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蠱毒の壷
その二
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パララッパララッ!
独特な警告音を鳴り響かせながらモンスターバイクが交差点を駆け抜ける。
「な、なんだ!」
「あれだろ、迷宮探索の冒険者」
「ああ……」
なんというか、当初の予想通り冒険者が大挙して押し寄せた訳だが、意外にも現在の所は一般人との間にさほど摩擦は起きていなかった。
しかし、だからといって両者の間が良好である訳ではない。
一番の問題は、俺も時々感じるお互いの常識の違いだろうな。
今のように、冒険者の多くはゴツいマシンを所持していることが多い。
なぜなら彼らが行く探索地の多くが人里離れた荒野であり、そういう場所でモンスターや野生動物を相手にするために馬力のある乗り物が必須となるのだ。
そしてまた、連中の多くは他人を見ると無自覚で威嚇して来る。
新しいショバでは必ずやる儀式のようなもので、どうやらそれで序列を確認しているらしい。
野生動物かよ。
まあ、俺の冒険者に関する知識は、そのほとんどがハンター協会とかうちの家族とか故郷の元ハンター連中とかからの受け売りなんだけどな。
そんなほとんど別の生き物のような都民と冒険者連中との間に摩擦を起こさせないために政府が取った手段は単純な物だった。
物理的に住空間を隔離したのである。
政府は迷宮ゲート管理のためにその周辺区画を買い上げたのだが、その区画を迷宮特区として、迷宮探索者はその中で行動することが義務付けられたのだ。
届け出があれば外出も出来るから完全な隔離ではないが、少なくとも日常的に顔を合わせる事は回避されている。
「冒険者さんは嫌われていますね」
伊藤さんがどこか寂しそうに言った。
あー、そうだよな、伊藤さんのお父さん元冒険者だもんな。
「違う環境で生きて来た相手だから急に馴染めないのは仕方ないさ。とりあえず大きなトラブルさえなけりゃしばらくしたらお互い馴染むんじゃないかな?」
しかし、伊藤さんは俺のフォローに頬を膨らませた。
伊藤さんってこうやって拗ねてる時が凶悪に可愛いんだよな。
いやいやそうじゃなくて。
「どうしたの?」
「私を慰めるために自分が信じてもいないことを口にするのはどうかと思います」
なん……だと、心を読まれただと……。
「違いますよ! 私が鋭いんじゃありません、木村さんがわかりやすすぎるんです。そういう所凄く心配です」
おおう、うん、よく周囲の人間から言われます。
「大丈夫、腹芸が必要な営業じゃないんだし。うちでは考えていることがバレバレでも問題ないよ」
否定出来ない自分が悲しい。
「そっちじゃありません。もう一方のほうです。また、あそこに行くんでしょう?」
ええっ! なんで知ってるんだ?
さすがにその情報は一般人に入手出来るような物じゃないよな。
いくら俺が顔に出る性質だからってピンポイントにバレるような話じゃない。
あ、お父さんを通して冒険者協会から情報を入手したとかかな?
待てよ、由美子という線もあるぞ。
別にこの情報に関して緘口令が敷かれたという訳じゃないからな。
「いや、そっちはもっと心配無いですよ。なにしろ怪異は嘘を吐かない存在ですからね」
伊藤さんは俺をぎろりと睨む。
なんだ?
「私、調べたんです。人間に関わった怪異は人を騙すことがあるって。それに……」
伊藤さんは一瞬言い淀んだが言葉を続けた。
「昔、あの酒呑童子を曲がりなりにも封印出来たのは、人間が騙し討ちをしたからなんでしょう?」
やばい、伊藤さん、やたら怪異関係に詳しくなってるぞ。
もしかして勉強してるのか?
この分だと経験以外の知識はいずれ追い越されるんじゃね?
「そんな心配しなくても大丈夫だよ。とりあえず二層目と三層目の地図が必要なだけだし。奴とやり合う訳じゃないんだから」
俺は汗だくで言い訳をした。
嘘が通じる相手ではないのだから全部本当のことだ。
「それより、ほら、早く買い出しして来ないと、みんな待ってるし」
伊藤さんは俺の言葉にハッとしたように周りを見回した。
横断歩道の片側に止まったまま三回程信号をやりすごした俺達は、人にジロジロ見られはしたが、みんな青信号で渡ってしまうので全ての会話を聞いていた物好きな通行人はいない。
尤も誰もが帰宅を急ぐ時間帯だ、他人に長々構おうなどと思ったりはしないんだろうな。
みんな早く帰ってゆっくりしたいんだろう。
俺も出来るならそうしたいよ。
そう、こんな時間に買い出しをしている俺達は、というかうちの課は、本日は残業なのだ。
「あ、信号変わりました。渡りましょう」
伊藤さんが俺の言葉に慌てたのか、逆に俺を急かして来た。
弁当と飲み物六人分、それが買い出しの内容だ。
「あのさ、伊藤さんは弁当食べたら帰っていいんじゃないか?」
事務方の他の二人は既に仕事を終えて退社している。
お局様は家庭があるし、御池さんは仕事がないので残る必要がないからだ。
そもそも女性を夜まで(下手すると朝まで)残業させるとか、色々とマズいだろ。
「でも、こないだ私抜きで残業したら、資料捜しで余計な手間が掛かったって佐藤さんが」
おのれ佐藤、後で覚えてろよ。
「まあ、それはそうだけど」
「仕事に男とか女とか関係ないですよ。社会人なんだからやるべき仕事はちゃんとやらないと」
うーん、確かにそうなんだけど、今回は明らかにキツそうだぞ?
納期が既におかしいし。
しかもこの商品、件の冒険者向けなんだよな。
うちは家電メーカーなんじゃなかったのか、と。
ことの発端はこうだ。
迷宮特区内に大型ショッピングモールを作った政府が、公募で中に入るショップを募って、審査と抽選で選ばれた中にうちが力を入れている家電チェーン店があった訳なんだが、そこが集客のための目玉を各メーカーに依頼して来たのだ。
無茶振りすぎんだろ。
なにしろ箱は既に出来ていて、開店まで二か月切ってんだぞ?
アホかと。
まあ客にそんなこと言えない営業は、安請け合いをしてこっちに丸投げしたのである。
逆算すると三日で製品の仕様、基礎設計デザインを完成させなければならないのだ。
草案無しでいきなり完成品とか、ヤバすぎるだろ。
間違ってもリコール品を出さないためには今までの製品のバリエーションで行くしかない。
そう方向性のコンセプトだけは決まっていた。
「まあ、伊藤さんがいてくれたほうが心強いのは確かだけど、駄目だろやっぱり。男だらけの中に年頃の女の子一人で深夜近くまでって、内外的に拙すぎるよ」
「じゃあ資料を抽出してその一覧を作ったら帰りますから、それまではいいですよね」
まあ妥協点かな?
てかよく考えたら本来俺がそんなこと言う権利は無いんだよな。
言うとしたら課長だ。
でも、なんか俺に責任がある気がするんだよ。
うちの連中、何かと言えば俺と伊藤さんをセットで行動させるし、今回の買い出しだってそうだ。
「仕方ないか」
「お弁当分は働かないと食い逃げになりますからね」
「食い逃げって」
俺は苦笑して足を早めた。
時間が無いので遅れを取り戻す必要があったのだ。
「あ、そうだ」
ふと思い出して今の内に言っておこうと俺は口を開いた。
「今度引っ越すから」
「えっ?」
伊藤さんはまるで鳩が豆鉄砲食らったような顔で俺を見る。
いや、そんなに驚くことかな?
そしてなんでそんなに不安そうにしてるんだ?
「ほら、ハンターとして活動もしてるだろ? 全員でのミーティングに俺んちを使う訳だけど、今の状態だと手狭なんでうちの弟に強制的に決められてしまったんだよね。社宅手続きしてるから変更が面倒なんだけど」
俺の言葉に伊藤さんはホッとしたような表情になる。
何を心配してたんだろう? 女心ってさっぱりわからんな。
「そっか、そうですよね。そういえば会社側がOKを出してくれたんでしょう? よかったです」
「ほんとに。課長と社長には感謝してます」
決算のバタバタが終わって通常業務に戻った頃に、こっそりと、ハンターとして活動せざるを得なくなったことを課長に相談したんだが、課長は驚きながらもちゃんと話を聞いてくれて、社長に掛けあってくれたのだ。
社長の言うことには開発の服務規程は主に情報漏えいを警戒しての物なので、国家政策に絡んだ物ならば仕方が無いということで特例として認めて貰えたのである。
しかし、条件として通常業務に支障をきたさないことと、社内で俺がハンターであることを公言しないことを約束させられた。
いや、それはむしろ俺が頼みたいぐらいだったので、ありがたいけどね。
「でも、無理はしないでくださいね。本当に」
ありがとう、伊藤さん。
そういう風に普通に心配してくれるのって貴女ぐらいですよ。
会社に戻ると、なぜかみんながニヤニヤしていた。
「なんだ、もっとゆっくりして来てもよかったんだぞ?」
などと佐藤が馬鹿なことを言って来たのでとりあえず軽く膝蹴りを食らわしておく。
なんかもう、悩みが増えすぎて俺の脳の処理速度ではおっつかなくなって来たな。
独特な警告音を鳴り響かせながらモンスターバイクが交差点を駆け抜ける。
「な、なんだ!」
「あれだろ、迷宮探索の冒険者」
「ああ……」
なんというか、当初の予想通り冒険者が大挙して押し寄せた訳だが、意外にも現在の所は一般人との間にさほど摩擦は起きていなかった。
しかし、だからといって両者の間が良好である訳ではない。
一番の問題は、俺も時々感じるお互いの常識の違いだろうな。
今のように、冒険者の多くはゴツいマシンを所持していることが多い。
なぜなら彼らが行く探索地の多くが人里離れた荒野であり、そういう場所でモンスターや野生動物を相手にするために馬力のある乗り物が必須となるのだ。
そしてまた、連中の多くは他人を見ると無自覚で威嚇して来る。
新しいショバでは必ずやる儀式のようなもので、どうやらそれで序列を確認しているらしい。
野生動物かよ。
まあ、俺の冒険者に関する知識は、そのほとんどがハンター協会とかうちの家族とか故郷の元ハンター連中とかからの受け売りなんだけどな。
そんなほとんど別の生き物のような都民と冒険者連中との間に摩擦を起こさせないために政府が取った手段は単純な物だった。
物理的に住空間を隔離したのである。
政府は迷宮ゲート管理のためにその周辺区画を買い上げたのだが、その区画を迷宮特区として、迷宮探索者はその中で行動することが義務付けられたのだ。
届け出があれば外出も出来るから完全な隔離ではないが、少なくとも日常的に顔を合わせる事は回避されている。
「冒険者さんは嫌われていますね」
伊藤さんがどこか寂しそうに言った。
あー、そうだよな、伊藤さんのお父さん元冒険者だもんな。
「違う環境で生きて来た相手だから急に馴染めないのは仕方ないさ。とりあえず大きなトラブルさえなけりゃしばらくしたらお互い馴染むんじゃないかな?」
しかし、伊藤さんは俺のフォローに頬を膨らませた。
伊藤さんってこうやって拗ねてる時が凶悪に可愛いんだよな。
いやいやそうじゃなくて。
「どうしたの?」
「私を慰めるために自分が信じてもいないことを口にするのはどうかと思います」
なん……だと、心を読まれただと……。
「違いますよ! 私が鋭いんじゃありません、木村さんがわかりやすすぎるんです。そういう所凄く心配です」
おおう、うん、よく周囲の人間から言われます。
「大丈夫、腹芸が必要な営業じゃないんだし。うちでは考えていることがバレバレでも問題ないよ」
否定出来ない自分が悲しい。
「そっちじゃありません。もう一方のほうです。また、あそこに行くんでしょう?」
ええっ! なんで知ってるんだ?
さすがにその情報は一般人に入手出来るような物じゃないよな。
いくら俺が顔に出る性質だからってピンポイントにバレるような話じゃない。
あ、お父さんを通して冒険者協会から情報を入手したとかかな?
待てよ、由美子という線もあるぞ。
別にこの情報に関して緘口令が敷かれたという訳じゃないからな。
「いや、そっちはもっと心配無いですよ。なにしろ怪異は嘘を吐かない存在ですからね」
伊藤さんは俺をぎろりと睨む。
なんだ?
「私、調べたんです。人間に関わった怪異は人を騙すことがあるって。それに……」
伊藤さんは一瞬言い淀んだが言葉を続けた。
「昔、あの酒呑童子を曲がりなりにも封印出来たのは、人間が騙し討ちをしたからなんでしょう?」
やばい、伊藤さん、やたら怪異関係に詳しくなってるぞ。
もしかして勉強してるのか?
この分だと経験以外の知識はいずれ追い越されるんじゃね?
「そんな心配しなくても大丈夫だよ。とりあえず二層目と三層目の地図が必要なだけだし。奴とやり合う訳じゃないんだから」
俺は汗だくで言い訳をした。
嘘が通じる相手ではないのだから全部本当のことだ。
「それより、ほら、早く買い出しして来ないと、みんな待ってるし」
伊藤さんは俺の言葉にハッとしたように周りを見回した。
横断歩道の片側に止まったまま三回程信号をやりすごした俺達は、人にジロジロ見られはしたが、みんな青信号で渡ってしまうので全ての会話を聞いていた物好きな通行人はいない。
尤も誰もが帰宅を急ぐ時間帯だ、他人に長々構おうなどと思ったりはしないんだろうな。
みんな早く帰ってゆっくりしたいんだろう。
俺も出来るならそうしたいよ。
そう、こんな時間に買い出しをしている俺達は、というかうちの課は、本日は残業なのだ。
「あ、信号変わりました。渡りましょう」
伊藤さんが俺の言葉に慌てたのか、逆に俺を急かして来た。
弁当と飲み物六人分、それが買い出しの内容だ。
「あのさ、伊藤さんは弁当食べたら帰っていいんじゃないか?」
事務方の他の二人は既に仕事を終えて退社している。
お局様は家庭があるし、御池さんは仕事がないので残る必要がないからだ。
そもそも女性を夜まで(下手すると朝まで)残業させるとか、色々とマズいだろ。
「でも、こないだ私抜きで残業したら、資料捜しで余計な手間が掛かったって佐藤さんが」
おのれ佐藤、後で覚えてろよ。
「まあ、それはそうだけど」
「仕事に男とか女とか関係ないですよ。社会人なんだからやるべき仕事はちゃんとやらないと」
うーん、確かにそうなんだけど、今回は明らかにキツそうだぞ?
納期が既におかしいし。
しかもこの商品、件の冒険者向けなんだよな。
うちは家電メーカーなんじゃなかったのか、と。
ことの発端はこうだ。
迷宮特区内に大型ショッピングモールを作った政府が、公募で中に入るショップを募って、審査と抽選で選ばれた中にうちが力を入れている家電チェーン店があった訳なんだが、そこが集客のための目玉を各メーカーに依頼して来たのだ。
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アホかと。
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草案無しでいきなり完成品とか、ヤバすぎるだろ。
間違ってもリコール品を出さないためには今までの製品のバリエーションで行くしかない。
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「まあ、伊藤さんがいてくれたほうが心強いのは確かだけど、駄目だろやっぱり。男だらけの中に年頃の女の子一人で深夜近くまでって、内外的に拙すぎるよ」
「じゃあ資料を抽出してその一覧を作ったら帰りますから、それまではいいですよね」
まあ妥協点かな?
てかよく考えたら本来俺がそんなこと言う権利は無いんだよな。
言うとしたら課長だ。
でも、なんか俺に責任がある気がするんだよ。
うちの連中、何かと言えば俺と伊藤さんをセットで行動させるし、今回の買い出しだってそうだ。
「仕方ないか」
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「食い逃げって」
俺は苦笑して足を早めた。
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「あ、そうだ」
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「えっ?」
伊藤さんはまるで鳩が豆鉄砲食らったような顔で俺を見る。
いや、そんなに驚くことかな?
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「ほら、ハンターとして活動もしてるだろ? 全員でのミーティングに俺んちを使う訳だけど、今の状態だと手狭なんでうちの弟に強制的に決められてしまったんだよね。社宅手続きしてるから変更が面倒なんだけど」
俺の言葉に伊藤さんはホッとしたような表情になる。
何を心配してたんだろう? 女心ってさっぱりわからんな。
「そっか、そうですよね。そういえば会社側がOKを出してくれたんでしょう? よかったです」
「ほんとに。課長と社長には感謝してます」
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社長の言うことには開発の服務規程は主に情報漏えいを警戒しての物なので、国家政策に絡んだ物ならば仕方が無いということで特例として認めて貰えたのである。
しかし、条件として通常業務に支障をきたさないことと、社内で俺がハンターであることを公言しないことを約束させられた。
いや、それはむしろ俺が頼みたいぐらいだったので、ありがたいけどね。
「でも、無理はしないでくださいね。本当に」
ありがとう、伊藤さん。
そういう風に普通に心配してくれるのって貴女ぐらいですよ。
会社に戻ると、なぜかみんながニヤニヤしていた。
「なんだ、もっとゆっくりして来てもよかったんだぞ?」
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そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。
工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。
むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。
“特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。
工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。
兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。
工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。
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