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第一部
042「アンデッド退治(2)」
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「で、そろそろ真面目な話をしてもらえる?」
「そうだね。でも真面目な話、本当に来てくれて助かった」
それまでの笑顔は消えるが、真面目顔もイケメンすぎる。良く似た姉妹がいないか聞きたくなるレベルだ。
「この辺りうろついてたから、遣いをくれれば良かったのに」
「緊急で遣いを出す時間すらなくてね」
「そんなに急だったの? で、助かるって事は戦力足りて無い?」
「ああ、足りて無いね。本土から増援を呼んでいるが、間に合いそうにない。神殿自体も、使いが都に向かっている段階だ。それに詳細は我々も情報収集中で、今は最終報告待ちだ」
「私たち、ついさっき道中で死骨に遭遇したわよ」
「森から出ていたかい?」
そこはオレが首を横に振る。森から出てきてたらヤバいみたいだ。
「そうか、じゃあまだこの辺りは大丈夫だな。
どうにも、ノール王国戦争後の鎮定と鎮魂が甘かったらしい。あの国の墓や遺棄死体から、かなりの数の亡者が溢れ出したみたいだ。この近在の村もその一派に喰われたんだけど、ここの隣村は森の中の閉じた村なので、一ヶ月近く誰も気づかなかった。
今その村にも、亡者がかなり集結している。他にも、森など暗い場所にはかなりの数が彷徨って犠牲者を増やしつつあって、あわせて3つの村が亡者に喰われた」
アンデッドがまるで災害状態だ。
いや、この場合は本当にアンデッド・ハザードでいいのかな。
「なら、どこかに高位の亡者がいて先導しているのかしら?」
「恐らく、どこかに何かいるだろう。悪霊くらいならいいんだけどね」
「私たちはどうしたらいい?」
「とにかく急の事で人手が足りてない。道案内や見張りなどに、周辺の村人を使わないといけないくらいだ。
しかも、南のランバルト王国が今度こそ旧ノール王国の南部を併合しようと動いているせいで、国の方は牽制のためそっちにも兵力を割かれている」
アンデッドに加えて国同士の争いまであるとか、正直やってられない気がする。
けど、アクセルさんの表情から察するに、それほど変な事でもないようだ。
「戦力を集中して、順番に喰われた村を鎮魂する時間はある?」
「時間的に無理だね。今日は満月だから亡者も活発だ。一箇所を鎮定している間に、他の場所の亡者が移動する可能性の方が高い。今晩中にできるだけ一度に鎮定する方が良いだろう。
ただ、ボクの領地からも神官を呼んできているが、ルカのような高位の者がいない。出来ればルカに一ヶ所任せたい。溢れてくるヤツらを叩いてくれるだけでいい。……で、ショウは戦力と考えていいのかな?」
アクセルさんが、オレに期待ありげな視線を向けてくる。
それに彼女が、軽く眉を上げて面白がるように言う。
「この2週間ほど私が鍛えてあるから大丈夫よ。さっきも、死骨(スケルトン)の小さな群れを一人で蹴散らしてたから」
「ルカのお墨付きなら安心して任せられるよ。よろしくお願いする」
ハルカさんの冗談まじりの言葉にも、アクセルさんはあくまで真摯に頭を下げる。ちょっと悪い気がするくらい真面目だ。それだけ事態が深刻なんだと感じる。
彼女も同じように感じたらしく、少しバツの悪顔をすると話題を変える。
「それで、一ヶ所あたりの数は?」
「個体ごとの脅威度合いを考えなければ、溢れてくる数は100体程度。多いと150~200体くらいになるかもしれない。
もとの村の規模で多少変化するが、連中が拠点にしているそれぞれの廃村からあふれた分はかなり叩いたので、極端に多くはない筈だ」
「150~200か……。分かったわ。私とショウ君で一ヶ所鎮魂しましょう」
「助かる。恩に着るよ」
「残りは?」
いちおうオレも参加しているので、それっぽい事を聞いておく。
というか、他に余裕があるなら、こっちにも少しは人を回してほしいという気持ちを込めた言葉だった。2人で150体の相手とか、あり得ない数にしか思えない。
「ボクと直属で一ヶ所を。別働隊でもう一ヶ所。別働隊の方は、少し離れているので既に行動を開始している。あと、二人に鎮定してもらう廃村を封鎖させる予定だった隊を予備隊に変更して、周囲の警戒とこぼれた分の鎮定を行うつもりだ。
ただボクと一部の騎士と兵士以外は、あまり戦いには慣れていない。連れてきた神官も鎮魂と治癒のためで戦闘には巻き込めない。魔法が使える魔導騎士もボク一人だ。当然、魔法使いもいない。
それでだけど、ボク達が二人を補助しやすいように、ルカ達はこの近くの村を頼む。予備隊も援護に入りやすい配置にするつもりだ」
「了解です。けど、ギリギリってことですね」
「申し訳ないがその通りだ。ルカとショウが来てくれて本当に良かった。神々へ感謝してもし足りないよ」
「あんまりアテにしないで下さいよ」
「大丈夫、ショウなら出来るさ。ボクが保証する」
初対面のイケメンに、オレの強さを保証されてしまった。それほどハルカさんを信頼しているという事なのだろう。オレの面食らったような顔に、彼女も面白げな表情を浮かべている。
けど、それで話は決まった。
ちょうど偵察に出ていた兵士たちも戻ってきたので、その後主要な人を交えての詰めの作戦会議をすると、すぐに行動に移った。
時間はもう夕闇が迫っていたが、アンデッドは昼間は廃屋や木々の影など日陰にばらけて隠れていて探すだけで一苦労なので、まとめて叩くのなら宵の口辺りが一番らしい。
オレと彼女にとって急すぎる話だけど、今夜が勝負だ。
(今日は、寝る暇あるかな……)
なかなか沈まない北極圏の大陽を見ながら思ったのはそんな事だった。
「そうだね。でも真面目な話、本当に来てくれて助かった」
それまでの笑顔は消えるが、真面目顔もイケメンすぎる。良く似た姉妹がいないか聞きたくなるレベルだ。
「この辺りうろついてたから、遣いをくれれば良かったのに」
「緊急で遣いを出す時間すらなくてね」
「そんなに急だったの? で、助かるって事は戦力足りて無い?」
「ああ、足りて無いね。本土から増援を呼んでいるが、間に合いそうにない。神殿自体も、使いが都に向かっている段階だ。それに詳細は我々も情報収集中で、今は最終報告待ちだ」
「私たち、ついさっき道中で死骨に遭遇したわよ」
「森から出ていたかい?」
そこはオレが首を横に振る。森から出てきてたらヤバいみたいだ。
「そうか、じゃあまだこの辺りは大丈夫だな。
どうにも、ノール王国戦争後の鎮定と鎮魂が甘かったらしい。あの国の墓や遺棄死体から、かなりの数の亡者が溢れ出したみたいだ。この近在の村もその一派に喰われたんだけど、ここの隣村は森の中の閉じた村なので、一ヶ月近く誰も気づかなかった。
今その村にも、亡者がかなり集結している。他にも、森など暗い場所にはかなりの数が彷徨って犠牲者を増やしつつあって、あわせて3つの村が亡者に喰われた」
アンデッドがまるで災害状態だ。
いや、この場合は本当にアンデッド・ハザードでいいのかな。
「なら、どこかに高位の亡者がいて先導しているのかしら?」
「恐らく、どこかに何かいるだろう。悪霊くらいならいいんだけどね」
「私たちはどうしたらいい?」
「とにかく急の事で人手が足りてない。道案内や見張りなどに、周辺の村人を使わないといけないくらいだ。
しかも、南のランバルト王国が今度こそ旧ノール王国の南部を併合しようと動いているせいで、国の方は牽制のためそっちにも兵力を割かれている」
アンデッドに加えて国同士の争いまであるとか、正直やってられない気がする。
けど、アクセルさんの表情から察するに、それほど変な事でもないようだ。
「戦力を集中して、順番に喰われた村を鎮魂する時間はある?」
「時間的に無理だね。今日は満月だから亡者も活発だ。一箇所を鎮定している間に、他の場所の亡者が移動する可能性の方が高い。今晩中にできるだけ一度に鎮定する方が良いだろう。
ただ、ボクの領地からも神官を呼んできているが、ルカのような高位の者がいない。出来ればルカに一ヶ所任せたい。溢れてくるヤツらを叩いてくれるだけでいい。……で、ショウは戦力と考えていいのかな?」
アクセルさんが、オレに期待ありげな視線を向けてくる。
それに彼女が、軽く眉を上げて面白がるように言う。
「この2週間ほど私が鍛えてあるから大丈夫よ。さっきも、死骨(スケルトン)の小さな群れを一人で蹴散らしてたから」
「ルカのお墨付きなら安心して任せられるよ。よろしくお願いする」
ハルカさんの冗談まじりの言葉にも、アクセルさんはあくまで真摯に頭を下げる。ちょっと悪い気がするくらい真面目だ。それだけ事態が深刻なんだと感じる。
彼女も同じように感じたらしく、少しバツの悪顔をすると話題を変える。
「それで、一ヶ所あたりの数は?」
「個体ごとの脅威度合いを考えなければ、溢れてくる数は100体程度。多いと150~200体くらいになるかもしれない。
もとの村の規模で多少変化するが、連中が拠点にしているそれぞれの廃村からあふれた分はかなり叩いたので、極端に多くはない筈だ」
「150~200か……。分かったわ。私とショウ君で一ヶ所鎮魂しましょう」
「助かる。恩に着るよ」
「残りは?」
いちおうオレも参加しているので、それっぽい事を聞いておく。
というか、他に余裕があるなら、こっちにも少しは人を回してほしいという気持ちを込めた言葉だった。2人で150体の相手とか、あり得ない数にしか思えない。
「ボクと直属で一ヶ所を。別働隊でもう一ヶ所。別働隊の方は、少し離れているので既に行動を開始している。あと、二人に鎮定してもらう廃村を封鎖させる予定だった隊を予備隊に変更して、周囲の警戒とこぼれた分の鎮定を行うつもりだ。
ただボクと一部の騎士と兵士以外は、あまり戦いには慣れていない。連れてきた神官も鎮魂と治癒のためで戦闘には巻き込めない。魔法が使える魔導騎士もボク一人だ。当然、魔法使いもいない。
それでだけど、ボク達が二人を補助しやすいように、ルカ達はこの近くの村を頼む。予備隊も援護に入りやすい配置にするつもりだ」
「了解です。けど、ギリギリってことですね」
「申し訳ないがその通りだ。ルカとショウが来てくれて本当に良かった。神々へ感謝してもし足りないよ」
「あんまりアテにしないで下さいよ」
「大丈夫、ショウなら出来るさ。ボクが保証する」
初対面のイケメンに、オレの強さを保証されてしまった。それほどハルカさんを信頼しているという事なのだろう。オレの面食らったような顔に、彼女も面白げな表情を浮かべている。
けど、それで話は決まった。
ちょうど偵察に出ていた兵士たちも戻ってきたので、その後主要な人を交えての詰めの作戦会議をすると、すぐに行動に移った。
時間はもう夕闇が迫っていたが、アンデッドは昼間は廃屋や木々の影など日陰にばらけて隠れていて探すだけで一苦労なので、まとめて叩くのなら宵の口辺りが一番らしい。
オレと彼女にとって急すぎる話だけど、今夜が勝負だ。
(今日は、寝る暇あるかな……)
なかなか沈まない北極圏の大陽を見ながら思ったのはそんな事だった。
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