさんの宣誓で儀式が始まる。
立会人、見届け人それぞれ名乗り儀式に加わり、儀式に使う法具に血を一滴たらす。
その都度法具が淡く光るので、それだけで魔法の契約が行われていることになるのだろう。
オレの時は、ハルカさんに額をキスされ魔法をかけられただけだけど、形式として色々と手順があるみたいだ。
順番はレナ、シズさん、そしてオレだ。ボクっ娘が最初なのは、疾風の騎士というこの世界でも希少な存在であるという点もあるが、何より人だからだ。
獣人のシズさんが最初にするより、人の世界で儀式を行うなら角が立たないだろうという配慮だ。
そして簡単に説明された通りに、壇上の真ん中にいるハルカさんのもとにボクっ娘が歩み寄り、その前で片膝を付く。
ハルカさんはボクっ娘の顔を両手に取って顔を上げさせ、自らもお辞儀するように少し姿勢を下げ、そして主従契約の魔法を発動させつつ額へと祝福のキスをする。
そうすると二人を淡い魔力の輝きが覆い、そして体に吸い込まれるように消えていく。
儀式と言ってもこれだけだ。
またアクセルさんと神官とは、ハルカさんとの間に予め魔法的なやり取りが交わされていて、これが本契約の準備になる。
そして契約の時に、立会人、見届け人も若干だけど二人から魔力の細い帯が飛ぶ事で契約が一体化される。
続いてシズさんが同じようにするが、ボクっ娘とする時は緩めの百合っぽいが、こちらはどちらかというとガチの同性愛、レズっぽい。
一部の『ダブル』も同じように感じたのか、低く小さくだけど感嘆のため息が漏れる。
そしていよいよオレの番だ。
少し男子の『ダブル』からの視線が痛い気がする。
けど、治癒の儀式で注目を集めるのにも慣れていたので、特に気負うでもなく先の二人と同じようにする。
そして定位置に付いて、ハルカさんが腰を曲げてきたところでささやいた。
「本当にいいの? 結構大変なことなのよ」
「結婚するわけじゃないだろ。もしそうなら、すげー嬉しいけど」
「バーカ。じゃ、遠慮なくいくわよ」
「おう。望むところだ」
そう言うとハルカさんが息を整え、魔法の発動を行う。
そしてまずはハルカさんが淡い魔力の輝きで覆われ、彼女の顔が急接近してその唇がオレの額に触れる。
前の二人よりも長いキスだった。
しかもそれで終わらず、一度顔を話すと今度はオレよりも低い位置に頭を持っていって、今度は胸の、心臓の辺りにも唇を触れる。
と言っても、マントの下の上半身が素っ裸というわけではない。
それでも薄いシャツ一枚だけなので、彼女の唇が触れたのが布越しに感じる事ができた。
さすがにちょとエロいんじゃないだろうかと思えるが、こっちの人たちは真剣な眼差しを向けているので妙なことを思うこともできなかった。
そして少し暖かい感触を心臓の上の辺りに感じるが、しばらくそのままの姿勢を維持する。淡い魔力の輝きも二人を包んでいる。
ちなみに、この二回のキスの場所には意味が有る。
額へのキスは祝福を、胸へのキスは所有を現すそうだ。
(つまりオレは、魔法的にハルカさんの所有物になった事になるのかな?)
ぼんやりと思っていると、魔力の輝きが拡散していくところだった。前の二人よりも派手で多めなのは、二回目の契約のためなのだろう。
そして輝きが消えると、ハルカさんがゆっくりと立ち上がり、アクセルさんと神官にそれぞれ片膝をついて、胸の前で両手の甲を外に向ける形で合わせる神殿の礼をする。
そして先に儀式を済ませた二人も再び前に出てきた全員で並んだところで、ハルカさんが衆目に対して向く。
「皆様、無事に主従の儀式終える事が出来ました。証人となって下さった事、深く感謝申し上げます」
と言って、立ったまま神殿の礼をとる。それに合わせてオレたち3人も、同じように神殿の礼をとる。
別に見世物ではないので拍手も喝采もないが、これで儀式は終わりだ。
しかし、やるべき事はこれで終わりではない。むしろ他の人たちにとっては、これからが本番だ。
ハルカさんも、礼を終えると周囲を見渡しつつ宣言する。
「それでは引き続き、癒しの儀式魔法を行使します。既に準備はしてあるので、神殿の者達の言葉に従い、それぞれの位置についてください」
そう言うとざわざわと動き出す。
昨日までの戦闘で以外に多数の負傷者を出している上に、ハルカさんが来るのを見越して応急処置や簡単な治癒に止めていた者も少なくない。
負傷の程度も、全身包帯まみれの者や四肢欠損などかなり酷い者もいる。ドラゾンの毒の息で患部が腐っている人もいた。
今までの戦闘で『ダブル』を含めて死者も出ているが、もう葬られているしさすがに対象外だ。
けど今回は、ハルカさん以外にもシズさんも魔法自体に参加する。シズさんはファースト・スペルの治癒や解毒などの魔法が使えるそうだ。
前のような事があったので、これからはハルカさん以外にも治癒の魔法が使える人が増えるのは凄い安心要素だ。
オレとボクっ娘は、今回は魔力タンク役だ。ボクっ娘は早速役に立てると、ちょっとはしゃぎ気味なので、結構ダルくなると脅しておいた。
そして儀式をする前の短いミーティングでハルカさんが言った通りの魔法が展開される。
「あのね、折角だから自分の力、魔力がどれだけ高くなっているか実際見ておきたいの。それで出来る限り派手にいきたいんだけど、構わないかしら?」
「魔力ならいくらでも引っ張り出してくれていいぞ」
「うん、ボクも」
「私は諸々の魔法の補助だな。汎用魔法の箇所は構築や拡大の手助けもできると思う」
「ありがとう。けど、私の力を知りたいのもあるし、シズとはまだ一緒に練習した事がないから、今回シズは抑えぎみでお願い」
「心得た」
そんなやり取りをしつつ、それぞれ既に描いてある簡易魔法陣の四隅に陣取る。
残念ながらハルカさんの対面は、魔法自体を補佐するシズさんが陣取っていて、オレはハルカさんの右側に突っ立つ。
魔法陣の大きさは直径10メートルを超えており、いつも通り中心に近づくほど重傷者が寝かされたりしている。
そしてオレにとって見慣れた光景が再現されたのだけど、色々と派手に大きくなっていたので、オレでも軽く驚かされた。
魔法陣内だけでなく、周りを囲んでいた人たちにも治癒の魔法の効果が及んでいた。
しかもその広がりは、オレでさえ今まで見たことないほど広かった。その上、効果もかなり高いようだ。
なんだか、キラキラした雪か紙吹雪のようなものがかなり派手に舞っている。
そして他の人たちは、オレ以上に驚いていた。
魔法が終わった後で、神々とハルカさんに感謝を捧げるこっちの人たちも一人や二人ではない。
人によっては聖女だと讃えるほどだ。
それらに表面上は冷静に応じていたハルカさんだけど、目線で早く人目のないところに行こうと強く促していた。
だから、立て続けての魔法で魔力を消耗して疲れたと言って、オレたちを連れてプライベートが確保されている神殿内の一室へと退散する。
しかも神殿の人々も全員外で作業などしているので、しばらく神殿は貸切状態だから精神的にもゆっくりできそうだ。
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