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宵闇の唄
その七
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それにしてもあれだな、ピーターは迷宮の時とかなり雰囲気が違うな。
まぁあの装備が特徴的過ぎたんだが。
ピーターは迷宮の時のような装備はしていないが、目立たないようにはしてあるが首元に何かのチューブ状の接続器具があり、両手は手袋に覆われていて飲み食いする時も外さない。
彼の腕が硬い物にぶつかると金属が何かにぶつかる音が響いた。
こいつの体ってどうなっているのだろう?
アンプルを使って異能を上昇させているのだろうということぐらいはわかるが、それ以上は俺の知識では推測すら出来ない。
新大陸連合国は勇者血統の生まれない呪われた地であると歴史の授業で習ったが、未だにそんなことが本当に起きるものなのか俺にはちょっと信じられない気持ちもあった。
確かに人間がある程度手を加えはするが、勇者と呼ばれる遺伝性のある異能者は世界各地で生まれている。
学者に言わせれば人類が同時期に同じ方向性の危機感を持てば持つほど勇者は産まれて来やすくなるのだと言うことだ。
現代は各国に紐付けされた勇者が存在するので新たな勇者の血統は生まれにくいとも言っていたな。
つまり新大陸連合国の受けた呪いは、大陸に住む人類のみの危機感や意識の総意を狙って霧散させる程強力で指向性に優れているということになる。
オカルト学の奇人変人な先生は呪いというのは公開されることによって強固になるとも言っていた。
新大陸連合国が呪いの中にあると、世界中の教科書に載っているような現状では呪いの効果が高まりこそすれ減ることはないという認識でいいのだろうか?
でもそうとわかっていれば学ばせないようにすればいいだけなんじゃないか?
相変わらずオカルト学はよくわからない学問だ。
「なあピーター、新大陸では異能者は生まれるんだよな?」
「はイ、実は私も異能者ね」
「へー」
水を操る力だっけ? と、俺は思い出す。
以前迷宮に一緒に潜った時に披露した力だ。
無数の小さな水滴が真球の珠となって宙を飛び交うその様は、恐ろしいというよりも綺麗だった。
とは言え、極端に圧縮されたその水の珠は同じ質量の鉄の玉より重いのだとか。
高速で飛び交うそんなものに打ち抜かれたら穴だらけになる以外ないだろう。
考えれば凶悪な能力だ。
「私の異能は本来大したことない力。単に液体を固定化スるだけネ」
そう言うと、ピーターはおもむろにグラスを傾ける。
こぼれたと思った酒は空中に浮かび、ふるふると震えている。
「美味そうだな」
そのままパクリと口にしたらどんな感じになるのだろう? と好奇心が働いたが、これはいわばピーターの武器だ。
いくらでも換えは効くが、コントロールはピーターにあるのだ。
そんな物を口にするのはピーターに命を握られるのと変わらない。
「綺麗ですね」
そんな俺の葛藤を他所に、ピーターの本来の力を見て、伊藤さんが乗り出すようにその宙に浮かぶ琥珀色の酒を見る。
それを受けてか、酒は花弁の多い小さな花となり、くるりくるりと回りながらとゆっくりとその花弁をほころばせた。
やがてその花は花びらを散らすと、その散った花びらが集まって今度は小さな鳥となり、伊藤さんの肩に止まる。
そこから更に翼を広げてすいと飛び、元のコップに収まり酒に戻った。
「すごい!」
伊藤さんが拍手をする。
「お~」
俺も思わず拍手をした。
気づくと全員で拍手をしていた。
指笛まで飛び出す。
と、カウンターから咳払いが聞こえた。
さすがに騒ぎ過ぎたらしい。
全員が居住まいを正し、おとなしく再び飲み食いを始めた。
こそこそとピーターは俺にささやく。
「なかなか楽しいダろ? うちの弟の保証付きダ。私の能力なんテ本来こんなもの。戦いに向いてないものなんダ」
「別に戦えればすごいって訳じゃないだろ。俺はここまで繊細に能力を使いこなす異能者を初めて見たぞ」
「すごいです。私も初めてです」
「そ、そう、ダロ?」
俺と伊藤さんの心からの賞賛に、さすがのピーターも少し照れたようだった。
「弟モそう言ってくれてネ、兄さんはオレのヒーローだって、でも」
ピーターの声がふっと沈む。
「でも、やっぱりヒーローはつよくなきゃイけなかったんだよ。結局たった一人ノ弟も助けられなかったんだかラな」
なるほど、ピーターはストイックなまでにヒーローたらんとしていると思っていたが、弟さんを助けられなかった後悔からだったんだな。
これほど繊細な自分の力に対するコントロール能力は、決して元々の物ではないだろう。
能力者の多くは自分の能力を持て余しているし、使いこなしている者のほとんども大雑把なものだ。
ピーターの先ほどの一連の操作はまさしく神懸っていた。
この繊細なコントロールと装備による強化、アンプルによる限界を越えたパワーが相まって、迷宮でのあのピーターの戦いがあったということか。
そこまで考えて、ピーターがじっと俺を見ていることに気づく。
「ん?」
「我が国にハ本物はいない、みんな私のようナまがいものダ。でも、だからと言って本物に遅れを取るつもりはない」
俺はうなずいた。
ピーターの力は本物だし、決して他所の勇者血統《ほんもの》に劣るものではない。
と言うか、要するに呪いってその能力を引き継げないだけの話だろ。
そこで、ふと気づいた。
新大陸連合の呪いの正体に思い至ったのである。
「そうか唯一無二か、英雄の呪いなんだ」
それは同じ英雄は生まれないというある種の思い込みを利用した呪いの一種だ。
その昔、英雄自身が創り出したと言われる呪いで、物語の最後をこう結ぶだけでいい、『このような素晴らしい英雄はもはや生まれることはないだろう』と。
まぁ本当はもっと複雑なものなんだが、きっかけはこの程度のもので十分だ。
人々の感動に浸った意識は迷わずこれに同意する。
自分自身を神格化するために行ったと言われる呪法だが、それに近いなんらかの呪いがあの大陸に施されていると考えていいだろう。
だからこそ新大陸では勇者は生まれてもそれが受け継がれることはない。
この手の公開形式の呪いというものはやっかいで、知る人が増える程呪いは強力になる。
呪いを沈静化するには密かに関係資料を全て消し去るしかない。
新大陸の呪いは世界中に知られた時点でもはや手遅れとなったのだろう。
「ピーターさんはまがいものとかじゃないと思います。本物のヒーローですよ。ピーターさんと弟さんが二人で成し遂げた偉業です」
ふいに、感動した風の伊藤さんがピーターにそう言った。
その声は確信に満ちていて、それ以外に正しい言葉などないと思わせるような力強さが感じられた。
しかし、なんで今のを見ただけでヒーローと判断したんだろう?
明らかに戦い向きの能力には見えないよな。
ああ、そうか冒険者への援助の話か。
「俺と、弟ノ?」
「そうですよ、だって弟さんがいたからこそ、ピーターさんは自分を磨いたのでしょう。それは二人の力です」
「二人の力」
ピーターは驚きと同時に喜びを顔に浮かべていた。
まるで長年の憂いが無くなったというような顔だな。
実際そうなのかもしれない。
ピーターはきっと自分でもそう信じて戦ってきたんだろう。
だけど、それをきっと誰かに認めて欲しかったんだ。
今は亡き弟の力も自分の中にあるのだと。
「そう、確かに間違いない。これは俺と弟の二人で手に入れた力です。……ありがとうございます、あねさん」
「えっ、あねさんって?」
「デートのおじゃまをしてしマってスミマセンでした。さっさと邪魔者は退散シますね。おい、おまえラ、そろそろ場所を代えるゾ!」
「イエーイ!」
「ヤー!」
「オッケーアニキ!」
そして賑やかな連中はぞろぞろと自分達の分の会計を済ませると波が引くように去っていった。
撤収早い! さすがは冒険者と言うべきか。
てか、食事は纏めて頼んでたから全部あいつらが支払っていったっぽい。
ほんと見掛けと違って気のいい奴らだったな。
まぁあの装備が特徴的過ぎたんだが。
ピーターは迷宮の時のような装備はしていないが、目立たないようにはしてあるが首元に何かのチューブ状の接続器具があり、両手は手袋に覆われていて飲み食いする時も外さない。
彼の腕が硬い物にぶつかると金属が何かにぶつかる音が響いた。
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新大陸連合国は勇者血統の生まれない呪われた地であると歴史の授業で習ったが、未だにそんなことが本当に起きるものなのか俺にはちょっと信じられない気持ちもあった。
確かに人間がある程度手を加えはするが、勇者と呼ばれる遺伝性のある異能者は世界各地で生まれている。
学者に言わせれば人類が同時期に同じ方向性の危機感を持てば持つほど勇者は産まれて来やすくなるのだと言うことだ。
現代は各国に紐付けされた勇者が存在するので新たな勇者の血統は生まれにくいとも言っていたな。
つまり新大陸連合国の受けた呪いは、大陸に住む人類のみの危機感や意識の総意を狙って霧散させる程強力で指向性に優れているということになる。
オカルト学の奇人変人な先生は呪いというのは公開されることによって強固になるとも言っていた。
新大陸連合国が呪いの中にあると、世界中の教科書に載っているような現状では呪いの効果が高まりこそすれ減ることはないという認識でいいのだろうか?
でもそうとわかっていれば学ばせないようにすればいいだけなんじゃないか?
相変わらずオカルト学はよくわからない学問だ。
「なあピーター、新大陸では異能者は生まれるんだよな?」
「はイ、実は私も異能者ね」
「へー」
水を操る力だっけ? と、俺は思い出す。
以前迷宮に一緒に潜った時に披露した力だ。
無数の小さな水滴が真球の珠となって宙を飛び交うその様は、恐ろしいというよりも綺麗だった。
とは言え、極端に圧縮されたその水の珠は同じ質量の鉄の玉より重いのだとか。
高速で飛び交うそんなものに打ち抜かれたら穴だらけになる以外ないだろう。
考えれば凶悪な能力だ。
「私の異能は本来大したことない力。単に液体を固定化スるだけネ」
そう言うと、ピーターはおもむろにグラスを傾ける。
こぼれたと思った酒は空中に浮かび、ふるふると震えている。
「美味そうだな」
そのままパクリと口にしたらどんな感じになるのだろう? と好奇心が働いたが、これはいわばピーターの武器だ。
いくらでも換えは効くが、コントロールはピーターにあるのだ。
そんな物を口にするのはピーターに命を握られるのと変わらない。
「綺麗ですね」
そんな俺の葛藤を他所に、ピーターの本来の力を見て、伊藤さんが乗り出すようにその宙に浮かぶ琥珀色の酒を見る。
それを受けてか、酒は花弁の多い小さな花となり、くるりくるりと回りながらとゆっくりとその花弁をほころばせた。
やがてその花は花びらを散らすと、その散った花びらが集まって今度は小さな鳥となり、伊藤さんの肩に止まる。
そこから更に翼を広げてすいと飛び、元のコップに収まり酒に戻った。
「すごい!」
伊藤さんが拍手をする。
「お~」
俺も思わず拍手をした。
気づくと全員で拍手をしていた。
指笛まで飛び出す。
と、カウンターから咳払いが聞こえた。
さすがに騒ぎ過ぎたらしい。
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「そ、そう、ダロ?」
俺と伊藤さんの心からの賞賛に、さすがのピーターも少し照れたようだった。
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ピーターの先ほどの一連の操作はまさしく神懸っていた。
この繊細なコントロールと装備による強化、アンプルによる限界を越えたパワーが相まって、迷宮でのあのピーターの戦いがあったということか。
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「ん?」
「我が国にハ本物はいない、みんな私のようナまがいものダ。でも、だからと言って本物に遅れを取るつもりはない」
俺はうなずいた。
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そこで、ふと気づいた。
新大陸連合の呪いの正体に思い至ったのである。
「そうか唯一無二か、英雄の呪いなんだ」
それは同じ英雄は生まれないというある種の思い込みを利用した呪いの一種だ。
その昔、英雄自身が創り出したと言われる呪いで、物語の最後をこう結ぶだけでいい、『このような素晴らしい英雄はもはや生まれることはないだろう』と。
まぁ本当はもっと複雑なものなんだが、きっかけはこの程度のもので十分だ。
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「ヤー!」
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そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。
工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。
むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。
“特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。
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工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。
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二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。
零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。
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